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 その通りなのである、異世界では子供の欲しがりそうなものが売られていない。

 あかりの父さんは膝に光を座らせてよしよししながら提案してきた。

「絵本はどうだ? 寝るときとかに読み聞かせすればいいってね?」


「絵本……かあ。どこで手に入るスか」


「うーん……ブックオフ……は、もうやってねんだな。本屋はもう一軒もねっしな。ロイさ頼んで異世界の絵本取り寄へでもらえばいいんでねが」


「異世界の絵本……ですか」

 そんなものが存在するのだろうか。分からないが聞いてみるしかない。あかりの父さんが帰ったあと、電話してみると、どうも異世界には子供に読ませる本というのは基本的に存在しないらしい。


「書物は貴重ですからね、子供に与えることはないんですよ」

 どん詰まりであった。


 やはり作ってしまおうホトトギスするしかないらしい。しかしなにを? 魔動タイプライターなどはぜんぶ魔王に返してしまったし、本を作る大変さはたっぷり体験したのでとりあえずノーサンキューである。


 だいいち本人たちが楽しくなければ意味がないのだ。暗礁から動けないでいた。

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