第53話 亀裂


「ちょっと行って来る」


「行ってらっしゃい! だけど、もうカイト達はさまになっているんだろう?」


「まぁね、だから、そろそろ離れても良い頃だと思うんだ」


此処暫くの様子では、カイト達は随分と成長した。


実力もさることながら精神的にも随分と変わった。


勇者を含む四職は凄いな。


まるで別人みたいだ。


もう、俺が関わる事は最低限でよいかも知れない。


ヒヤリングから報告。


今のカイト達なら問題なく出来るだろう。


そろそろ、カイト達のお世話も終わりかな。


◆◆◆


カイト達の宿に向かう途中マリア達に会った。


「どうかしたのか?」


この時間なら、マリア達は宿に居る筈なのだが……


「宿に居たくないから、早目に治療のボランティアに行くのよ」


「僕はリアと一緒に戦闘訓練をしに森にね」


「そうなの」


なんだか、おかしい。


「そう? カイトは宿屋にいるのかな?」


「ふん! 居るんじゃない?」


「居ると思うよ」


「居るんじゃないかな? 知らんけど」


なんで膨れているんだ?


「あの……皆さんなんでそんなに怒っているのかな?」


何だか寒気がする。


「あのさぁリヒト! ハーレムパーティって解散出来ないのかな?」


「そうそう、通常パーティに戻せない」


「もし、戻せるなら戻して欲しい」


戻せるか? 戻せないか? の話なら戻せる。


ただ、戻しても余り意味がない。


既にハーレムパーティとして一度登録した以上は彼女達は傷物。


その意味がない。


「戻せるけど? それに何か意味はあるのか? 通常パーティに戻っても、良い縁談も何も無いよ」


「そうできるのね……考えてみるわ」


「出来るんだ! それなら頼むかもしれない」


「うんうん! ちょっと考えたい」


あれ程仲良かったのに……一体何があったんだ。


◆◆◆


カイトの居る宿屋にきた。


「カイトは部屋に居る?」


「……居ますよ」


久々に見る。


あの冷めた宿屋の女の子の顔。


また、カイトがなにかやらかしたのかな?


トントントン


「カイトいるのか?」


「リヒト!?」


久々のむせるような栗の木の臭い。


マリア達、三人が居ない状態で一体だれとこんな事を……


下着や安そうな服が乱雑に散らばっている。


そして、その先には裸の女性が1.2.3.4.5人も居た。


「カイト、それは一体!? 」


まるで絡まったミミズのように裸の女性に囲まれてカイトが居た。


「いや! これには事情があるんだ!」


「一体、どんな理由なんだよ」


「いや、彼女達は……その、オークの苗床になっていたのを助けてな」


「そうなんです! 私行く所が無いって言ったら勇者様が傍に居て良いって言われまして」


「それで勇者様の物にして貰ったんですよ」


「そうです。私達はもう勇者様の物なんです」


「「そうそう」」


見た所どう見ても戦力にはなりそうにならない。


そうか、女なんだから家事をやらせれば良いんだ。


まさか……


「カイト、まさかと思うが、まさか奴隷にしてしまって無いよな?」


「彼女達は行く場所がないらしいんだ。だから、その貰ってあげる事にしたんだよ。俺の事好きみたいだし」


「あのさぁ……お前、勇者だぞ。奴隷は不味い……なんで相談して来ないんだよ」


「不味いのか?」


不味いに決まっているだろう?


勇者が奴隷を侍らせていた。


こんな醜聞は無いだろう。


「これから、教会に聞いてみるが、こんな前例は聞いた事が無い。 果たして問題になるのかどうか聞かない訳にいかない」


「なんだか迷惑かけるな……だが」


確かにオークの苗床になっていた女なら、もう人生は摘んだ様な物だ。


「あの、私達、勇者さまにとって迷惑ですか?」


「気にする必要は無いさぁ。お前達は全員俺の女だ! 迷惑だなんて思わないからな」


「「「「「ううっ、ありがとうございます」」」」」


「まぁ、家事をする人間が必要だから、家事奴隷に……そう報告するよ。だが、それでも醜聞にはなると思うけどな」


「本当に悪いな」


ますます評価が下がるな。


だが、それ以上に問題なのは4人の間に亀裂が入ってしまった事だ。


ハーレムパーティの最大の利点は仲が良い事だ。


そこに5人の女が加わった。


しかも、カイトはこの5人とヤッていた。


此処にあるベッドは埋め尽くされていたのだから、三人は別の部屋に移ったという事だ。


つまり、マリア達三人を追い出して五人とヤッていた。


これは、凄く不味いんじゃないだろうか?


さっきの話だと、マリア達三人はハーレムパーティを解散したいようだった。


折角固まってきたのに……また振り出しか。





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