第5話 第一村人

 第一村人発見。


 最初に見た異世界人は普通に人のようだ。

 少なくともエルフのいる世界。色んな人種がいるんだろうと思ったんだけど。

 遠くから見る村の風景は長閑な田舎だ。


「モンスターとか、でないのかな?」


 村はいくつかの建物と畑しかない。

 畜産もやっているようでそこは柵があるけれど、村には壁のような物はなかった。

 というか村にしても規模が小さい。


「こ、こんにちわ~ブヒ」


「……」


 愛想笑いを浮かべて俺は第一村人である少年に声を掛けた。

 10歳にも満たなそうな子供だ。

 半袖半ズボンに日焼けした肌。 なぜか手には棒を持っている。 クソガキっぽい見た目。 東南アジアとかの田舎にいそうなガキんちょだ。

 

 「お、オークだああああああああああああああああああああああ!!」


 「ふぁ!?」


 「オークが攻めてきたぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 大絶叫で駆けだした少年。

 俺はびっくりして目が点になった。

 少年は哨戒だったのだろうか?

 てかオークってなんだよ……。

 あれ、ミリアナ様の加護でひょっとして!?


「……」


 スマホのカメラで確認したけど普通に俺だった。


 誰がオークか!!


 農具で武装した村人がわらわら出てきたけど、どうしたものか……。



★☆★



「ゴメンナサイ!」


 頭にたんこぶを作った少年に謝られた。

 

 わらわらと集まった村人には普通に人として扱われた。

 ミリアナ様の加護のおかげか、会話ができるって素晴らしい。

 海外に仕事でいくことが多いからボディランゲージでもなんとかなったかもだけど。

 会話が成立することで安全度は一気にアップだ。


「気にしてないブヒ」


「ブヒ!」


 悪ガキ全然懲りてない。

 

「うちの子がごめんなさいね」


 微笑むお母さんのポンメイさん。

 日焼けした小麦色の肌が色っぽい奥さんだ。とても小学生くらいの子供がいるようには見えない。23,4くらいだろうか? 可愛いと美人の間。 豊満な胸元が質素な服を押し上げている。 うーん、色香に溢れてますね!

 ちなみにクソガキはオルコ君。


「いい村ブヒ」


「なにもないただの村よ~」


 微笑むポンメイさんマジ天使。

 いくつくらいなんだろう? 旦那さんいますか? 結婚してください!!


「母さんを変な目で見るな!」


 ポコポコと、いや、ボコボコと棒で殴ってくるオルコ君。

 結構な勢いで殴られてるけど全然痛くない。


「こら! オルコ!!」


 2発目のゲンコツを回避したオルコ君は逃げ出した。

 

「ごめんなさいね、痛かったでしょ?」


 近づいたポンメイさんになでなでしてもらった。

 全然プラスです大丈夫です。

 わかってましたけど胸大きいですね!

 脂肪に脂肪ががっちゃんこしてますけど、大丈夫ですか!?


ぐ~~~~!


「「……」」


 盛大に鳴った腹の虫に二人で笑い合った。


「いっぱい食べてね」


 木のカゴいっぱいに小さなウリが入っている。

 畑の小さい木になってたやつだ。


「いただきます」


「いただきます?」


 手を合わせてから食べ始めると、隣でオルコ君も真似して食べ始めた。 人懐っこいな。


「うまいブヒ!」


 皮ごと一口。

 少し青臭さはあったけど、甘みもしっかりある。

 食べ応えも抜群でもりもり食べちゃうよ!

 

「なんていう果物ブヒ?」


「コンコロ!」


「コンコロ?」


 まったく聞き覚えが無いな。

 食感は甘みのあるカブって感じだ。

 皮の青臭さがいいアクセント。


「ふふ、これもどうぞ?」


 ポンメイさんがまたカゴいっぱいに別の物を出してくれた。


「豆?」


 ニンニクみたいな豆。

 もう結構発芽している途中、発芽豆ってやつかな?


「うまい!!」


 これは金色の麦のやつが欲しくなるね!

 食べ応えは抜群。

 炒めてあるのか香ばしい香りと独特の風味、それにたしかな旨味が食欲を増進させる。 

 これは漲ってくる!


「すごい食べっぷりね!」


 俺はあっという間に2カゴ分の食料を平らげてしまった。

 張り合っていたオルコ君だったが、すぐにギブアップして俺が食べるのをあり得ないとばかりに見ていた。


「やっぱりオークだろ!!」


 三度目のゲンコツが落ちるのであった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る