ミスディレクション

 とあるバーの片隅。新人マジシャンの佐藤は、明日の仕事について同僚に相談をしていた。


「俺、明日の仕事自信無いよ。だってあんなにお客さんがいるんだよ?絶対誰かにタネを見られちゃうって」

「お前なぁ……情けないこと言うなよ。そもそもマジックなんて、タネさえありゃあ子供ガキだってできるんだ。だが、それを見世物にまで昇華できるかどうかは俺達のテクニック次第だぜ?」

「テクニック……」

「例えばトークで意識を誘導する。後、音や怪しい挙動で視線を逸らさせるのも有効だ。所謂『ミスディレクション』ってヤツだな」

「視線を誘導、か。……わかった!俺やってみるよ!」


 佐藤は同僚の言葉に元気づけられると、その日は意気揚々と家へと帰っていった。

 二日後。テレビの中では、神妙な面持ちのニュースキャスターが淡々とニュースを読み上げていた。


「……続いてのニュースです。昨日、◯◯デパートで行われたマジックショーの最中、ステージに立っていたマジシャンの佐藤容疑者が突然、自身のを晒すという事件が発生しました。佐藤容疑者は、警察の聴取に対し『これが俺のミスディレクションだ』、等と意味不明な供述を繰り返しており……」

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