第25話

摩訶不思議 二十五章

一二三 一



前章に引き続き放送局に関連した話を

お伝えします。


(一)

以前お話ししたX先生の仕事で福岡県博多市にある放送局を訪れた時の事です。

ラジオもテレビも放送している局のあるスタジオでそれは起こりました。

なかなか広いスタジオで、X先生が出演し収録することになっています。

隆は収録に万全を期するために少し早めにスタジオのチェックに向かいました。

たスタジオは大きなスタジオでした。

スタジオに入った瞬間からザワザワ感が襲ってきたそうです。

 「このスタジオは何かいるな」と感じた隆は、他のスタジオに変更できないか頼んでみたそうですが、生放送やCM収録、編集作業が入っていて変更が出来ませんでした。

 「困ったな。俺でも感じるという事はX先生だともっと感じたり、見えたりするはずだな。」と隆は思ったそうです。

「まあ、先生だとこんなことも笑い飛ばすかもしれないな。」と思い先生には正直に伝える事にしました。

 「Kさん、ちょっとまずいことがある。」

「どうしたん?」

「スタジオがちょっとヤバイ。」

「ヤバイ?機材か?」

「違う。機材は問題ない。」

「あのスタジオ、多分出る。」

「え~。怖いやんか。」

「先生が払ってくれると思うから大丈夫やとは思うけど・・・このことを先生にも伝えようと思っている。隠しても分かるし。俺が分かるくらいやからね。」

「そやな。どうせ分かるんやったら隠さん方がええと思うわ。」

そんな会話をKさんと交わして、二人でX先生の元へ向かった。

 「先生、お伝えしたいことが有ります。」

隆が切り出した。

「どうしました?難しい顔されてますけど」とX先生。

「先生、実はスタジオにちょっと問題がありまして・・・機材等は大丈夫なのですが。」

「じゃあ何が問題なのですか?」

「私の感じたところで申し訳ないのですが、今日のスタジオは出ると思います。私が感じるくらいですので先生でしたら尚更と思い、事前にお話しに参りました。変更できないか調整してみたんですが、いっぱいで変更できませんでした。」と隆は正直に伝えました。

すると、先生は

「そんなことですか。それでしたら何も問題ありません。寄ってきたらお帰り頂くまでのことです。隆さんが感じるなら間違いなくいると思います。Kさん楽しみですねぇ」と怖がりのKさんをからかう先生。

「止めて下さい。」とKさん。

スタジオへ向かう一行。


(二)

 「ここですか・・・確かに。もう待っていますよ。」そう言いなが、らいたずらっぽい笑顔をKさんに向けるX先生。

Kさんの腰が引けている。

 「隆さん、どれだけ見えていますか?」

「私は今は見えていません。ザワザワ感が強くしているだけです。」

「なるほど」と頷く先生。

スタジオの中に入った先生とインカムで話をすると、中には沢山いる。

防空頭巾を被った女の人、戦時中の飛行服、飛行帽を被った青年、小さな子供などたくさん来ているとのことで、先生が払い始めた。

「Kさん、先生払ってはるわ。」

「やっぱりおるんや・・・」

収録が始まって間もない頃、ひときわ強いザワザワ感を隆は感じた。

収録をしながらも、隆に目で合図を送るX先生。隆も違和感を覚えている。

スタジオからサブ調整室に出てきたところの壁に違和感を覚えた隆。

そこを見ると壁のシミが形を変えていく。

次第に髪の長い女性の横を向いた上半身になって行く。

「これか正体は。」

隆は持っていた数珠を握りしめ、何時ものように念じ始める。

「ここはお前の居る所ではない。立去れ。」

黒いシミが影のようになっている。

Kさんは気が付いていないので、何も伝えない。怖がるだけだから。

収録は無事進んでいる。スタジオの中は先生が払い除けて何事も無い様だ。

「ちょっと止めます。」デレクターの声。

「先生、お手洗いに行かれます。」

「あれっ?さっき行かれたのにな」とKさんが呟く。

先生がスタジオから出てこられて例の壁のシミに向かって何かを呟いた。

黒い長い髪の女性の上半身が元の茶色いシミに変わった。

先生がトイレから戻り際、隆に目配せをして行かれた。

確かにあれは強かった。

収録が終わりホテルに戻った。

「Kさん、今日先生が収録止めたやろ。あれはスタジオ出たとこの壁に髪の長い女性の上半身が出てきたからや。 先生が払いに来てくれたんよ。本当はトイレではなかったはずやで。行ったとこやったからな。」

「そんな事が有ったんや?怖いなぁ。あんたらおかしいで・・・」とKさん。

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