第三十話 劉備と抑えきれない心

起、起、劉良父を迎える


「父上お帰りなさい」


劉良は、屋敷に入って来た父上を迎える。


「ああただいま、すまないな

 遅れてしまって大丈夫だったか?」


「ええ…何とか、母上がいたので」


「そうかよかった…何してる入りなさい」


父上が外に呼びかけると二人の男が入ってくる。


一人は、人当たりが良さそうな男。

名は簡雍かんよう

後に劉備について行った男

…そしてもう一人は、大きい耳をした

俺の全てを奪った憎っき男、劉備がいた。


「…何でこの者たちがいるのです?」


劉良は、二人を睨みつける。

憎い憎い憎い

劉良は、心の底から湧き上がる

黒い気持ちを必死に抑え込む。


「おお怖っ!!久しぶり劉良元気にしてた?」


簡雍は、その心情を知ってか知らずか

劉良に優しく話しかける。


「…はい元気にしてますよ

 お久しぶりですね簡雍殿

 …まだこの男と連んでいるんですね

 人を選んだ方がいいですよ」


そう言うと簡雍は、「変わらないな〜」と

苦笑いしていた。


「良、なんて事を言うのだ」


父上がその言葉に叱って来たがそれを劉備が止める。


「良いのです叔父上、

 劉良は呆れているのでしょう

 官職にもつけない不甲斐ない私を」


「なっ!?そんな事は

 良、謝りなさい」


「………」


何でが謝らなければいけないのだ

俺の人生ぐちゃぐちゃにしたこいつに…


劉良は、父の言葉を無視するが

父は、その姿に余計に怒る。


「謝りなさい!!」


…あぁ五月蝿いな

劉良は、父の言葉に抑えていた

黒い気持ちが溢れ出す。


「お断りします、

 何故自分が謝らなければ

 いけないのですか?」


「何だと!?」

「その通り、謝る必要はないわよ」


父上の言葉を遮る様に声が響く。


声の方向を見るとそこには母上達が立っていた。


「…高春」


「旦那様お帰りなさいませ

 …遅かったですね?

 こちらは、刺史様をおもてなしするのに

 大変でしたのに」


「それは…」


「それは?…まさかそこの碌でなしを

 呼びにだとかではないですよね?」


母上の言葉に父上は、狼狽える。


「あら図星のようで」


「それは…その…」


そんな狼狽える父親を見て劉良は、

怒りで我を忘れる。


…は?何だそれふざけるなよ、

必死に母上が時間を稼いでいた間

は、劉備を呼びに行っていたと?


劉良は、父を睨みつける。


劉良は、さっきまで妻の事を思い出し

怒りがふつふつと湧き上がり

劉備の登場で怒りが最高潮に達していた。


「叔母上、

 叔父上は私の事を「…黙れ」」


父を庇おうとした劉備の言葉を

劉良は遮る。


「劉良…しかし」


「…聞こえなかったか?

 喋るなと言ったんだ…殺すぞ」


劉良は、殺気を込めて言い放つ。


「!?」


劉備は、劉良の殺気に本気で殺そうとしているのだと感じて冷や汗をかきながら

防衛本能だろうか無意識に剣を握る。


しかしその行動が逆に

周りにいた屋敷の護衛達を

刺激して一触即発の空気になった。


「おい…それは、

 殺されてもいいと言う事か?」


その言葉に劉備は、自分が剣を握っている事に気づき慌てて手を離し

叔父の劉子敬に視線で助けを求めるが。


劉子敬は、子供の見た事もない

姿に身動きが取れなかった。


そんな中先に動いたのは、


「いや、落ち着こうぜ皆」


劉備の隣にいた簡雍だった。

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