【ゲームブック】顕現の力

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第1話

1.プロローグ

 君は闘いに向いていない、ソードを持つことも鎧を着ることもできない、魔法や信仰心によって奇跡を起こすこともできない。

 一見凡庸な君が持っているのはただ一つ、絵を”顕現”させる力だ。絵を描いて、無から現実を生み出していく。力や知力がステータスの王道にあるファンタジーにおいて、この能力でいかに立ち回るか、それは君の筆力次第と言えるだろう。


 君には友人がいた、病を患っていた彼とはベッドで遊ぶことが多かった。そこで様々な絵を描いた幸福な時間。彼の美しい絵は、君にも大いに影響を与えた。彼を楽しませたいという一念で絵に没頭した。

 しかしある日彼は忽然と姿を消した、静養のため空気の澄んだ高原へ居を移したという噂だけが残った。彼との陶然とした絵遊びのひと時はもう戻ってこない。喪失感が去来した。

 彼の性質からいって、さよならの一言もなく姿を消すなどありえないことだった。塞ぎ込んでいた君は、彼は何かの事件に巻き込まれたのではないかと考えるようになる。その考えを反芻しながら絵を描くだけの日常が過ぎていった。そしてある日、彼を追う旅に出る覚悟を決めた。


 孤独の日々に神が奇跡を与えたか、君の絵は顕現するようになっていた。特別信心を持ったことも、魔術の源となるマナに触れたこともない君が、無心の果てに奇跡を手にしたのである。初めは一羽の蝶であった、エメラルドの鱗粉を纏った蝶がスケッチブックから飛び立つと、しばらく君の周りをひらりひらりと飛んだ後、何事もなかったかのように野原に自然のものと違和感なく混ざって蜜を吸った。

 剣も、魔法も、自然の力に支えられている、世界に満ちる自然の力を拝借し剣士は剣を振るい、魔法使いは万物の法則をねじ曲げる。それらは常に等価交換だ、しかし君の顕現の力は見返りを求めないように見える。


 この顕現の力の理由を探ることも君の動機の一つだろう。初めは蝶や木の実など他愛のないものが顕現の対象だったが、その力は試行される毎に大きくなっているように見える。その証拠に君の足元には、威厳的と加えて差し支えないだろう、長毛の猫が寝ていた。君はこの威厳的長毛の猫にソラと名付けた。


 さて君とソラは冒険の旅に出かけようとしている、顕現の力の謎を解明するため、友の行先を探るため、何より退屈な日常から抜け出すための冒険だ。悩んだ末君が選んだ行先は…


 2.高原を探索することにした

 5.王都を探索することにした


2.高原を探索する

 君は友が療養に向かったという高原を探索することにした。高原は峠道を越えた先にあり威厳的長毛の猫ソラ様を連れて、徒歩で越えるには骨が折れると思われた。

そこで君は

 4.馬を顕現させることにした

 5.王都に出向いて商人から馬を借りることにした



4.馬を顕現させる

 君はキャンバスに絵を描き、”馬”を顕現させる


画像1

  6.[顕現]馬を顕現させた、あるいはへ移動



6.[顕現]馬を顕現させた、あるいは

 君が筆を置いた途端、顕現の力が空間を歪め、スケッチ同様の馬を召喚しようとしている。馬が暴れているのか絵の空間が激しく波打っている。君は絵の出来栄えについて【顕現チェック】を受ける。


ー顕現チェックについて


 顕現の力はいつでも自由に使えるわけではない、その絵が精緻であり、込められた念が強い程、顕現の成功率が高まる傾向がある。

 また、お節介な忠告であるが、悪戯心にでも現世に存在しない、でたらめな絵を描くことはおすすめしない。どのような結果が待っているかはともかく、それはゲームマスターの手に及ばぬ領域のため、君の良心に任せようと思う。



