第3話 悪名というクソッタレ
満足げなアメリアと、テンションの高いセバスチャン。
出会った時と格段に態度が変化した。
「それではルイス様、私たちは下がらせて頂きます。ご用の際はベルでお知らせくださいませ」
「え~ルイスさまぁ、本当にアメリアはいらないのですか~? 何かと役に立ちますよ?」
「こら、アメリア。ルイス様は休息するのだぞ」
「もう、お父さんには聞いてないって」
年の功のセバスチャンとは違い、アメリアは名残惜しそうだ。
放っておくといつまでもいそうだし、頭をなでて送り出す。
「アメリア、着替えなら一人で出来る。そんなに心配するな」
「ですよね。私はルイス様の成長を信じております。それと……ルイス様っていい匂いがするんですね、えへへへっ」
くんくんと匂いを嗅いだあと、はにかみながら何度もふりかえってくる。
恥ずかしくて、俺の方が赤くなる。
「ふう、やっと静かな時間になったな」
まずマックス100に対して、ポイントが一万ってさ。
なぜ限界値まで楽々こえているんだよ。
不確かな疑問を払わなければならない。
夕食の時間までに、色々と考察をする事にした。
「まずは説明文からだな、どれどれ?」
◇◇◇
【悪名】:
①悪的存在意義を知らしめる数値。その度合いによって、通り名が示される。
②特典として、悪名ポイントを景品と交換できる。
◇◇◇
「あんまり良いことは書いてないなあ」
①の部分に触れてみると、更に詳しい内容が書かれていた。
◇◇◇
【通り名】:ポイント毎にその悪の度合いを示していく。名は体を表す。
悪名05:地元のこわい先輩
悪名25:例のガキ大将
悪名50:存在そのものが呪い
悪名75:誤送給付金返さないマン
悪名100:
悪名1万:ウンチ
◇◇◇
「ウ、ウンチって、いったいどんな通り名なんだよ。……あ、あれ、待てよ」
俺って、ついさっきまで悪名1万を保有していたよな。
名は体を表すってあるし、つまりずーっと臭い匂いを放っていたって事だ、はあーー。
逆にアメリアってすげえよ。
ウンチを肩に乗せてても笑顔でいたし。ちょっと尊敬しちゃうよな。
でも数値が下がった後に、アメリアが良い匂いだと言っていた。
つまりウンチの臭いから、解放されたって証拠だよ。
数値が下がってくれて良かったが、一つ目の項目でどっと疲れたよ。
でも止める訳にはいかない。というか知らずにいたらドツボにはまりそうだ。
恐る恐る②の項目にタッチをし、その交換リストを閲覧する。
◇◇◇
10P:猛毒薬
10P:領民への追加増税の強制執行権
100P:陵辱のマット
500P:精神操作薬(集団用)
1000P:蘇生反転の首輪
10000P:
◇◇◇
「はあ?」
他にもリストは沢山あるが、目につくものだけでもヒドイものだ。悪人にしか用がない
毒薬と増税が同じ10Pだし。その価値の重さが理解できない。
それに見逃せないのが、1万ポイントの装備品だ。
強力ではあるが、デメリットが大きすぎるんだ。
◇◇◇
唯我独悪の剣:攻撃力+5000 相手へバッドステータスを付与。
(地獄より認められるたった一人の悪人のみが装備可能。高揚感に包まれ、楽しい幻覚も見れる。ただし聖属性への抵抗力はゼロとなる)
◇◇◇
「ぶはっ、ヤバイなこれ」
ぶっ壊れに吹いてしまう。廃人確定の装備はナシだよ、ナシ。
ほかのシリーズも似たり寄ったりで、呆れるほど俺には縁のない装備品だ。
「まてよ、さっきまで1万ポイント貯まっていたよな? これってもしかして」
記憶をたどると、ルイスはシリーズの剣を狙っていた。
毎日ポイントを見つめ、かなり心待ちにしていたようだ。
非力ながら力に飢えていたのだ。
小さな暴君に鬼畜の剣か。
想像しただけで身震いがしてきたよ。
……こわっ。
ポイント減らして正解だぜ。
これからもドンドンと少なくしていくか。
「それにしても悪名がミッションによって増減するんだな。……なんだか見えてきたぞ」
ややこしいのは抜きにして、悪名は対外的な数値。相手に与える印象ってとこだな。
もし直接その相手に何かをしなくても、その悪名で悪い印象を与えてしまう。
でも対処法は見つかった。
悪い事をしなければ良いだけだ。
善行すれば尚よしか。
どちらにしても悪名は生き残るにはマイナス要素でしかないからな。
ミッション以外に減らす方法を探してみよう。
「ルイス様、お食事の用意をお持ちしました」
