Vtuber、はよ辞めてぇ!

カンザキアヤメ

プロローグ【お前ら、頼むから辞めさせてくれ!】

 ここは、日本で一番大きな屋内ライブ会場。

 収容人数が4万人にも迫るほどのそこは、ほぼ満席。


 ステージでは、照明が光り輝く。

 ホログラムで写し出された、猫耳の生えた黒髪の少女が立っていた。


 少女は、観客席に向かって手を振る。

 会場を埋め尽くす観客が、盛大な歓声を上げた。


『みんな、今日はありがとうにゃ~!』


 そう言った少女の顔は満面の笑み。

 ……というわけではなかった。


『Vtuberの柳祢子やなぎねこ……ねこは、皆のせいでここまで来てしまったにゃ』


 ホログラムで映し出される少女の顔。その表情は、影になった前髪で見えない。


『辞めてぇ! と思ってたVtuberの活動。ひょんなことから人気が出て、辞めれなくなって……こんなライブまでするようになっちゃって』


 いつの間にか歓声は止み、人々は少女の声に耳を傾けている。


『ねこは皆に愛されて、とっても幸せにゃ。でも、一つだけ言わせて』


 少女は顔を上げた。

 観客席を端から端まで見渡し、険しい表情を浮かべる。


『お前ら……いつになったら、ねこにVtuber辞めさせてくれるんだよ!!』



―――

柳祢子やなぎねこ

登録者数:100万人

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