第52話 勇者カイトSIDE ゴメンな


「……」


オークは殲滅させた。


だが、俺は1人の彼女を救えなかった。


彼女はどんな思いで死んでいったのだろうか?


見た感じ村娘のようだが、着衣は乱れている。


どんな人生だったか解らない。


だが、オークに捕らわれて苗床になっていたんだ。


この世の地獄で生きていたのだろう。


そんな彼女を俺は斬り殺した。


「ありがとうございます……勇者様」


「……」


「……ありがとうございます」


「……ありがとう……」


「勇者様……」


残った女の子は5人。


殺された1人を入れて6人。


全ての女の子の顔は暗い。


だが、これで終わりじゃない。


此処から俺は汚れ仕事をしなくちゃならない。


「リタ、マリア、リア、彼女達を頼む」


「「「解った(わ)」」」


俺は此処から更に修羅にならないといけない。


◆◆◆

苗床がオークの巣ならある筈。


オークの赤ん坊の声が聞こえてきた。


「おぎゃぁ」


「おぎゃぁぁぁ」


やはりいた。


しかし、オークも人間の赤ん坊みたいな泣き声なんだな。


オークはメスが少ないから人間の女を攫い苗床にしてする。

そして、あの場には妊娠している者はいなかった。


「ほうら……私の赤ちゃん……うふうふあはははは……赤ちゃん」


「あはははっ……うふふふっ」


「ほうら……あたしの赤ちゃん」


「「「……」」」


やはりこう言う部屋があった。


苗床になった女は皆、精神が犯されている筈だ。


だが、あそこには『壊れた女』はいなかった。


だったら、何処かに居る筈。


そう思った。


これは同じ女であるマリア達には見せられない。


まずは、オークの赤ん坊を取り上げ……殺す!


悪いな……取り上げさせて貰う。


「あっ、赤ちゃん……私の……私の赤ちゃん……返して! 返してよーー」


俺は泣き叫ぶ女からオークの子供を奪い取り叩きつけ殺した。


「いやぁぁぁぁーー」


オークの子供を自部の子供のように思う母親。


完全に壊れている。


どうするか?


オークの苗床になった女の末路。


此処に居る女は壊れてしまって『もう戻らない』


オークに犯され、壊れてオークの子供を自分の子だと思い込む。


この状態になった女はもう治らない。


どんなに長い治療をしても植え付けられ壊され出来たこの感情はもう治らない。


だったら……楽にしてあげるしか出来ない。


「ゴメンな、俺には助けられない」


もし、奇跡的に精神が治っても、その後は『オークの子を産んだ女』として指をさされ真面な人生は送れない。


体もオークの物を受け入れていたから、男を満足させる事は出来ない。

可哀そうだがもう『人として生きられない』


「私の赤ちゃんを返してーーっ! 人殺しーーっ」


「ゴメンな!」


出来るだけ苦しまず楽に死ねるように一刀両断に斬った。


ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。


君達は勇者でも聖女でも救えない。


せめて苦しませんように……


その気持ちをこめて、この場に居るオークの子供と一緒に彼女達を殺していった。


こう言う事があると言う事は、リヒトから聞いていた。


これは他のメンバーには任せられない。


男であり勇者の俺がしなくちゃいけない事だ。


「いやぁぁぁーー人殺し」


「助けてーーっ」


ゴメンな……本当にゴメン。


オークの赤ん坊に子供……苗床になっていた女を殺して出来た血の海のなか、俺はただ、ただ立ち尽くしていた。


「うわぁぁぁぁぁーーっ」


俺は……俺はもっと強く、強くならないとならない。

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