第24話

摩訶不思議 二十四章

一二三 一



放送局では心霊現象がよく起きる。

こんな話を耳にした事はありませんか?

今回は放送局が舞台です。


(一)

とある仕事で隆は大阪のある放送局へ出かけました。

朝早い時間帯の仕事で、放送局内には必要最小限のスタッフしかいません。

隆はあるスタジオに通されました。

その時です。隆をザワザワ感が襲います。

「ん?この感じはよくないな。」

「このスタジオには何かがいる。」

隆は身震いするような恐ろしい感覚を覚えたそうです。

隆はスタジオの中をゆっくり見まわしましたが、そこには何も感じません。

スタジオに隣接するサブ調整室の方から嫌な感じがしてきます。

「スタジオじゃなくて、サブか・・・」

隆はサブ調整室の方へ向かいます。

収録が始まれば何れにせよこのサブ調整室に入らなければならないので、先に見ておこうと思ったそうです。

サブ調整室への重い扉を開けます。

一瞬立ち尽くす隆。

そこに隆が見たものは・・・

 サブ調整室には様々な音響機器等をコントロールする調整卓がある。

その調整卓の上に真っ黒な渦が巻いていた。

負のオーラとも言うべきなのか、隆はそれから邪悪なものを感じた。

どうやらこの場所から離れられずにいる地縛霊ではないかと隆は思った。

調整卓に向かう隆。嫌なザワザワ感が強くなっている。

隆はカバンから数珠を取り出した。

ピシッパシッとラップ音がしている。

数珠を握って調整卓に近づいて行くと、真っ黒な渦巻きが天井の隅に移動した。

隆はそれに向かって仕事が終わるまではそこでじっとしていてくれと念を送った。

収録が始まった。渦巻きは天井の隅でじっとしている。

無事に収録を終え、放送局の担当営業Yさんとティータイムになった。


(二)

「Yさん、あのスタジオ何か有った?」

Yさんが怪訝そうな顔で隆に問い返す。

「何かあった?ってどういうことや?」

「スタジオというよりサブ調整室の方なんやけどね。あそこ出るでしょ?」と隆。

Yさんの顔が強張っていく。

「隆さん、ひょっとして見えるんか?」

「調整卓の上におったよ。」

「マジか・・・」

「そうか・・・見えるんか。仕方ないな。」

「あんまり公にはしてないねんけど、あのサブは昔トイレやってな、そのトイレの頃にあそこで首吊り自殺したデレクターがおったんよ。あのサブでそのデレクター見た言う奴が何人かおる。俺は見た事ないけどな。」

 「そんなことが有ったんや。そのデレクターかどうかは分からへんけど、あのサブには良からぬものがおると思う。」

「そうか。隆さんは見えるんや。」

「憑りつかれたりはせえへんのんか?」 

「いらんもん見えたり聞こえたりしたら、しんどいやろ。」とYさん。

「たまに危ない時もあるけどね。」と隆がコーヒーを飲みながら答える。

「子供の時からやから、もう慣れっこになってしまってる。」

「慣れるもんか?」

「仕方ないやん。見えるねんから・・・」

「ヤバい時はどないするん?」

「僕は数珠かな。魔除けやから。」

「数珠と後は念じるだけかな。除霊方法は知らんから。俺の所に来ても何もしてあげられないって念じる。」

「自分が死んだ事が分からない、受け入れられないから迷っている。早く成仏しなさいって念じる。」

「隆さんも大変やな・・・」

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