無関心

 バタバタという音を立てながら、高校生の少女・加奈はリビングに降りてきた。


「おはよー。ねえママ。パパは?」

「まだ起きてこないみたいね。昨日の夜も疲れたって言って早く寝ちゃったみたいだし。ま、あの人が会社に遅刻なんてしたことないし大丈夫でしょ」

「まあね」

「そんなことより、ママこの後お友達と出掛けてくるから。学校が終わったらお家のことよろしくね」

「はーい」


 普段と変わらぬ会話をすると、加奈は元気よく学校へ向かうのだった。

 その日の夕方。


「ただいまー」


 帰宅した加奈の目に映ったのは、朝と変わらずに並べられた父の革靴だった。


「パパもう帰ってきたのかな?ま、いっか」


 そんな独り言を呟くと、彼女は早足に自室へと向かっていった。

 加奈の父が寝室で亡くなっているのが発見されたのは、それから数時間後のことだった。


「死亡推定時刻は昨晩9時頃。心不全による病死。事件性はナシ……か」


 母からの通報で駆けつけた刑事は溜め息を吐くと、父の遺体に手を合わせる。


「一家の大黒柱が死んだことに丸一日気がつかないなんて……無関心てのは怖いねぇ。いや、明日は我が身か」


 薬指に光る指輪を一撫ですると、刑事は再び遺体に手を合わせるのだった。

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