#憂国忌

夢美瑠瑠

(これは、昨日にアメブロに投稿したものです)



 今日11月25日は、作家の三島由紀夫氏の命日であり、「憂国」という著書のタイトルから、「憂国忌」と呼びならわされている。

 ボクはこの小説は未読ですが、「憂国・花ざかりの森」という新潮文庫のオレンジ色の背表紙は見たことあります。


 三島氏の小説は、有名なものは一通り読んでいる感じですが、そう理解できているという自信はない。


 こういう高尚な文学は、自分の非才なBRAINはに少し荷が重い?と、だいたいそういう風に敬して遠ざける、拝んで神棚に飾っておく?そういう扱いでした。


 三島由紀夫自体が毀誉褒貶の激しい人物で、「人工的な文体」、「精神は死んでいた」、「優れた理知」、「生きているときから生首のようだった」…等々の、いろんな本で散見した、いろんな人のいろんなかなりユニークな評言が思い浮かぶ。


 18歳くらいのころには、すでに氏は段ボールに何杯もの夥しい原稿を書き溜めていたらしい。早熟であり、後年の豊饒な多作ぶりの萌芽がほの見える。そういえば「豊饒の海」という大長編もあったっけ…


 氏の文体は、一言でいうと、「理知の勝った、硬質で透徹した美文」であり、語彙も極めて豊富で、読むのに一種の快感がある感じもあって、ボクは氏の文体の模写をしたりしたこともある。

(アメブロの記事のリンク貼っておきたいところですが、貼れるかどうかわからんので後ほど)


 で、男性的であり、例えばしばしば女性一人称でメロドラマぽい短編を書いた太宰治とは対極をなす感じだ。

 実際に三島氏は太宰治氏に面と向かって「嫌いです」とはっきりと言ったことがあると記していて、「彼の”苦悩”などは持続的な運動や冷水摩擦等で凌駕し得る程度のものに過ぎなかった」と、喝破している。これは軟弱な自分自身にも耳の痛い言葉である…


 三島氏の処女作の「仮面の告白」だけは何度か読み返しました。

 三島氏の本質はこの作品でかなりの程度、すべて表現されている感じもある。「自分という厄介なもの」についての「演技している時には本当の自分だと他人は思い、本当の自分でいるときには演技していると思われる」そういう述懐には、世界における居心地の悪さやどこかアーティスティックで、他人や世界と素朴に和合できない、そういう、自らが”アプリオリに不適応な存在”だという自意識が端的に表現されている。


 こういう自意識の、疎外感やら違和感、自分が周囲から浮いている、邪魔者、のけ者、そういう述懐を成している文学者というのは案外というかやはりというべきか、かなりのプロバビリティで、作家には有意に多いという気がします。


 これが思春期に特有な自意識過剰が、文学的に昇華されて表現されているだけだろうか?それとも文学をしている、読書をよくする繊細な人物とかにはやはりそういう宿命的な孤独感や、哲学的な思惟の元になるような苦悩や煩悶が付き纏うものなのだろうか?


 少なくとも三島由紀夫の場合には、その孤独感や違和感、「生まれ出づる悩み」は、その個性に固有の、運命的な宿痾だった気がします。夏目漱石が「行人」で描いた”一郎”という、今でいうとアスペルガーか?分裂気質か?という個性の、孤独だが知的で周囲から一人だけ浮いている、が、ある意味では魅力的な人物がいますが、三島という人も多分こういうユニークなタイプだったのかと思います。


 ボク自身も、どこか文学者気質、というと烏滸がましいですが、周囲からの疎外感や、どうしてもなじめない、ジャストフィットできない、そういう自意識に悩まされ続けてきた人物です。


 しかしそれも結局、人生の他のあまたの要素と同様に、「良し悪し」、「禍福は糾える縄の如し」、「煩悩即菩提」で、晩年近くになって、いろいろと文学的な作物をモノできるようになってきたりして、その関係でたくさんの人間関係もできて、別の形で「白秋」が彩られることができた?そういう結実、収穫もあったという…長く苦しんではきたけれど、苦しんだ分の見返りもあった…これもアメブロとかのSNSに熱心に取り組んできたという、そういう努力の賜物かもしれないです。


 三島の自決は今なお謎ではあるらしいですが、彼の一種畸形な人格に端を発する、病的な行為…そう捉えるのは簡単で、第三者にとっては完全にそうなのだろうが、その文学作品に触れて、その深さやら美しさを知っていた場合、もっと深く知った場合には、その自決の主観的な、文学的な意味やらは別の様相を呈するのかな?もっと三島という人を深く良く知りたいなあ?そういう気もする憂国忌なのでした。


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