【掌編】「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」

まほりろ

第1話

王太子の婚約者で公爵令嬢のエルマは、何をされてもやり返せない少女だった。


剣術の授業でクラスメイトに叩きのめされても、魔法の授業でライバルの令嬢に魔法弾を当てられても、彼女はやり返せなかった。


「王太子妃になる人間がそんなことでどうする! やられたらやり返せ!」


王太子に叱られても、エルマは「怖いんです」としか言わなかった。 


王太子はそんな婚約者にうんざりし、エルマを冷淡にあしらうようになった。


王太子がエルマを冷遇するのを見て、周囲も彼女に辛く当たるようになった。


教師も生徒も、王太子に邪険に扱われるような人間は蔑ろにしても良い……そう思うようになっていた。


エルマは生徒達の格好の的になった。


同級生に水をかけられても、足をかけられて転ばされても、エルマは「怖いんです」と言ってやり返さなかった。








そんなある日、エルマの学年は魔物討伐の演習で森に向かうことになった。


運悪く森の入り口で竜に出くわしてしまう。


竜は通常森の奥深くか、ダンジョンの地下深くに生息している。


森の入り口で竜に出会ったのは不運としか言いようがない。


通常竜が王都の付近に現れたときは、王国の選りすぐりの軍人百人以上で討伐に当たる。


引率の教師と学園の生徒だけで、太刀打ち出来る相手ではなかった。


文武両道でカリスマ性のある王太子に、生徒達の視線と期待が集まる。


「殿下どうしましょう?!」


「ここは俺に任せろ!」


王太子は颯爽と剣を抜き竜に向かっていく。


「エルマすまん!」


王太子はエルマを竜の前に突き飛ばし、

「エルマが竜の餌になってくれる! その間に逃げるぞ!」

と言って一目散に逃げ出した。


他の生徒も王太子のあとに続いて逃げ出す。


一人残されたエルマは絶望した。


その瞬間彼女の中で何かが壊れた。


エルマは剣を抜き竜を一刀両断にした。


エルマが剣を振るった衝撃波で竜の後方にあった木々はなぎたおられ、一キロ先にあった山が消し飛んだ。


エルマは剣術の天才でレベル999。


エルマの真の実力を知った王太子は腰を抜かした。


「私がやり返したら相手が死んでしまうと思って、今まで怖くて反撃できませんでした。

 王太子殿下に化け物だと思われるのが怖くて、本当の力を隠してきました。

 でももう殿下になんと思われようとどうでもいいです。

 これからはどんどんやり返していくことにしますわ」


エルマがそう言ってにっこりとほほ笑むと、王太子とその他大勢は戦慄した。



――終わり――



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