【顕現チェック/[顕現]馬を顕現させた】

・君の絵には次の要素が揃っているだろうか? 点数の合計を書き込むこと。

・*マークの項目が失敗している場合は「致命的失敗」となる

【No】[点数] 条件

【1】[*10] 首がある

【2】[*10] 頭がある

【3】[*10] 脚が4本ある

【4】 [5] 尻尾がある

【5】 [5] たてがみがある

【8】 [2] 蹄がある


【合計】    / 42 


 羊皮紙が眩い光に包まれ、顕現の法則が成ろうとしている。


ー37点以上

 果たして顕現の力は成り、君の目の前に立派な駿馬が姿を現した。威厳的長毛の猫ソラ様は驚いて隠れてしまった。

 君が手を差し伸ばすと、馬はかしずき撫でられるがままうっとりとしているようだ。顕現の力の副産物だろうか主従関係が構築されている。

 23.[移動]高原へ移動する


ー37点未満もしくは致命的失敗

 しかし顕現の力は成らず、暴走をはじめる、果たして現れたのは馬と人間と海洋生物をミックスさせたような合成獣(キメラ)であった。それはしばしの間ビクビクと痙攣した後ドロリと液体になり地面に染み込んでいった。

 威厳的長毛の猫ソラ様は哀れみの瞳で君を見上げている。君は馬で峠を越えることを諦めざるを得なくなった。

 5.[移動]王都へ移動する



5.王都

 秋である、王都には市がたち所狭しと果物、豆、穀物、皮革、金属細工などの商店が軒を並べていた。君はかつてそのような活気のある街を見たことがなかった。ーここなら馬どころか従者付きの馬車だって借りられそうだー君は自分の懐具合も忘れて興奮した。

 蒸し立ての饅頭に舌鼓を打ちながら歩いていると、厩付きの宿屋を発見した。ここなら馬を貸してくれるかもしれない。鳩を追いかけ回しているソラに声をかけ宿屋の木戸をくぐった。その先は旅人が集う酒場になっており、食事のほか仕事の斡旋も行われているようだ。

 君はカウンターにいる男に声をかけた。

「一晩泊まりたいんだ、それと馬を借りられるかな?」

「へぇ宿泊でしたら一晩10Gでございます、馬は何日必要ですか?」

「2日、、、いや3日借りたい」

「3日でしたら60G、保証金としてまず300Gお預かりします、馬をお返しいただいたときに60G差し引いてお渡しします」

 田舎育ちの君には、その相場が適切なものか計り知れなかった。

「300Gか、ふむ、、、」

考え込んでしまった君に店主と思しき男は慇懃に言った。

「御代のご用意ができたらいつでもお声をかけてくださいまし」


 路銀など顕現を行えば容易なことだが、君はそれが世界の均衡を崩すことにつながると確信していた。王都への2日間の行程で体も疲れており、一先ず酒場で軽食をとってベッドに潜り込むことが最善に思えた。

 君は

 7.[行動]休息を取る

 8.[顕現]金を顕現する


7.休息を取る

 君と威厳的な長毛の猫ソラ様はあてがわれたベッドに潜り込み睡眠を貪った。深夜頃、バタバタと物音がして目を覚すと、君を囲むように兵士が何人かと、フードを目深にかぶった老婆がいた。老婆は「ソイツだよ!ソイツが怪しい術を使うのを見た!」と叫んだ。兵士は手荒く君を扱うと「同行願う」とだけ言った。

 しかるべき手続きのないまま捕縛されてしまった君は、ー否、城壁の内側で起こっていることだ、後ろめたいことはしていないのだからやがて釈放されるだろうーと考えた。

「何の罪で?」努めて冷静に問うても、兵士はニヤニヤ笑うだけだった。視界の端で老婆が幾らかの小銭を受け取っているのが見えた。

 どうやら面倒事に巻き込まれたようだ。その晩は独房に閉じ込められた、明かりとりが高い位置にあり、真っ直ぐ月明かりが部屋の中に射した。それによっておよその時間が計り知れた。時間の感覚が失われると人は急速に呆ける、月明かりがあるのは救いといえた、その明かりとりからソラがしなやかに飛び降りてきて体を寄せ寝息を立て始めた。まったく猫は気軽でいい。


 13.囚われの身として王に接見する

 9.[顕現]金で兵士を贈賄しようとした


8.金貨を顕現する

 君は不足する路銀を顕現の力で補おうと考えた、いつものことだが無から有を生み出すことの後ろめたさを感じる。まして今回は金貨ということで胸騒ぎがする。雑念を振り払って

