第10話 寮生活

部屋の小机に鍵が4つ置いてある。一人一つ所有するのだろう

「鍵があったよ。多分一人一つずつ持ってていいやつだと思う。」


三人に手渡す


「無くしたら大変だな。ネックレスにでもして首にかけておくか。ポーチに入れておくか?」


サクラは真面目な人のようだ。鍵を見つめ管理方法に悩んでいる

ケセラとレンは雑にポケットにしまっている。私も取り敢えずボタンつきのポケットにしまっておく


「なあジン。荷物って何処に取りに行けばいいんだっけ?」


「荷物は受付で預かると入寮前手続きの説明書に書いてあった。受付に行こう、地図によると南校舎のグランドフロアにあるみたい。最初に通ったところだね。」


「あー、ホテルの受付みたいなのあったね。なんかロボットが置いてあったけどもしかしてあれ従業員かな?掃除もロボットがしていたし、凄いなあ」


「ん~?サクラの地元では珍しいのかい?わてのところじゃレジとかホテルの受付は皆ロボットがやってるよ~」


「え、そうなの。未来じゃん!」


レンの国と地元のギャップに驚く。レンは何処出身なのだろうか、かなり発展しているのだろう。私のところではそんなものは無い。サクラもケセラも同じようで、レンの言葉に驚いている。


「すごいなー、自分のところでも街中で見かけることはあるけど、メインで働くまでは無いよ。」


「まじか。じゃあそのロボットが荷物引き渡ししてくれるのか!?楽しみ!早く行こうぜ」


サクラとケセラがわくわくした様子で急かすため、部屋を出て鍵をかける。



メインルームに行くと、副寮長がのんびりとサンドイッチを頬張っている。片手にはパックのピーチティー。寮長のおかげで無事昼食を取れたようだ。良かった良かった


「ん?君らどっか行くの?活発で良いねえ。行ってらっしゃー」


最後まで言うより先にやる気を無くしたのか、副寮長はキリの悪いところで切り上げて明後日の方向を向く。咀嚼するため顎だけを動かし、他の機能は全て停止したかのようにぼーっとしている。不思議さんだ。


寮を出てグランドフロアへと階段を降りる。

受付へ向かうと、確かにロボットが置いてある。いや、「立っている」だろうか?


黒を基調としオレンジで装飾されたメタルボディは、受付というより戦闘ロボットのような印象を受ける。

私達が近寄ると、俯いていた顔を上げる。省エネモードになっていたようだ。私達を見るや否やピカピカと全身が光り、謎の音楽と共に不思議な踊りを始める。


テーンテテーン ズンチャッチャ~ ジャカジャカダンダン ポーン!

キメポーズをとり静止。拍手待ちだろうか、何となく察して皆で拍手する。


「おー!すげえー!格好いい!」

「本当!面白い!ポッパー君みたいー!」

ポッパー君。なんだそれは



口元が間一文字から右口角が上がった形になっている。人間で言う得意気な顔だ。拍手喝采、二人の称賛に満足したのだろうか。

と、ロボットの口が開く。

「やあ、こんにちは。私はマリア、ここの受付ロボットさ!用件はなんだい」


「うおおー!喋ったあ!!すげえ」

「格好いい~!欲しいこれ」

ケセラとサクラはまたもやはしゃいでいる。かくいう私も見たことの無いものにテンションがあがっている。

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