第7話クリスマスケーキ

遅れて追いかけてきた僕に気づき砂羽はやんわりと雪菜ちゃんを引き離すと涙を拭いてやっている。


「志音ちょっと付き合って。」


砂羽の声で一瞬真っ白になっていた頭が我に返った。


その後、特に会話もなく2人で雪菜ちゃんを自宅に送り届けた帰り道、砂羽から告白された。


「志音は私が智輝のこと好きだと、ずっと思い込みしてたでしょう。」


まさにその通りだ。


「ああ。えーとなんだ、そのなんて言っていいのか分からないけど雪菜ちゃんは砂羽が好きで合っているのか?」


「私に対する気持ちは中学卒業のとき告白されて分かっていたけど好きというよりかは憧れ的な意味で告白されたと思ってたから雪菜ちゃんが私と同じ高校に入学してきて、智輝の告白を受け入れて付き合っているのを見てやっぱり一時的なものだったと思ってたの。」


「砂羽の前でやたら智輝といちゃついてたのも砂羽の関心を引くためだったのか。」


今にして思えば合点がいくことが多い。


僕には到底まねできないことだと思うが今は口に出さないでおこう。


「とにかく僕は砂羽の恋愛には口をださないから。でも智輝にはこの事は伏せておこう。」


「志音は優しくて冷たいね。」


砂羽の言葉が引っかかって僕が問いかける隙もなく砂羽は僕を駅前のコンビニに引き込んだ。


自宅に着く頃には深夜をまわってクリスマスイブからクリスマスになっていた。


コタツには宗と智輝が食べ散らかした残骸とイビキをかきながら眠る二人がいる。


まだ大虎二人組は帰宅してないのが幸いだった。


「とりあえずコンビニで買ってきた食品は冷蔵庫にしまって散らかっているのを片付けようか。」


砂羽がてきぱきと動き始めている。


蹴っても起きない二人をまたぎながら僕も片付けを手伝う。


「志音は冷蔵庫、お願い。」


砂羽に指示されるがまま冷蔵庫を開けるとまだ手付かずのクリスマースケーキが残されている。


クリスマスケーキが冷蔵庫の場所を占領しすぎて買ってきたものが入りきらないからケーキを取り出すと僕はロウソクを取り出して飾り付けた。


「なあ砂羽、こっちむいて。」


急に台所の電気を消して驚く砂羽に明かりの灯ったクリスマスケーキを差し出すとお互い何も言うまでもなく笑顔になった。


僕は砂羽が好きだ。


大好きだ。


心の声が漏れてしまいそうでやばい。



「きれいだね。」


僕はその声にぎょっとした。


扉が少しだけ開いて宗と智輝が恨めしそうに見ている。


「お前たち帰って来るまでケーキ食べずに我慢してたのにふたりじめてずるくない?」


「宗、さんざん料理を食べ散らかしたくせに。」


僕の反撃も無力に砂羽が手際よくお皿を4枚用意しはじめている。


「砂羽、皿一枚と包丁貸して。」


宗がケーキに包丁を入れ4分の一を皿に移しサンタの飾りとチョコプレートを乗せると砂羽に渡す。


「残りは争奪戦だ。」


いきなりの号令とともに宗と智輝は残りのケーキにフォークを差し込んで食べ始めている。


「志音がんばれ。」


砂羽の言葉と同時に僕も負けずとフォークを掴んで必死に笑いながら食べた。


17歳の忘れられないクリスマスになった。





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