漆塗り金魚水槽心中

津島林檎

片足。

なんか、多分私は、きっと目に見えない泥沼みたいな物に、片足突っ込んでるんだと思う。小さな村では浮いちゃうし、話、合わないし友達、居ないし。この小さな村では、小さな水槽では、私、息できない。みにくいアヒルの子。金魚に見えてベタ。猫に見えるビニール袋。きっと私はこんな感じだ。すれ違う。ちょっと惜しい。嗚呼、誰か私にやさしくして。 あ キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴る。 始まっちゃった、学校。みなさん、お早う御座いま〜す!皆川先生、朝からすごい元気だなぁ。今日は、転校生が来てます!クラス中が目を丸くする。えー!男!女!、?女の子です。おー! クラス中のテンションが上がる。誰だろう、少し気になる。じゃあ、入ってきて。ドアをあける皆川。 上等な服に綺麗に切り揃えたショートカットの髪の毛。長い睫毛、女優さんみたいに整った顔。

始めまして、今日から越してきた 椿 林檎です。今日から宜しくお願いします。 透き通った声に反して、可愛らしい風貌が模範少女と言っていい程に美しいかった。魚で言うならベタとか、海月御台。 自己紹介お願いします。 えっと、東北から越してきました。好きなことはお菓子作りです、今日から御学友のお仲間に入れて頂けると嬉しいです。 はい、じゃあ椿さんに質問、ある人〜? はい!俺!俺! 一ノ瀬が騒ぐ。はい、どうぞ。好きな食べ物はなんですか? 好きな食べ物は、ショートケーキです。 ショートケーキ、私も好きー!クラスの女子たちが騒ぐ。私は、そこに私も、とは入れなかった。あ、もうそろそろホームルーム、御仕舞ですね。じゃあ椿さん。席、彼処だから。はい、有難う御座います。彼処?、彼処って私の横じゃん。此処じゃん!

あ、えっと、隣の席だね、よろしくね。椿ちゃんが話しかけてくれた。

うん、よろしくお願いします。 私には、余所余所しい返事しかできなかった。ねぇ、椿ちゃん!後ろからリーダー格の女子、舞美が捕まえる。えっと、こんにちは。お名前聞いていいかな? 私?私舞美、仲良くしてくれると嬉しいな!えっと舞美ちゃん?よろしくね! 私は愛理、私とも仲良くしてね! うん!

善かった。私と仲良くすると浮いちゃうから、安心した。 えっと、、

椿がクラス名簿に目を通す。 津島梅、ちゃん? ―津島。私?私の名前じゃん、津島。振り向いてみる。

わっ、びっくりした笑、隣の席だから、仲良くしてね! あ、うん、ありがとう。 待って、眼の前にいるのに、話さないほうがいいのに。

  ―嬉しい。 私に、話しかけてくれた。嬉しい。 でも椿ちゃん。金魚の水槽は狭いんだよ。 ねぇ、椿ちゃん、 名前を強く呼ぶ舞美。私達とも、仲良くしてね? 怖い。怖い怖い。椿ちゃん、大丈夫かな。 うん!もちろん!

沢山話してくれて、ありがとう!

交わした。

あ、すごい、この人、

きっと天使なんだろうな。

ねーねー、ところでうめちゃん

次って理科だよね。

あ、うん、理科、だよ。

私場所分からないから教えて欲しいなー?

なんだ!そんなことなら舞美が案内するよ!行こ?椿ちゃん!

あ、まって、舞美ちゃん

? どうしたの?

梅ちゃん、ほら、みんなでいこう。

ぅ、あ、

舞美がこちらを定め見る。

ぁ、いや、私、お手洗い寄るから、ごめんね、ありがとう

あ、そうなの?

じゃあ待ってるから、舞美ちゃん達先行ってていいよ~

そう?じゃあさきいってるね。

行こ、愛理。

うん。


ふぅー、

ため息をする椿。

うわ、吃驚した。

やっぱ梅ちゃんみたいに可愛い子は大変だねー。

、、?

いや、私可愛くなんて、ないし、

私と仲良くしたら、浮いちゃうから、ありがたいけど、やめたほうがいいよ、

えー?でも浮くときは梅ちゃんと一緒でしょ?問題なし〜

ね、梅ちゃん。

私と友だちになってよ。

ーーー‐嬉しいーー。

嬉しい、けど、え、でも、本当にいいの?

うん。むしろ私がグイグイ行き過ぎてないかしんぱーい笑。

あ、いや、それは大丈夫、だけど、じゃあ、お友達お願いします。

んもー、友達だったんなら敬語やめよー。

よろしく!梅ちゃん!

キーンコーンカーンコーン。

あっば!やば!理科室行ってなかった!場所わかってるから走ろう!

え、あ、うん!

ーーーーバタバタバタ。

すいませーん。道迷っちゃって転んじゃって。

もしかして、椿ちゃんおっちょこちょい?笑

舞美ちゃんがイジる。

そうそう〜、笑先生、ごめんなさい

あ、あの、私もごめんなさい。

まぁ、転校初日だし。仕方ない、大目に見るわよ。

椿さん、津島さんはD班ね。

はーい はい


あぁ。こんな人、世の中にいたんだ。嬉しい、嬉しい。

あ、班のとこいかなきゃ。

えっと、どこー、あ


梅ちゃん、椿ちゃん、此処だよ!


舞美が指を指す。

ーあ。舞美ちゃん、一緒なんだ。

宜しくね!

うん!よろしくね?梅ちゃん。

ーーーあ。怖い。

ねぇ、私まだ教科書ないから見してほしい。

あ、そっか、今日初日だもんね。

はい、椿ちゃん。

ーーーーーあ。

梅ちゃんは教科書、あるもんね?

うん、ある。大丈夫。

ーーーーーーーーあ。孤独。

どうしょうもなく一人だ。

嗚呼、私は此処の水質はどうも合わないみたいだ。

おめでと、椿ちゃん。

ねー、うめちゃん、シャーペン貸してー?

ーーーは?

まだ私に話しかけるの?

あ、うん、いいよ。

ありがとう!うめちゃん!

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