第12話 大人の心で絵本を開く
ここ最近、なんだか慌ただしくピリピリしてしまっているような気がしている。
調べもので、仕事帰りに図書館へ寄った幸来(サラ)だが頭が回らずボーッとしていた。
小難しい本が並んでいる棚から目的の本を手に取り、必要な部分だけコピーした。
正直あまり記憶がない...
(疲れた...)
予期せぬところで立て続けに発生した問題の後処理に追われ、大好きな読書もお預けをくらっていた。が、さすがにプライベート用の本を借りて帰る余力もなかった。
コピーに使用した本を棚に戻し帰ろうとしたとき、ファンシーな、どこかの保育園の様な空間が目に止まった。子供用の本が並んでいるコーナーだ。
休日の昼間は親子連れがワチャワチャしており近寄るのを躊躇っていたが、さすがに平日のこの時間は空いている。フラッと立ち寄ってみた。
家の本棚には20冊ほど絵本が並んでいる。
幸来が絵本を読むようになったのは就職して3年ほど経ってたからだ。
子どものものだと思い、手に取ることはなかった。
ある時、友人の出産祝いのために絵本を選ぶ機会があった。後輩への指導を任されフラフラになっていた時期だ。
書店で絵本を選んでいるときに、とある表紙に目を惹かれた。
水彩でかかれた一匹の猫が丸まって寝ている絵だ。サンプルがあったので手にとって開いてみる。文字の無い、文字通り絵の本。
野良猫が一つ一つハプニングを乗り越える度に、何かを得ていき最後は素敵な飼い主と出会うといつシンプルで、大人によっては「こんな都合良く上手く行くわけがない!」と思いそうな内容だ。
そのときの幸来は、2、3回その絵本を読み返していた。結局買ってしまったのだが...
それが幸来家に来た絵本第1号だ。
その第1号が、画用紙で作られたファンシーなウサギたちの前に飾られていた。
(あっ)
家にあるのにそこで手に取ってしまうから不思議だ。他にも回りに猫が表紙の絵本がたくさん並んでいた。どうやら「猫」が展示のテーマらしい。
(ファンシーウサギの飾りなのに?)
何冊か見繕っていると、おじさまがフラッと横に来て第1号を手に取った。どうやら気になってはいたがファンシーエリアに大人が近寄ることに恥ずかしさがあったらしい。おじさまなら尚更だろう。
幸来の物色に乗じてそのまま絵本を手に去っていったおじさまはカウンターに直行した。
(おじさまも何か悩みがあるなかな...?)
と勝手な妄想をしながら、幸来は大量の絵本を堂々とカウンターへ持っていった。
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