第45話 見違えた...勇者


「それで、此処の所の活動報告を教えて貰いたいんだ」


今、俺はカイト達の宿屋にヒヤリングに来ている。


昨日、大体の事は聞いたが、もう少し詳しく聞こうと思った。


「此処暫くは、この間話した通りだよ。オークは上位種までどうにか狩れるよ! オーガには苦戦するから、この村で複数のオーガとその上位種を狩れるようになるのが目標だ。昨日言った通りだ」


「凄いな、そこ迄強くなったのか」


「ああっ、このポーションのおかげだ」


「そのポーションだが、悪いいつかは辞めないといけないんだが、その辞められそうか?」


「これ辞めないといけないのか?」


「ああっ、それは本来、初心者兵士が戦争に行く際に飲む精神を安定させる為のポーションだ。 ある程度、精神的に問題が無くなったら辞めるものなんだ」


「そういう物なのか、どおりでリタは兎も角、マリアやリアまでもがあそこ迄、好戦的になる訳だ。 それなら仕方ない。辞めるタイミングはリヒトに任せるよ……そう言う事なら、やはりポーションも薄めていたんだよな」


「まぁ、どんどん薄くなっていくみたいだな」


あくまでこれは、俺が作ったのではなくゼウスさんが作ったていにしているからな。


「そうか、解ったよ! そういう物なら仕方が無い、三人には俺から言っておくよ」


「頼んだよ」


これが勇者という物なのか?


随分、この暫くの間で変わったな。


なんだか、威厳というかカリスマが宿ってきた気がする。


少し前のダメダメ感が全く無い。


「ああっ頼まれた」


「それで、なんだ、その恋愛の方はどうなんだ?」


「ははは、前は随分恥ずかしい所を見せたね。今は随分あっちの方も落ち着いているよ…もう前に見たいに暇さえあればやりまくるような事はしていない……ハァ~今更だが本当に馬鹿な事をしたもんだよ、まぁ手を出してしまった事は間違いない。三人は責任もって愛して、幸せにするつもりだよ」


これ、本当にカイトなのか?


まるで別人みたいじゃないか?


まるで湖に普通の斧を落としたら金の斧になってしまったみたいな……感じだ。


「そうか、随分変わったな」


「正直言えば、俺は甘えていた。 お前に言われた『勇者の旅は救世の旅。人々を救う旅でもあるんだ。その旅の中でオークやオーガ等に襲われている村や町を救う。助けてあげれば『勇者様ありがとう』となる。その反面、今みたいにサボっていると、村や町が滅んで『なんで勇者様来てくれなかったの』と生き残った人に一生恨まれる。そのうち、歩くだけで石をぶつけられるようになる事すらある』という言葉とそれが嫌なら『死ぬ程努力する。それだけだ』その言葉が胸に突き刺さったんだ……」


「もしかして、なにかあったのか?」


「小さな子に泣かれた。 前の街からこの村に来る途中、小さな女の子にあってな……両親が魔物に殺されたそうだ」



「それがどうかしたのか?」


「いや、その子はお婆さんといたんだが……言われたよ『勇者様、なんで』ってな。 多分、此処より先、魔族領に近い村みたいだが、魔物に滅ばされたそうだ」


「どこか解らないが、そんな場所じゃカイトが真面目に取り込んでいても間に合わなかっただろう?」


「そうかも知れない。だが、俺の来るのを待っている人がいる。それなら俺は、最短で強くなり旅をしないとならない……そう思ったんだよ」


「そうか……」


カイトはやはり勇者だった。


今のカイトなら、ちゃんとした勇者に見える。


僅かな間に随分と成長した……そう思えるよ。





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