第13話 ドワーフの鉱山へ

 「プリメーラ大丈夫か?」

 「私は大丈夫だ、そっちこそ平気なのか?」

 「こう見えて体だけは頑丈なんだよ」


 ジネッタの家で彼女の帰りを待っていると、突如大きな地震に襲われる。

 2人でテーブルの下に隠れ、地震が収まるまで待っていた。


 「ひどい有様だな……」


 止まったことを確認して、テーブルの下から抜け出すと揺れのせいでコップやお皿など食器が地面に叩きつけられて粉々になっていた。

 

 「ゲンバラ大陸は活火山があるため、地震が多いって聞くがこれが日常茶飯事なのか?」

 「何度かここにはきているが、さっきのような大きな地震は初めてだ。何かの前触れなのだろうか……」


 プリメーラは腕を組むと何かブツブツと呟いていた。


 「ま、魔物だ! 鉱山から魔物がでやがった!!!」


 外から大声が聞こえ、俺たちは家の外へと出た。


 集落のドワーフたちも大声に反応して、次々を外へと出ると同じ方向へと歩き出していた。


 「私たちも行ってみよう」


 


 ドワーフたちが集まっていたのは集落の奥地だった。

 

 「あそこが鉱山の入り口だ」


 プリメーラが指さしたのは大きな入口。

 その手前でドワーフが倒れていた。

 先ほど家を飛び出していったドワーフたちが彼を囲んでいた。

 

 「お、おい大丈夫か!」

 「お、オデはへいきだけんど! ジネッタがオデを逃すために魔物にむかっていきやがった!」

 

 ジネッタの名前がでるとプリメーラはドワーフたちの元へと歩いていった。


 「師匠はまだ中にいるのか!?」

 「そ、そうだけんど……!」


 プリメーラは焦りの表情を見せていた。

 

 「プリメーラ、鉱山の中に行こう」


 俺が声をかけると、プリメーラとドワーフたちは一斉にこちらを向いた。

 ドワーフたち全員が俺を見るなり、驚きの顔を見せていた。


 「な、なぜ人間がここにいるんだ!」


 ……予想通りの反応だ。


 「そうだな、師匠を助けなければ!」


 俺たちは鉱山の入口の中へと入っていった。



 「思ってたよりも広いんだな」


 鉱山の中は思っていたよりも広いし、所々に灯りもつけられているため、奥まで見ることができていた。

 集落に行くまでの洞窟が狭すぎなのかもしれない。


 「鍛治に使う鉱石を掘り続けていくうちに広くなっていったらしいな」


 最後にプリメーラは「師匠がそう話していた」と告げると、表情が曇っていった。


 「そんな落ち込むな、まだ彼女は魔物にやられたと決まったわけじゃないんだし」

 「そうだな……」


 さらに足を進めると、目の前に魔物の姿を発見する。


 「ケイブスパイダーか」


 隣でプリメーラが口にしていた。


 ケイブスパイダーは洞窟に生息するクモで、口から吐き出した糸で獲物を捉える習性を持つ。

 1体だけなら脅威ではないが、数が多いと腕の立つ人間でも苦戦をすると言われている。


 「こちらで確認できるのは5体か……なんかその奥にもいそうな気がするな」

 

 魔物の方もこちらには気づいていないようだし、攻撃を仕掛けるなら今。

 俺はラファーガを構えると、勢いよく地面に叩きつけようとするが、プリメーラに止められる。


 「ここは私に任せてくれ」


 プリメーラはため息をつくと、デュアリスを持ち、弦を弾くポーズをとると。目を瞑りかすかな声で呟き始めた。

 すると、大きな矢が出現する。


 「ビーストアロー!」


 プリメーラは叫ぶと同時に弦を引いていた手を放すと引っ張られていた矢が勢いよく魔物のいる方へと飛びかかっていった。


 「グギャアア!?」


 大きな矢が1体のケイブスパイダー貫くとその場に小さな竜巻が巻き起こる。

 周辺にいた魔物たちは竜巻の中に巻き込まれて、切り刻まれていった。


 「……すごいな」


 今起こっている状況に驚くことしかできなかった。


 

 「結構いたんだな、さっきの魔物」


 竜巻がなくなり、再び歩き始めると足元に切り刻まれたケイブスパイダーの破片が飛び散っていた。


 「おかしいな……」


 歩きながら唸り声を上げるプリメーラ。


 「おかしいって何がだ?」

 「前に師匠と一緒にこの鉱山に来た時は魔物なんて現れなかったののだが」

 

 そう告げると、プリメーラは腕を組み始めて再び唸る。


 「もしかしたらさっきの地震はこのことが起きる前触れとか……いやまさかな」


 プリメーラはぶつぶつと自分の思っていることを口にし始める。

 何か言おうと思ったが、内容がまったく理解できなかったので黙ったまま鉱山の中を進んでいった。



 「キシャアアアアアアアア!!」


 先を進んでいくと、耳を塞ぎたくなるほどの奇妙な叫び声が聞こえてきた。

 俺たちは一斉に走り出した。


 奥へと進んでいくと、広い場所へと辿り着く。

 巨大な岩の形をした蛇。

 

 「アビスワーム……! 何でまたこんなところに……!?」

 「アビスワーム?」

 「何百年も前に封印されていた魔物だ……」


 そして、プリメーラがアビスワームと呼魔物の前には見覚えのある姿があった。


 「師匠……!」

 

 プリメーラが大声で叫ぶがジネッタはこちらを見ることはなかった。


 「プリメーラ、後方援護は任せた」


 俺はプリメーラに告げると、ラファーガを構えて、全速力で走り出した。


 巨大な蛇は大きな口を開けてジネッタに顔を近づけていく。


 「い、いや……!」


 恐怖で腰が抜けてしまったのか、ジネッタはガタガタと震えてその場から動けなくなっているようだ。

 アビスワームの顔はジネッタのすぐそばまで来ていた。


 「だれか……誰か、助けて!!!!」


 叫ぶジネッタ。

 その叫びに応えるように俺は大きくジャンプしてアビスワームの目にラファーガを突き刺す。


 「キシャアアアア!!!!」


 アビスワームは痛みで自身の体をぶるぶると震わせる。

 俺はラファーガを抜いてジネッタの元へと近づく。


 「に、人間!?」

 「助けにきたぞ、あっちにプリメーラがいるから今のうちに行くんだ」

 「あ、アンタはどうするの!?」

 「もちろんあいつを倒すんだよ」


 そう告げるた俺はアビスワームがいる方へと振り返る。


 俺が突き刺した目からは紫色の液体をダラダラと流しながら大きく口を開けていた。

 どうやら、狙いは俺に定めたようだ……その方が好都合だ。


 「……それじゃ、行かせてもらうぞ!」


 俺はアビスワームに向かって走り始めた。


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【あとがき】

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