雨の日の夜
その事件が起こったのは、ある雨の日の夜のことだった。
強い雨脚が窓を叩き、外の音を掻き消す。
既に夜も深け、今更外に出る用事もない。スヴェンは黙って本を読み、ティアーナはスヴェンのベッドに腰かけ、時に手持無沙汰気味にごろごろしていた。
「明日には収穫できると思うわ」
「それは楽しみだね」
心なしか上機嫌で窓の外を眺めるティアーナ。
彼女はどうやら野外に出ることが好きなようで、昼間も雨が降る中傘をさして散歩に出かけようとしていた。
風邪を引いてはいけないからと止めたときは不機嫌そうな顔をしていたが、どうやらもう機嫌は治ったらしい。
雨の音と本のページを捲る音。そこに時折ティアーナがうろうろする足音が交じっていた。
「そろそろ寝るかい?」
「いいえ。まだいいわ。お茶、入れてくる」
立ち上がり、一階へと降りていく。
珈琲が飲めないティアーナのために街で買い付けたお茶も、その内自家製になるのだろうかと、そんなくだらないことが頭を過ぎった。
数ページを捲り、スヴェンはティアーナが戻ってこないことを不審に思う。湯を沸かす時間があったとしても、少しばかり戻ってくるのが遅かった。
「ティアーナ?」
少し声を張って見ても、返事はない。子の上は狭いため、雨音に邪魔されたとしても少しばかり大声を出せば聞こえないということはないはずなのに。
本の間に栞を挟み、一階へと降りる。
階段から台所に向かう前にスヴェンの目に入ったのは、開け放たれたまま雨風が吹き込まれる玄関の扉だった。
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