第6話 童話
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今回の討伐作戦はテーマパークの四方を囲うようにして各チームが突入し捜索。ターゲットであるヴィーナスの潜伏していると思しき場所が発見され次第、オペレーターを通じて全チームに通達、一斉に突入する作戦を取っている。
これは街一つ分もあるこのテーマパークの広さを考えた内容であり、言ってしまえば効率を重視した作戦だ。
そして私達チームLは現在、テーマパークの東側に位置する『世界の童話』をモチーフにした中世風の街を捜索していた。
「入口とは打って変わって、ここにホシの気配がまったく無いわねぇ」
「もしかしたらここにはターゲットはいないかもネ。いくらなんでも静かすぎるし」
「でも油断はできない。一通り見て回ってから他のチームと合流しよう」
そうして欠けたレンガ造りの道を警戒しながら進んで行く。
街の光景はどこか異様な雰囲気だった。
倒壊した赤レンガのお屋敷、放置されたことによる劣化の影響で掠れた声しか出せなくなった人魚姫の像、緑色の蔦によってその全貌を覆われ時が止まった時計塔、支えが破壊されたことで離れ離れになってしまったトナカイとサンタクロース。
子供の夢から程遠いところへ旅立ってしまった童話の街はどこか退廃的で寂しそうに見えた。
しかしこの街はまだ━━━━生きていた。
『ガガ…………フ…………フェアリータウンへようこそそそ…………ここは妖精の住む素敵なまま街だよ…………ガガ…………』
『サンタさんはトナカイさんの引くソリに乗って…………いい、一緒に…………ジ…………ガガ……』
「こんなふうになっても、まだ動いているのね」
「この辺りは他の施設と違ってホシからの被害が少ないわぁ。だからインフラ設備がまだ生きているということねぇ」
「でも、なんか街が寂しそう…………」
かつては幸せで溢れていた童話の街を歩き続けても敵の気配、ましてやターゲットであるヴィーナスなど影を見つけることすら無かった。
そうして私達はこの童話の街の出口に差し掛かる場所にある大きな
「結局ホシとは遭遇することなくここまで来ちゃったわねぇ。イブキさん、この後はどうするのかしらぁ?」
「作戦オペレーターに状況を報告した後、他チームと合流しましょう。………………少し気になることもあるので」
「気になること?」
「うん。入口こ時と比べてこの場所は極端と言っていいほどホシがいないでしょ。まるでホシ達すらもここを避けてい━━━━」
その後の言葉が続く事は無かった。目の前にある劇場の扉の窓ガラスから赤い光が反射したからだ。━━━━ハトちゃんの頭に狙いを定めながら。
「ハトちゃん伏せて!!」
「え…………」
光を見た瞬間、反射的に身体が動いた。
ボーっとしていたハトちゃんを突き飛ばした。そしてその刹那、明確な殺意の籠った赤い熱光線がハトちゃんの立っていた場所を正確に貫いた。
「あ、ありがとうイブちゃん」
「うん、怪我が無くて本当によかった、━━━それよりも」
刹那に横切った赤い熱光線を私は知っている。
五年前のあの地獄の最中に私の脳裏にこれでもかと焼き付けた光景が今フラッシュバックする。
『……………………』
『……………………』
その方向を見ると、まさしくお目当ての存在に一番近いであろう存在が二つ。
「赤と青の九芒星………………」
あの地獄の瞬間、まるで仲睦まじい親子のようにあの金色の十芒星に追従していた赤色と青色のホシ━━━━二対の九芒星が燃え滾る炎のように赤く、そして凍えるように冷たい青い空の下で私達を傲慢に見下ろしていた。
『
『
「………………!? 言語が使える個体か!」
「これ明らかにわたしたちを狙ってるわよねぇ」
九芒星という上位個体ともなると我々人類の言葉を話せる個体、つまりそれだけの高度な知性を持つ個体が確認されている。
しかし奴らの話す言葉は要領を得ず、どこか声が重なって聞こえ、何よりもその意味が不明なのである。
「エンカウント!」
だが今考えるべきはホシの話す言葉の意味などでは無く、どのようにして目の前の敵を倒すことかだ。
芒炎鏡の照準を奴らに合わせ、狙いを定め━━━放つ。
鳴り響く銃声、しかし遠い遥か上空にて聳える奴らにとって、芒炎鏡から放たれたオレンジ色の光を避けることなど造作もないことだった。
『one
『
━━━━
まるで子を守る親の様とでも言うべきだろうか。
二対のホシは私達へ向けて万雷の怒りと殺意がこれでもかと染み込んだ呪詛の言葉と共に朱蒼の熱光線が放たれる。
「チッ………………」
瞬く間に放たれた攻撃はこの童話の街にまるで愉快なカートゥーンアニメのような大きな爆発の芸術を生み出すのだった。
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