#9 虹が完成した日 その②

朱珠は、今日から「blanc」で働く事になり、

6限目の授業が終わると早々に、

葵と共に学校を後にした。


綾女 葵

『それにしても、

昨日の今日で、よくOKが出たわね。』

 

神原 朱珠

『結構、大変やったで。

仕事の内容も最初は、

全く理解してもらえへんかったからな。』


綾女 葵

『それが普通だと思うわ。

一応、全国に拠点があって、

警察とも連携を取っているものの、

未だに知名度が低いからね。

怪しい仕事だと思われがちなの。』


神原 朱珠

『そうやろな。

私も葵ちゃんの紹介やなかったら、

怖くて絶対に嫌やもんな。』


空を眺めながら、

ポケットから壊れた球体を取り出す朱珠。


神原 朱珠

『あっ! 退けるの忘れ取ったわ!

にしても葵ちゃん、これ何なん?』


綾女 葵

『それについても、

後で詳しく教えてあげるわ。』


学校を出て15分程歩くと、

葵は大きな洋館の前で立ち止まった。


神原 朱珠

『えっ! 嘘やろ? ここが会社なん?』


綾女 葵

『いいえ。

「blanc」は東京にある本社を除いては、

それぞれの地域に拠点となる会社は無いわ。

この建物は、

集会所として使わせてもらっているの。』


神原 朱珠

『嘘やろ! ありえへん!

高校生7人には、広過ぎるやろ!』


大きな洋館を前に、呆気に取られる朱珠。

そんな中、洋館の玄関前で、

同い年くらいのショートカットヘアーの

少女が朱珠の姿を眺めていた。


朱珠が、その少女の存在に気がつくと同時に、

葵が、その少女に向かって話し出した。


綾女 葵

『おはよう。』


ショートカットヘアーの少女

『リーダー、おはよ。

新しく入って来た子って、その子?』


綾女 葵

『そうよ。 この子がバラちゃん。』


神原 朱珠

『は! 初めまして! 神原 朱珠です!』


ショートカットヘアーの少女は、

朱珠の方へ近寄ると、

眉を顰めてじろじろと眺めた後、

『都会の子って派手ね』と一言呟いた。


神原 朱珠

『(怖いねんけど〜!

もしかして、この子!

私みたいに派手な人、苦手なんかな?)』


クールな雰囲気の

ショートカットヘアーの少女が、

朱珠には少し怖く見えていた。


ショートカットヘアーの少女は、

再び玄関前に戻ると、

朱珠に向かって再び口を開いた。


ショートカットヘアーの少女

『私は、百合 黄泉(ゆり よみ)。

宜しくね。』


洋館の扉を開く葵。


綾女 葵

『ユリちゃんは、どうする?

まだ入らない?』


百合 黄泉

『うん。 もう少し待ってみる。』


綾女 葵

『風邪、引かないように気を付けてね。』


百合 黄泉

『有難う。 リーダー。』


葵は扉を押さえたまま、

『それじゃあ、先に入ってましょ。』

と朱珠に声を掛けた。


朱珠は言われた通り室内へ入り、

その後に続いて葵も室内へと入って行った。


玄関も奥に見える部屋も大きく、

呆然と立ち竦む朱珠。

すると奥の部屋から片目が髪で覆われた、

ショートカットの少女が玄関口に現れた。


ショートカットの少女

『初めまして。

私は、林藤 白華(りんどう はっか)。

宜しくね♪』


白華は「容姿」や「話し方」に加え、

「声」も落ち着いており、

胸が膨らんでいる事を除いては、

まるで少年の様だった。


朱珠は、

『初めまして! 神原 朱珠と申します!

女の子ですよね? カッコ良いですね!』

と言い顔を赤らめた。


葵が白華の方を眺めながら、

『リンドウちゃんは、

高校でも随分、モテているそうよ。

ヒマワリちゃんに聞いたわ。』と話すと、

白華は頬を赤く染めながら、

『辞めてよリーダー(照)』

と言いはにかんだ表情を見せた。


綾女 葵

『リンドウちゃんは、

私達のチームのサブリーダーなの。

私がいない時に困った事があったら、

話しを聞いてもらうと良いわ。』


神原 朱珠

『はい! 宜しくお願いします!』


葵と白華は顔を見合わせた後、

白華は朱珠の髪の毛の真っ赤な部分を眺め、

微笑みながら『その髪の毛って地毛?』

『少しだけ触っても良いかな?』

と聞いて来た。


神原 朱珠

『ど、どうぞ!』


朱珠の髪の毛を左手で触る白華。

その光景を眺めていた葵も、

『私も良いかしら?』

と言いながら右手を伸ばし、

2人に髪の毛を触られる朱珠。


林藤 白華

『凄く柔らかいね♪』


綾女 葵

『ここまで赤いと

痛むものかと思っていたけど、

私の髪の毛よりも柔らかいわ!』


右手で葵の髪の毛も触る白華。


林藤 白華

『リーダーの髪の毛も柔らかいよ♪』


葵の方を眺めて微笑む白華と、

左手で自分の髪の毛と、

右手で朱珠の髪の毛を触り硬さを比較する葵。


神原 朱珠

『あの〜。 部屋の中に入っても良いですか?』


林藤 白華

『あっ! ゴメンね!

ついつい気持ち良くて。』


朱珠が奥の部屋へ向かって歩いて行くと、

背後から、

『話しに聞いていた通り、

リーダーの好きそうな子だね。』

と白華の声が聞こえて来た。


朱珠が振り返ると、

葵と白華が2人で話していた。


朱珠が見ている事に気が付いた白華は、

『私達にも、

いつもリーダーに話してるみたいに、

話してくれて大丈夫だからね。』

と朱珠に微笑みながら話し掛けて来た。


神原 朱珠

『?』


林藤 白華

『ふふふ。 リーダーが

「ストレスが溜まるんじゃないか」

って心配してたから。』


葵の方を眺める朱珠。


綾女 葵

『仕事だからって、

堅苦しく考えなくても良いのよ。

あなたは「あなたらしく」居てくれれば。』


神原 朱珠

『はぁ・・・。』


綾女 葵

『まだ入って3ヶ月から半年の子も居て、

チーム自体も出来てから

1年くらいしか経っていないから、

色々と不安な所もあるとは思うけど、

何かあったら私とリンドウちゃんが、

ちゃんと纏めてあげるから安心して。』


葵の問いに、

笑顔で『分かった!』と返す朱珠。

その表情に安堵の表情を見せる葵と、

そんな2人の事を

笑顔で眺める白華なのであった。

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