没頭していたようで、外はすでに真っ暗になっていた。
灯りと共に、アメリアがワゴンを運んできた。
ここで失念したいた事に悔やんだ。
ルイスは
ただの贅沢な引きこもりだ。
名誉を挽回したい俺にとって、これはダメな選択になる。
「アメリア、久しぶりにみんなと食事をしたい。父上に同席したいと伝えてくれ」
「えっ。そ、それは素晴らしい事でございます。きっと旦那様もお喜びになると思いますよ」
「だといいがな」
「当たり前ですよーーー」
他の使用人たちもざわめいている。
泣く者や失神す者と色々だが、
この反応もうれしいが、父に用事があるから避けることは出来ないんだ。
数分もしない内に用意され、俺はテーブルについていた。
「お、お前が部屋を出るとは珍しいな」
明らかに面をくらっている父と母。
腫れ物を触るように慎重な物言いだな。
先に話をするべきか迷った。
だが運ばれた料理の匂いには勝てない。
スープをすくい味わった。
「う、うまい」
雑味のない丁寧な料理だな。
また本音がこぼれてしまった。
「あああ、ル、ルイスが。あなた、ルイスが!」
感激している母が、父に嬉しそうに伝えている。
「なんと、ルイスが一人で食事をしているだと!」
「ええ、そうですよ。あーんをして貰えないと暴れまわったあの子が。ああ、夢なら覚めないで。どうかルイスの晴れの姿をもう少し見させてちょうだい」
大袈裟な……でもないか。
食事や風呂に歯磨きまで、必ずメイドにやらせていた。
そんなグータラ息子の性格に、二人は諦めていたのだ。
それが自分の足でここまで来て、スプーンを持っているのだから、涙腺が壊れても仕方ない。
「使用人たちの噂は本当だったのね。ルイスが生まれ変わったわ!」
「ええ、奥様。ルイス様は奇跡をおこされたのです。私たちもうれしゅうございます」
アメリアの称賛におされ、母親は興奮して喜んでいる。
他の使用人たちも加わって、拍手喝采と誉めまくってくるよ。
なんとも奇妙な光景だが、話をするには好都合だ。
「父上、これを機にお願いがあります。私に魔法の師匠をつけてください」
能力の低いルイスだが、その低いなりにも魔力の方がまだマシだ。
魔法の師匠を選んだのは、チリのような可能性にかけたのだ。
「怠け者のお前にか?」
「はい、自分を鍛え変わりたいのです」
父親は皆とはちがい、
うん、これが普通の反応だよ。
父は少し思案していたが、俺の目をみてくる。
騎士団団長を呼び寄せた。
「聞いていたな、ドドベル団長。団員の中から誰か選出しなさい」
「ご冗談を。そんな暇な者などいませんよ。ルイスの相手などまっぴらごめんですな」
「ふー、ならば私の方で当たってみるか」
執事のセバスチャンに耳打ちをし、最後に鼻息をならした。
「分かった。明日からとびきり厳しい方を呼んでやろう。それがお前の望みだな?」
「はい、ありがとうございます」
軽く会釈をし礼をいう。
これにも周りが礼儀正しいとざわつくのだ。少しは慣れてほしいな。
「ありがとう、か。ふん、数日後に同じセリフが聞ければいいのだがな」
父はけなしながらも、急な願いに応じてくれた。
ただ今日の明日となると、普段から手の空いている方になるな。
あまり時間がないから、それでも構わない。
なぜなら、もうすぐゲームがスタートするからだ。
この国はいま列強諸国におされ、荒廃の一途をたどっている。
そんな国と民を救うため、勇者の旅立ちの舞台が整いつつあるんだよ。
始まってしまえば後は早い。
勇者がやって来て、悪事を働くルイスをこらしめる。
第一段階で死にはしないが、こっぴどくやられ重体になる。まあ、俺としたらそれすらも勘弁してもらいたい。
だから、それまでに少しでも悪名を減らし、体を鍛え、誰とも敵対しないよう対策を立てないといけない。
そう、本当に時間がないんだよな。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
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ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
明日はお昼に更新予定です。
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