2話 帰還
翌朝、起床した2人は質素な朝食を摂り、街に向かって出発した。道中の魔物たちを
イオラを使った時は、威力が異常だった事しか分からなかった。しかしいま目の前でエルネストがしていることは、レオノーラの予想をはるかに上回っていた。
同時に2つの魔法を詠唱する
ピオリムを使った高速回避。
盗賊の技であるはずの『鷹の眼』を使い現在地を
表情にはあまり出さないで驚くレオノーラだったが、エルネストも驚いていた。
驚きの対象はレオノーラの戦い方である。
通常、武闘家は、その身のこなしと高い攻撃力を活かしヒット&アウェイを繰り返すことで、リスクを抑えながら威力の高い攻撃を敵に与える。
しかしレオノーラは全く違った。
敵の攻撃を紙一重で回避し、そのまま敵の側面や背面に全力の一撃を叩き込むのである。
必然的に生傷が絶えないが、不思議と決定打は受けない。
この戦法はハイリスクだが、ほぼ全ての攻撃が『会心の一撃』になるというリターンがある。
こうしてレオノーラはほぼ全ての魔物を一撃で倒していたが、むしろそうしなければ手痛い反撃が待っているのは火を見るより明らかなので、一撃必殺は
魔法職であるエルネストは、その戦い方にとても危うさを感じた。
これは蛮勇ではない。
脳筋の突貫でもない。
多くの前衛職とパーティを組んだ経験があるエルネストは、初めての共闘でそこまで感じ取れたのだ。
順調に魔物の群れを排除し、昼前に街にたどり着いた2人は、ギルドで依頼の報酬を受け取って、夜にまた落ち合う約束をして解散した。
「ただいまー」
レオノーラは自宅に戻った。すると小さな影が彼女の胸に飛び込んできた。
「お姉ちゃんっ!」
懐に飛び込んできたのは、義理の妹であるリリアーヌだ。歳は8。
「ぶじで良かったぁ・・・!」
号泣し始めるリリア。
昨日の内に帰ると言っておいたのに帰らなかったから、気が気ではなかったのだろう。昨夜は眠れぬ夜を過ごしたに違いない。
レオノーラは、自分のお腹くらいの高さにあるリリアの頭を優しく撫でた。
「ごめんな・・・ちょっとしくじっちゃって」
しばらくの間よしよしして、落ち着いた頃に
「ええええええええ!?お姉ちゃんが、男の人といっしょに帰ってきた!?」
「そ、そんなに驚かなくてもいいだろ?」
「だってお姉ちゃん、男なんか大嫌いでしょ?」
「いやまぁ、基本的に目線は絶対に合わせないし、なるべく会話もしたくないし、いきなり触られると吐くくらいには嫌いだけどさ」
「相当ひどいよそれ。そんなお姉ちゃんが、男の魔法使いさんに命を助けてもらって、寝袋を借り、あまつさえ仲良くいっしょに帰ってきた?あした突然、王様が私たちに1000ゴールドくれるって言われた方がまだ信じられるわ」
ひどい言われようである。それも8歳児から。
しかし実際、リリアがここまで驚愕するのも無理ない程に、レオノーラは徹底して成人男性を避けていた。
「なんて言うかその・・・ちょっと変わったヤツなんだけどさ、そこが面白いっていうか。すごく優しいしな」
「ふぅ〜ん?」
「と、とにかく!助けてもらったお礼に今夜飯を奢ろうと思ってるんだ。酒場の前で落ち合うことにしたんだけど、お前も来るか?」
「うーん、酒場で食べるの?」
「子どもでも入れるし、ルイーダの所だったら風紀も乱れてないからいいかなって思って」
「どうしようかな〜」
迷っていたリリアだが、ハッとしてある可能性を考える。
・・・もしかしてお姉ちゃん、騙されてる?
男慣れしていないどころか、ほぼ関わりが無かった異性に、レオノーラはまともな判断を下せるだろうか?もしかすると、両極端なのかもしれない。基本的に
そう思い至ったリリアは、エルネストに会ってみることにした。
「やっぱり私も行く!」
「お、そうか。じゃあ夕飯は3人で食おう」
エルネストとかいう男がどんな奴か、このあたしが見定めてやる!
と鼻息を荒くしていた。この8歳児は、結構なおませさんなのだ。もしレオノーラと(恋愛に限らず友人関係でも)付き合おうとするならば、まずこの可愛らしい
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