夫婦の誓い
如月 瑞希
夫婦の誓い
11月22日、いい夫婦の日と言うことで少し短編を。
――――――――――――――――――――――――――
これはとある小さな町に住む
11月22日、午後5時――。
(よ~し、今日はこれくらいでいいかな……)
ようやく仕事が終わった。
「お先に失礼します~」
隣の席でパソコンを
普段ならまっすぐ家に帰るところだけれど、今日は駅前のショッピングモールに行く予定。
そのために朝から必死で仕事をして定時退社したんだから。
バスに10分ほど乗ってショッピングモールにつくと、人混みをかき分けるようにしてケーキ屋へと向かう。
ショーウィンドウを覗き込み、少し迷った末、
峻は、私の同居している彼氏だ。
結婚はしていないけれど。
早く夫婦になれたらいいな、と言う願いも込めて、高校2年で付き合い始めた時から6年間、11月22日、いい夫婦の日には毎年お祝いをしている。
ケーキを食べたり、プレゼントを渡したり……毎年数日前から2人で準備をしていたけれど。
今年はお互い社会人になったので、忙しくてその話ができていなかった。
峻が覚えているか少し不安だけど、忘れていたとしても文句を言われることはないだろう。
ケーキ屋の向いにある雑貨店に立ち寄り、かわいいペアマグカップを見つけて即購入する。
峻も気に入ってくれそうなデザインだった。
家に帰って、事前に家事を済ませておく。
掃除、洗濯、料理など一通りの家事を済ませてスマホを見ると、峻から連絡が入っていた。
『今日遅くなる。ごめん』
わかった、お仕事頑張ってね、と返したものの、峻が今日のことを忘れているのではないかと不安になる。
……カチャ……
部屋でくつろいでいると、鍵を開ける音がした。
「峻!おかえり~っ」
「ただいま、
峻に呼ばれ玄関に行くと突然、目の前が華やかになる。
「恵……いつもありがとう。これからもよろしく。
……早く本当の夫婦になろうな」
その言葉だけで峻が覚えてくれていたのだと気が付き、思わず涙が零れそうになるほど嬉しかった。
峻がこちらに差し出してくれている見たこともないほど華やかで大きな花束には、私の大好きな薔薇がたくさん使われていた。
「っ……ありがと、峻……あのね、私もプレゼントがあるの。
受け取ってくれる……?」
「もちろんだよ。……恵も覚えててくれたんだね、嬉しい」
「覚えてるに決まってるじゃん……峻との大切な日だよ?」
「ん……そりゃそうか、恵だもんな」
「えへへ……」
そんな会話を交わしながら、ふたりでリビングへ向かう。
「「ところで、ケーキ買ってきたんだけど」」
「「え?」」
…………今、峻もケーキ買ってきたって言った??
「まさか、被った?峻もケーキ買ってきたの?」
と聞くと、峻に
「峻もって言った?恵も買ってるのか?」
と聞かれる。
「う、うん……」
「「……種類は?」」
「モンブラン」
私が答えると、
「フルーツタルト。恵が好きな」
と峻。
「……なんでモンブランかはわかるよね?」
「……っ……俺がモンブラン好きだから、だろ?」
「うん……っ」
(まさか、同じ事考えてるとはね~……)
「それにしても、同じ事考えてるなんてな」
「……!?それ今私も思ってたんだけど……」
ふたりでひとしきり笑ったあと、
「まぁ、それくらい仲いいってことだよね!」
と言うと峻も頷いてくれた。
2人で談笑しながらご飯を食べ、私は峻にマグカップを渡す。
結局ケーキは2種類とも完食してしまった。
峻が選んでくれたフルーツタルトは、本当においしかった。
「……ずーっと…一生一緒にいようね、峻。死ぬまで愛し続けるよ……」
「…ん……俺も。恵、一生愛してる。これからもずっと一緒にいような。」
手を握り合って、固く誓った。
夫婦の誓い 如月 瑞希 @kisaragi_miuki
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