番外編1

ああ、体が重い。

少しばかり昨日は飲みすぎたようだ。

甘いお酒でスルスルと飲めるからと言って、あまり飲みすぎるんじゃなかった。


「あ、おはようございます。」


キッチンからパタパタとスリッパを走らせる音が聞こえる。

相変わらず彼女は朝に強い。


「おはよう。早起きだね。」


きっとボサボサの髪を手ぐしである程度整える。

メガネを枕元から拾い上げて掛けると視界がパッと鮮明になるが、二日酔いには少しキツい。


「林田先輩が遅いだけです。ほら、今日一限じゃないんですか。」


そうだった。

時計を見ると少し寝坊しているようで、急がなければいけない。


「もう今日休もうかな。」


彼女が用意してくれた朝食を食べながらテレビをつける。

テレビにはニュースが流れていて、桜が咲いたというニュースで持ち切りだ。


「休んじゃダメですよ。あ、綺麗な桜。」


ある程度キッチンが片付いたのか、彼女が隣に座る。

少し急いで食べたご飯の皿を重ねて、ご馳走様と言えば、「隣からお粗末さまです。」と返ってくる。


「ん、深月さんも早めに帰りなよ。」


いつものパーカーにジーンズを履いてリュックを持った。

彼女はしばらくテレビを見つめて「はーい」と気の抜けた返事をした。


僕はその声を後ろに、家を出て大学へ向かった。

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