第21話 『斎藤 みほり』

「みほりんちゃんも食べて食べて!」


「いえ、結構です。 すべて白豚の餌にしてください」


「辛辣うぅうううう!!」


 ホームサウナ兼打ち合わせ場所の『福福』にきた。

 ここのサウナは広くてテレビも大きくて最高。

 食事もおいしい。

 常連さんたちがすごいご馳走してくれるからお財布にも優しい。


「タクマちゃん、こないだのテレビみたよぉ! 優勝おめでとう!」


「ありがとうブヒ! いただきますブヒ!」


「お酒は……まぁ白豚ならそれくらいで酔いませんね」


「みほりんちゃん辛辣ぅううううう!!」


 ちなみに俺よりみほりんのほうが若い男性には人気があったりする。

 『斎藤 みほり』、23歳のマネージャーさん。

 可愛らしいみためでまじめでいい子なんだけど、せっかちでキレやすくて毒舌なんだよね。


「それで、三日間連絡も出ずにどこで何をしていたんですか?」


「冒険してたブヒ!」


「はぁ……」


 なかなか信じてもらえないね。

 まぁほんとうに信じてもらおうとは思ってないけど。

 異世界に行ってたなんて頭がおかしくなったとしか思われない。


「いいたくないなら構いませんが、連絡はしてください。 次やったら屠殺しますよ、白豚?」


「ぶひ」


 三日ぶりの日本の食事はやっぱりうまい。

 醤油ラーメン最高!

 この味は向こうじゃ味わえないね。

 素材自体の味は迷宮産の物も負けてないんだけど、調味料とやっぱり調理スキルが日本は凄いよ。


「直近の仕事は町グルメとウィチューブの企画、あと案件ですね」


「案件?」


 案件が俺にくるなんて珍しい。

 ちなみに長期仕事が指名でくることを案件って呼んでる。

 

「はい。新しい道の駅が田舎にできるんですが、メガ盛りメニューを売りにしたいそうです。 絶対に完食できて圧倒的記録を残せるタレントをご指名です」


「なるほど~、うーん、やっぱり福福の山賊焼きは絶品だね!」


「ブヒだろ?白豚」


「はい、ブヒ」


 まだ連絡無視したことを怒ってる。

 次の仕事は田舎の道の駅かぁ。

 虫が多いと嫌だなぁ。


「そこにもサウナ施設ができるらしいですよ?」


「やったぁブヒ!」


「案件とってこいよ?白豚」


「ぶひぃぃ」


 サウナは仕事じゃないから嫌だ。

 やっぱり趣味と仕事は別がいい。

 ちなみに大食いは趣味じゃないよ。 俺にとってはただの食事にすぎない。 

 

「じゃあ私はお風呂にいって、マッサージ受けてきますね。 しっかりファンサービスしてください。 サウナはそれからですよ?」


「いってらっしゃいブヒ~」


 ちなみにみほりんは社長の姪っ子さん。

 圧倒的権力者の保護があるので最強。

 高温サウナが苦手な女の子も『福福』はスチームサウナがあるから安心だね。 昼間からマッサージとか新卒のマネージャーがする優雅さじゃないと思う。

 まぁ口が裂けてもいえないけど。


「しかし、田舎ぶひねぇ~」


 みほりんの残した資料を見ると、本当に山に囲まれた道の駅だ。

 道の駅に銭湯は意外とある。 山のほうだと天然温泉とか。 オートキャンプ場とかキャンピングカーとか憧れるなぁ。

 虫さえいなければね……。

 

「ゲストは姫白水樹ちゃんかぁ」


 すっごい声の可愛いアイドルちゃんだ。

 たしか大食いタレント大好きって、どこかの番組でしゃべってた気がする。

 これは楽しみだね!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る