数分で読める一話完結型のクスっと笑えるショートストーリー。

@kasago1192

第1話 地球最後の日。


 ニュース速報です。


 テレビを見ているみなさん、落ち着いて聞いてください。ただいま地球に隕石と思われる物体が接近しており、世界中の科学者や数学者が出した結果……明日の十二時には謎の物体が衝突し、地球は粉々になってしまうとのことです。以上ニュース速報でした。



 おいおい、どうなってんだよ。


 明日の十二時って、、あと十時間しか残ってないじゃないか!SNSも隕石の話題でもちきりだよ。


 あーあ。オレの人生もう終わりかよ。

 


 いや! 待てよ! 

 

 オレの人生がこんなんで良い訳ないじゃないか!


 残された時間の中で、何ができるのか考えてみたが、真っ先にオレが思いついたのは、童貞のまま死にたくない。男としての小さなプライドであった。


 初めては本当に好きな人とやりたかったが、こんな状況じゃ仕方ない。オレはすかさずスマホを取り出し、風俗サイトを細かく見て回った。


 サイトを見始め三十分が経った頃、小柄で黒髪ロングなオレ好みの女の子を発見した。「オレの初めてをお前にくれてやろう!」頭の中で妄想しながら、お店へ電話をかけた。



「あの、、すいません。○○ちゃん指名したいんですが……」

 

「お前バカか? こんな一大事に出勤してる子なんているわけないだろ! お前みたいなバカは一生童貞でいろ!」


「ガチャ……ツー……ツー」



 盲点だった……



 普通に考えたら分かるはずなのに、なぜ営業してると思ってしまったのか……


 残された時間が短い焦りから、オレの思考が狭まってしまったと後悔し、指名する予定だった女の子をおかずに、一人でことを済ませた。


 スッキリしたオレは、少し小腹が空いてきたので、SNSを使い近くのご飯屋さんを調べてみた。


 人生最後の食事くらい豪華なものを食べたいもんな。などと思っていたが、、


 あ! 待てよ!

 

 オレは先ほど学習したではないか。

 

 営業をしていない可能性があることを……


 オレは急になりふり構っていられなくなり、SNSで気になったご飯やさんに、片っ端から電話をかけ続けた。


 諦めかけながらも電話をかけ続けた甲斐あって、本日営業をしている個人経営のお寿司屋さんに繋がった。


「あの、、今日って、、営業してますか?」

 

「おう! やってるよ!」 


 オレはとてつもなく嬉しかった。むしろ神様のお導きかと思ったくらいだ。


 店主に今すぐお店に行くことを伝え、オレは部屋中のお金をかき集めお寿司屋さんに向かう事にした。


 そして家を出ようとドアノブに手をかけたとき、オレはまたしても気づいてしまった。


 電車が動いていない可能性を……


 危ない危ない……先ほど同じ失敗をしたではないか。


 こんな状況でも冷静な判断ができた自分に、賞賛を送ってやりたい気持ちはあったが、時間は刻一刻と迫っていたので、一年前に買った、タイヤがパンクしている自転車でお寿司屋さんへ向かった。


 電車で向かえば二十分ほどで着くはずなのだが、オレが乗っているのはパンクをしている自転車だ。五十分ほど時間をかけお寿司屋さんに到着した。


 お寿司屋さんに着くと、オレは衝撃的な光景を目にしてしまった。



 そうだ、、お寿司屋さんに繋がっている長蛇の列だ。


 オレはまたしても自分を恥じてしまった。


 な、、なぜ気づかなかったのかと、、


 誰だって人生最後の食事は、豪勢なものを食べたいはずだ、なのにオレは……オレは……


 気づいたら目には悔し涙が溢れていた。


 一応、店主に何時間待ちか聞いてみたところ、三時間待ちだそうだ。


 ここでオレは究極の二択に迫られた。


 このまま帰るか三時間待つか……


 でも残された時間はあと僅か、そんな貴重な時間を使っていいものなのか。そう自問自答していると、オレはまたしても気づいてしまった。



 お寿司のネタが無くなる可能性を……



 フッフッフ……先ほど二度も失敗したからこそ気づいてしまうオレの頭脳、自分の成長に少し驚きながらも自転車をこいで家に帰った。


 オレは家に着きお湯を沸かした。


 そうだ、カップラーメンを食べる準備をしているのだ。


 カップラーメンにお湯を注いだ後、またしてもニュース速報が流れた。


 隕石らしき物体が凄い勢いで地球に向かって来ています。科学者の測定結果では、あと五分もしないうちに地球にぶつかってしまいます。


 そのニュースを聞いた途端、オレは急いでカップラーメンを口にした。


 時間いっぱい待てていないせいか、麺が少し堅い、が気になんてしてはいられない。


 ガリガリとカップラーメンを食べている最中、上空から隕石が落ちてきた。


 隕石が落ちたとたん、凄い衝撃で、ビルや建物が崩壊していき、地球が崩壊してしまった。



 そしてオレは気づいてしまった。

 地球最後の日でも、結局いつもと変わらない日常を送っていたことを。

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