第44話 変わった勇者


あ~あ、今日からまた仕事か……


横でまだ寝ているレイラに毛布を掛けて俺は支度をして村の入り口に向かった。


旅立つ前はポーションの影響からか、かなりまともになった様な気がした。


果たして、あの後どうなったか?


ある意味、今回の3日間が彼等の試金石だ。


勇者らしくなったのか……


それとも、元に戻ってしまっているか。


此処で半分決まると言っても過言でもないよな。


心配だから村の入り口で待つことにした。


「お出迎えご苦労さん! リヒトっ」


「態々、待っていてくれなくても大丈夫よ」


「まぁ、ありがとうね」


「子供じゃないんだから……」


良かった。


見た感じ、まともだ。


「ご苦労様! 旅で疲れている所悪いけど、すぐに教会、冒険者ギルド迄つき合ってくれ。それが終わったら今日の所は宿屋で休んで大丈夫だよ」


「解ったよ! だが、それより……」


「解っていますわ、ですが」


「うんうん、解っているから、でもね」


「うん、だけど」


なんとなく解った。


「え~と?」


「「「「ポーションくれ!(頂戴)」」」」


やっぱりそれか。


「はい、これ」


「「「「ありがとう」」」」


ポーションを受け取るなり四人ともぐぃっと飲み干した。


「……それじゃ、まず教会に行こうか?」


「ちょっと待て! リヒト、このポーションだが、前に貰ったポーションよりなんだか効き目が弱くて、薄くなったきがするんだが……」


「う~ん、なんだかちょっと違うのよね」


「うんうん、こうカーッってくる物が無いんだよね」


「なんだか違がう」


「そんな事無いよ……」


不味い、バレたのか。


だが、此処はこのまま通さないと不味い。


「そんな事無いよ? 前と同じだって」


「いや、どう考えても色は薄いし、味も薄い。もし作るのが大変ならレシピを教えて貰えないか? こっちには聖女のマリアに賢者のリタがいるからな」


これはゼウスさんの秘伝の物で、飲み続けると依存するようになる。


「これは俺のポーションじゃ無くて、ゼウスさんが作った物なんだ、実は体にも負担が掛かるから徐々に薄くなっていくみたいだ。まぁセットポーションだと思って貰えれば良いんだけど?」


「そういう物なのか? なら仕方が無い」


「解ってくれたなら良いんだ……それじゃ、そろそろ教会に行こうか?」


「ああっ」


上手く誤魔化せたかな。


◆◆◆


教会に案内し挨拶を済ませて、冒険者ギルドに顔を出してサポート役の冒険者に引きあわせをした。


これで、この村でもただ報告書を作成するだけで済む。


あとは、少しで良いからカイト達がまともになってくれていれば楽勝なんだけどな。


そして、今はカイト達ように借りた宿にいる。


「折角だから、ヒヤリングをしようと思ってな」


「良いぜ、俺も丁度報告しようと思っていたんだ」


「それなら丁度良かった。 それで今はどんな感じなんだ」


「今現在はオーク複数を余裕で狩れて、上位種も楽勝だな。 オーガ単体ともぶつかったが、まぁ苦戦はしたけどどうにか出来たよ」


「そうか……この村の周辺はオーガが少数だが出没するから、オーガ複数の集団と上位種の存在が狩れる。その辺りが目標で良いかな」


「それで構わない」


カイトは勇者なんだな……最初こそおかしな状態だったが、随分変わったような気がする。


随分と逞しくなって……もう、俺よりも確実に強い。


「それじゃ、此処での目標はオーガ複数を相手に戦える事、そして上位種も狩れる事。それを目標に行動、そう達成目標に書いてよいか?」


「それで頼むよ」


「解った、それで他には何かある?」


「特にないが、そろそろ、防具を新調したいからその申請も頼んで良いかな?」


「了解」


随分とまともになった気がする。


これなら、あとはポーション無くても戦えるようになれば、カイト達が完全に俺の手を離れるのも時間の問題だな。


「流石に旅でつかれた~」


「悪かったな、それじゃゆっくり休んでくれ」


俺はカイトにそう伝え、宿から立ち去った。





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