君はキャンバスに金貨を描いて”顕現”させる


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 9.[顕現]金貨を顕現させた、あるいはへ


9.[顕現]金貨を顕現させた、あるいは

 君が筆を置いた途端、顕現の力が空間を歪め、スケッチ同様の金貨を召喚しようとしている。絵の空間が激しく波打っている。君は絵の出来栄えについて【顕現チェック】を受ける。


【顕現チェック/[顕現]金貨を顕現させた】

・君の絵には次の要素が揃っているだろうか? 点数の合計を書き込むこと。

また*マークの項目が失敗している場合は「致命的失敗」となる

【No】[点数] 条件

【1】[*10] 金貨を現す円が一つ以上ない

【2】[*10] 金貨を現す円以外の形は描かれていない


【合計】    / 20 


ー20点

 果たして顕現の力は成り、君の目の前に無数の輝くコインが現れた。

 ・拘束されている場合は

  11.贈賄を行うへ

 ・拘束されていない場合は

  10.金の亡者へ


 

ー致命的失敗

 しかし顕現の力は成らず、暴走をはじめる、キャンバスの上で小さな爆発を起こし危うく指先を焦がすところだった。

 金貨を顕現することに失敗した君は、フテ寝することにした

 ・拘束されている場合は

  12.フテ寝するへ

 ・拘束されていない場合は

  7.休息を取るへ


10.金の亡者

 顕現された金貨を見下ろして考えた。

ー無限にこの力が使えるならあらゆる物が手に入るーと、君は露店商へと赴き、甘い汁の滴る果物を購入した。金貨を差し出す時手が震えたが露店商の男は疑いもせず釣りと果物を寄越した。

 やった、どうしてこれまでこの力の使い方に気がつかなかったのだろう。豪勢な食事、丁寧な手織りの服、一流の職人の靴、こうして身の回りのものを揃えてしまうと宿屋住まいも面倒にみえた。家を買い、家事や護衛のために無数の奴隷を求めた。

 町中で君の金遣いの荒さに噂がたった。西方より来た大商人の子女であるとか、盗賊の頭であるとか。その類の悪い噂を揉み消すためにも存分に金を使った。

 気がつくと君は金で買えるものは全て手に入れてしまっていた。そして夜毎、安寧の床につくたび、友との懐かしい日々を夢想した。


 明日こそは冒険の旅にでよう、そう思いながら、しかし今以上に恵まれた運命があるだろうかと涙を流した。


Ending C 甘い汁


11.贈賄を行う

 君は両手に余るほどの金貨を顕現させた。顕現の力には慎重な君だったが兵士の態度には目に余るものがあった。ねじり上げた腕にはくっきりと痣がついていたー利己的な証拠だろうそれなら買ってしまえばよいーそう思ってからの君の行動は早かった。衛兵を呼び出すと床に金貨を一枚放った。

「床が固くて眠れないんだ、敷物をもらえないだろうか」

衛兵は転がっていく金貨を目で追っている。

「ねぇ頼むよ」もう一枚投げる。

何が起きたのか見当がつかず、戸惑っていた衛兵にもようやく察しがいったようだ。さぁもう一枚、もう一枚、もう一枚。

「これで5枚だね、どのみち僕の能力がどういったものか知らないんだろ? 衛兵さんは5枚の金貨を懐にいれ扉を開ける、あとは勝手に出ていくさ。衛兵さんは空っぽの牢屋に鍵を掛けて、大変だ! とみんなを起こして回る、簡単でしょ?」

「賄賂ということか、愚弄するなよ、このことは報告しておくからな」と言いつつも目が金貨を追いかけている。

 君は一度に両手いっぱいの金貨をザラザラとばら撒いた。

「これでも?」

 苦々しい表情で考え込んだ衛兵は、牢の鍵を開けると金貨を拾って這いずり回った。君はするりと牢を抜け出し、小走りで馬小屋まできた、藁に身を潜ませ一つの考えに至った。


10.金の亡者へ


12.フテ寝をした

 威厳的長毛の猫ソラ様も寝ていることだし、明日になれば訳もわかるだろうと君は簡単に考えていた。ただ独房は岩盤をくり抜いただけの原始的な作りであり、用を足すのにも穴を掘って埋める必要があった。さすがの君もこの環境に長居することは避けようと心に誓った。

