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 とき子祖母ちゃんは友達と無尽講で食事するから、と昼に出かけた。無尽講というのは一定のメンバーで決まった額のお金を出して、一人ずつ順番にそのお金を受け取れる……という、儲かるのか儲からないのかよく分からない経済活動である。


 そのとき子祖母ちゃんが帰ってきていないようなのだ。なにかあったのだろうか。

「おばあちゃんのことだから友達と買い物サでも行ってらってね?」

 あかりは楽観視しているが果たして大丈夫なんだろうか。


 秋田県内はもともと過疎地域だったが、異世界の人たちが入ってきて、お店などは逆に増えた感じだ。秋田県は金になるぞと異世界人も思ったに違いない。


 だからどこかで買い物している可能性もある。あまり心配しなくてよかろう……と思っていると、とき子祖母ちゃんがルンルンの足取りで帰ってきた。


「なした祖母ちゃん」


「光もそろそろ幼稚園サ入れねもねえべ、八幡幼稚園の園長先生サ話つけてきたんだ」


「……はい?」

 あかりがポチ目になっている。八幡幼稚園というのは八幡神社のやっている格式高い幼稚園だ。俺も通ったが結局こういう人間になったので早期教育というものを疑っているのだが。


「光だって友達いたほうがいいべ? どだ、ひかくん、お友達ほしいべ?」

 完全に親である俺たちの意見はスルーされていたのであった。

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