第21話 つめ

 ショウの話題は、一般社会でも日に日に大きく扱われるようになってゆく。勢いがあった。

 アート作品としての扱い、価値その議論については決着がつけられる気配こそなかったが、それ以外の領域では、無差別に人々の目に止まる機会は増えた。それは主にネットを介し、話題を惑星全体へと広がっていた。詳しい内容は知らないが、ただ、いまそういった騒ぎが起こっていることだけはなんとなく聞いたことがある、そういった種類の人々を日々生産していた。

 ショウが提示するアートはものではない、物質でない。

 ゆえに誰かがとらえて、手元まで引寄せて値段を張り付けて売ることができない。何者にも値段をつけさせない。

 その思想めいたものを思想と捉え、評価する者の数が増えていった。当然、否定する者も増えていった、否定の理由の多くは考えが浅いという指摘だった。だが、肯定する者たちは、ショウの側に立つ、活発にその弁護を引き受け、自己理解の熱を込めて解説した。ほとんどは、いかに自分だけがショウのことを完璧に理解しているか、それを披露するものだった。しかし、その熱心さに、無意識のまま巻き込まれ、新たにファンになる者もすくなからずいた。

 廃墟を破壊された町の人々の意見は、相変わらず評価を二分していた。町に残された不良債権を片づけてもらって非常にありがたい。いいや、自分たちの町をおもちゃにされて不愉快だ。その二つだった。

 ショウが古い映画スタジオに怪獣を出現させ、破壊した二週間後。みえない怪獣は草臥れた集合住宅へ現れた。

 どの建物も築七十年以上は経っていた。いまはもう誰も住んでいなかった。建設された当時は、新時代型集合住宅と謳っていたという。現れたみえない怪獣は、みえない手をふり、みえない爪をたて、集合住宅七棟を準場に破壊していった。

 粉々にした。

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