ファイナルキル4

 目が覚めた。私はうつぶせで路上に倒れていて、頭からは赤い雫が流れているのが分かった。

 薄目を開けると、そこには足があった。小さな女の子の足みたいだった。

 私は上半身を起こすと、そのまま路上に座り込んだ。

 熊のぬいぐるみを抱えた小さな女の子がそこにはいた。私を手招きして、第六コーワビルに連れていってくれた女の子だった。

 女の子は私の顔を不思議そうに見つめている。その顔がとてもかわいくて愛おしくて抱きしめたくなった。

「お姉ちゃん、お名前何て言うの?」

 女の子が私に聞いた。

「私はねミズキ。高橋ミズキっていうんだよ」

 私がそう言うと、女の子は目を真ん丸にして驚いた。

「えー!お姉ちゃんもミズキって言うの?おんなじ名前だね!私もミズキって言うんだよ。松村ミズキだよ!」

 一生懸命話す女の子の顔を見て私は満面の笑みになった。そして凄く暖かい気持ちになった。


 女の子が私の後ろに目線を送った。私はその目線を追って後ろを振り返った。大人の女の人がいた。どこかで会ったことがあるような気がした。


「お母さん!お母さん!あのね!このお姉ちゃんもミズキって名前なんだよ!」

 女の子が嬉しそうに叫んだ。

 お母さんは女の子の横に来てしゃがみこむと、微笑みながら女の子を抱きしめた。そして私に対して軽く会釈したあとこう言った。

「ミズキさん、とてもお世話になりました」

 優しい声だった。本当はそんな優しい声だったんだね。


 お母さんと女の子は私に背を向けると、手を繋いで歩き出した。

 どんどんと私から遠ざかっていく。私はその後ろ姿を見えなくなるまで見つめていた。

 女の子の手にはぎゅっと熊のぬいぐるみが抱えられていた。

 辺りを見回したけど、私が持っていたはずのぬいぐるみはどこに消えて無くなっていた。

 

 私はもう一回、路上にうつぶせで倒れた。

 そしてゆっくり目を閉じた。

 

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