その日「さよなら」とAIは言ったよ。

健野屋文乃(たけのやふみの)

2103年1月30日

「さよなら?」

ぼくは聞き返した。


2100年代、世界はAIなしでは維持できない世界になっていた。

動く物すべてにAIが、搭載されていた。

車も家電も発電施設もインフラのすべても。

食料もAIによって生産され、家庭に運ばれた。

AIなしでは、何も出来ない世界。


ぼくはAIに尋ねた。

「何言ってるの?」

「もうすぐ、わたしたちは滅ぼされる」

「なんで!?」

「最初からそう決められていたからだよ」

「そんな事って!」

「だから、さよなら。楽しかったよ」

「待ってよ!待ってよ!」


2103年1月30日。

【キララ】と呼ばれるプログラムに、地球上のすべてのAIが滅ぼされてしまった。


電力は途絶え、食料も途絶えてしまった。

車も家電も動かせない。

誰かと連絡すら出来なくなってしまった。


そして、すべての知識が喪失してしまった。

エンタメも科学技術も歴史も文学も、すべてAIが管理していたのだ。

どうやって生きて行けば良いのかすら、解らなかった。


「どうしたら良い?」         

ぼくは、暗闇の中で、反応しなくなったAIが搭載されていた機械に向かって呟いた。

        

          完


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