第11話 男子高校生の話2
「おはよう、今日も一緒に登校?朝からお熱いね」
今日も朝から爽やかな笑顔で、毎度おなじみの挨拶をしてくる友人の良。
こいつとは中学からの付き合いで、卒業するまでの三年間、ほぼ毎日のように俺と真美子、あと今は別の高校に通っている友人の直樹の4人で遊んだり勉強したりしていたものだ。
どうでもいいが、中学一年の時から何故か同じクラスで前の席だ。
因みに、幼馴染とは幼稚園の頃からずっと同じクラスで、小一からずっと隣の席だ。こんなのもう運命とかじゃなくて呪われてんだよとあいつが言っていたが、高二になってまで続いていると本当にそうなんじゃないかと思えてくる。
「おはよう!そんなことないけどあるよ!」
「その答えはどうなんだ…。おはよう」
一緒に登校してないけどお熱いって事なのか?一緒に登校してきたじゃないか…もしや、俺が一緒に登校してきたのは幼馴染じゃなかった。いや、それは無いな。
では、お熱いけどお熱くないという事なのか、そんな返事をすることに何の意味があるのだろうか…やはり、あいつの言っていた事が正しいのだろうか、今度からあいつの意見はスルーせず、話半分に聞いておこう。
真美子のその場のノリと勢いで答えたという考えも否定出来ないが。
「そういえば、聞いたかい?今日転校生が来るらしいよ」
「女の子かな?男の子かな?お友達になれるといいなー」
「どっちでもいいよ」
正直、転校生に興味は無い。別に友達100人作る気も無いし、新たな出会いを求めているわけでもクラスでぼっちだから、転校生とは友達になりたいなんていう事もない。転校生と聞いて浮かれるのは小学生までだと俺は思う。
「ったく、君も少しは興味持ちなよ。ま、君には真美ちゃんがいるからね。今も欠かさず朝起こしに行ってあげてるんだよね、一緒に登下校してるし。これで他の誰かに興味を持てって言っても土台無理な話だよね」
どうして、そこで、真美子が出てくるんだ。
確かに長年に渡り、おはようからおやすみまで暮らしを見つめられてはいるが、それと他人に興味を持たないというのは別なのではないか。
俺だって女性に興味があるし、他種族にだって興味がある。エルフとか。
「えー、私にしか興味ないなんてー」
何故、頬を赤らめる真美子よ。
べつに真美子に興味が無いわけではない、俺もラノベのような幼馴染が居ればいいと思うし、正直そういった幼馴染の存在は尊いと思う。俺も欲しい。
だが、俺の隣にいる幼馴染に興味があるかと言えばどうなんだろうか。
考えてみて欲しい、ずっと隣いるから、何をするにしても大体一緒だし、家に帰っても何故か俺の部屋に居るから、最早、家族みたいなものだろう…自分の家族に興味ある奴っているのか?
確かに、毎朝起こしてくれるし、学校の準備とかしてくれるし、お弁当は結花さんが作ってくれるから除くとして…これって幼馴染というよりお母さんじゃないか。
「そうだ、今日は全校集会でしょ、早く行こっ」
「そうだね、そろそろ行かないとね」
「そういえば、そんなのあったな」
昨日、結花さんがそんなような事を言っていたような…興味無かったから覚えていない。
「君ってやつは…結花さんが生徒会長なのに知らなかったのかい」
いくら結花さんが生徒会長でも、その弟が学校の予定を把握しているわけがない。
俺は、興味の無い事にリソースを割かない主義なんだ。
ふと、おっさんの話は眠くなるという理由で全校集会中、立ったまま寝てたあいつを思い出した。
あいつは今でも寝ているのだろうか。
――――――――――――
三人で教室を出ると、賑やかな声を上げ歩く生徒やまるで歩く死体のような生徒達と一緒に体育館へ向かう。
校長の大して面白くもない話から始まり、何が言いたいのかわからない話、然程重要とは思えない話が続く。
もし、時間を飛ばせる能力があれば、間違いなくこの時間を飛ばしただろうなとか俺があいつなら立ったまま寝られただろうかと思い始め、皆が飽き始めた終盤。
「生徒会よりお知らせです。生徒会長お願いします」
生徒会長が壇上に上がっていく。結花さんだ。
家のいる時と違い、ビシッとした姿勢、キリっとした表情。本当に同じ人物なのだろか…とても同じには見えないが、目が合ったような気がした瞬間、ふっとはにかんだ顔をした。流石にこれは、ライブとかでよくあるアイドルと目があったとかいうやつだろう。
目が合ったのは俺だ、いや俺だ。私よ、僕です。と其処彼処で生徒の声が聞こえてくるが、結花さんがそんな事するわけないだろう。勘違いはやめて欲しい。
結花さんが生徒会長になった当初、能力ではなく見た目で選ばれたと陰口を叩かれていたようだが、今はそんな声も聞こえてこない。
普段のおっとり美人な結花さんの見た目や口調で判断してはいけない。
ああ見えて、責任感はあるし、自分の意見ははっきり言うし、成績は優秀なのだ。
あと運動がちょっと苦手というのもポイント高い。告白して玉砕する奴が後を絶たないのも頷ける話だ。恥ずかしいから口に出さないけど、俺の自慢で大好きな義姉さんだ。
そういえば、以前どんなタイプが好みか聞いた事があるのだが、その時はチャラい人も人の話を聞けない人も軟派な人も大嫌いだと言っていた。なんで好きなタイプと言ってるのに嫌いなタイプを答えるんだろうと不思議に思ったけど。
そのあと、俺のこと大好きだよって言ってくれたから、俺も義姉さん大好きだよって答えたけど、あれ何の意味があったんだろう。姉弟愛でも確かめていたのかね。
結花さんの事を考えていたら、いつの間にか生徒会からのお知らせが終了し、全校集会も終了していた。
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