第9話 ないならある所から 後編①

「しかしこれで

 大体の事情が見えてきましたね」


秋季が少し気まずい雰囲気を感じ

雰囲気を変えようと明るい声で喋り出す。


「確かにそうだな食料の高騰は、

 屯田制導入により鉄や資材の高騰

 それに目をつけた商人達が冀州から

 鉄や資材を大量に買い付け幽州に売る」


「その代わりに幽州から食料を買い

 冀州に売る為に起きたのですね」


なるほどこれで一応の筋は通ったが…


「…何故食料なのでしょうか?」


冬項がポツリと呟く。


「幽州には、他に高く売れる者が沢山あるのに…」


冬項の言葉に劉良は、頷く。


そう…そこなのだ、

冀州は、この河北いや漢きっての

食料生産州なのだ

そんな州で食料が売れると思えないのだが?


「お待たせしました

 こちらがまとめた物となります」


春蘭がそう言いながら

部屋の中に入ってくる。

だいぶ急がしてしまった為か少し息が乱れている。


「ありがとう………」


劉良は、報告書を見て眉間に皺を寄せる。


「どうしました?」


「兗州に続いてここもか…」


劉良は、そう言って冬項達に資料を渡す。


「失礼します……これは……」


「増税だな」


資料に書いてあったのは、

冀州において大守や県令が税が重くして

その税で食料を買い集め

それが食料の高騰につながっているらしい。


しかも兗州で学んだのだろう

反発を抑える為に、

増税理由に、飢饉の備えの為とか

増え続ける盗賊への備えとか

耳障りのいい理由を並べている。


「一応理にはかなっていると思いますが…

 飢饉の備えは大事ですし」


確かに何も知らずに聞くと

そう思うだろうな…


冀州は、国有数の食料生産州だ

その為もし冀州で飢饉がおきてしまえば

その影響は、周辺の州にまで影響してしまう。


その為、あえて税を重くしてまで

食料を集めなくても

常日頃から食料を集めて

飢饉を乗り越えられるほどの食料が保管しているのだ。


「つまり今集めている食料は…」


「自分達の懐に入れる為のものだろうな」


懐に入れた食料は、

値段が高い地域や季節に売りにだし

お金に変えるのだろう。


「しかし、そんなわざわざ回りくどい事をしなくても

 食料に変えずにお金で懐に入れればいいのでは?」


劉良は、首を振る。


「普通の賄賂とは違い

 税でそんな事したら首が飛ぶ

 だから税を懐に入れるには

 一工夫必要だ」


「それがこのやり方だと?」


「これが一つ方法ではあるな

 食料に変えることによって

 売り方によっては懐に入れるより

 高い値段で売れるし

 貯蔵していた古い食料を売ったとか

 言い訳もつきやすいしね」

 

「なるほど…しかし若君は、

 どこでその知識を?」


冬項が不思議そうに問いかける。

 

「あっ…いや歴史書に…

 それよりもだこれを主導してるのは

 冀州刺史?」


劉良は、しまったと思いながら話を変える。


「はいそうです…しかし

 今回の件は、両派閥も協力して

 後押ししてます」


「どうゆう事?」


「どちらも中央からの

 おねだりが酷いようで」


 敵派閥を倒す為の金を集める為に

 敵派閥と協力するなよ


劉良は、ため息をついた。

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