 夕刻、巡回に来た衛兵に、敷物を所望したが一瞥くれただけで通り過ぎて行った。そういえば老婆は「ソイツが怪しい術を使うのを見た!」と叫んでいた。

 顕現の力を使うときは周囲をよく確認したし、誰かに見られているということはないはずだった。しかし現に顕現の力のことで拘束されてしまっている。いずれにせよ、体力を温存しておくことが急務に思えた。ソラを抱き抱えると君もやがて寝息を立て始めた。


13.囚われの身として王に接見する


13.囚われの身として王に接見する

 鳥が囀り、早朝の空気が漂ってきた頃に飯が運ばれてきた。宮中の使用人の残飯だろうか粗末なパンが2つトレイに無造作に置かれている。トレイを差し込まれた時にはため息が出た、ソラに至っては一度フンと匂いを嗅いで、興味なさげにまた寝てしまった。

 これからどのような扱いを受けるのかわからない以上、食事は摂っておくべきだろうと考えた。パンを小さな塊に千切っては水で飲み込んでいると、衛兵が3名現れた。内1名は上級職であろうか、鎧や帯剣のしつらいが明らかに他2名と違っていた。

 衛兵に皮肉の一つも言ってやろうかと考えたが、口を閉した。昨晩の老婆の一件を見ても、誰が敵なのかは判然としない状況だった。

 偉そうな衛兵が「王がお会いになる」といい、あとの2人が牢屋にかかったかんぬきを抜いた。両脇を抱えられて、目隠しをされた、いくつかの廊下と階段を経たことが雰囲気でわかった。目隠しを外されると、赤絨毯のいかにもやんごとなき人物がいるであろう小部屋に通された。

 待っているとしばらくして王が現れた、正確に確認したわけではないが、その男性の発する風格はただものではないと思わせるに十分だった。男は、

「奇妙な術を使うのだそうだな?」と単刀直入に尋ねてきた。


 14.否認する

 16.正直に打ち明ける


14.否認する

「奇妙な術を使うのだそうだな?」と王は単刀直入に尋ねてきた。昨晩の乱暴を思い出し、ここは一般人として振る舞った方が無難だろうと考えた。

「絵を描きます。ただそれだけで術など恐れ多いことです」

「術は使わぬと申すか」さらに尋問が続いた。

「宮廷画家としても能力は遠く及ばぬと存じます。ましてや奇妙な術など使えませぬ」

哀れみを誘うように言ってみたが王は次のように続けた。

「ウワバミの毒についても知らぬか?そなたが術を扱っているのを見たという者がいる」


 15.頑なに否認を続ける

 16.正直に打ち明ける



15.頑なに否認を続ける

「毒ですか、残念ですが私には関係のない話です」と君は答えた。

「よしわかった、それではそなたから打ち明けたくなるまで独房にいればよい」

王の厳しい言葉で、君は再び独房へ舞い戻った。それからの日々は虜囚と変わらぬ扱いを受けた。

 壁に傷をつけることで食事の回数を記録した、日光と月光、食事時間でおおよその時間を測り知った。空腹には敵わぬのかソラも食事を摂るようになっていた。むしろ薄暗い独房の方が猫にとっては都合が良かったのかも知れない。

 絵の道具を含め持ち物は全て取り上げられてしまった。それでもやがて冤罪が認められ、自由の身になれると、そればかりを考えた。


 何年が経っただろう、君は壁に印をつけることも、未来について考えることもやめた。一度鈍化してしまった心は君を虚無に束縛した。

 ある日、外で争いの音が聞こえた。やがて牢獄の前に一人の男が立った。この国とは違う紋章の入った鎧を着込んだ男だ。手入れの行き届いた武具は、男の強さを現しているように見えた。しかし君は口をつぐんだまま何もできないでいた。男は一瞥をくれるとマントを翻して去っていった。

 争いは長くは続かずやがて静寂がおとずれた、それからは食事も提供されず、牢獄は闇の中に君を取り込んだままその役目を終えた。


Ending D 理不尽な牢獄





16.正直に打ち明ける

「正直に申し上げます、私は絵を描きます、そうすると描いたものが現実になる事があるのです」

「なんと、そのような術は聞いたことがない、さぞ名のある者の元で修行したのだろうな」

「いいえ、この力は特別な修行をすることなく備わりました」

「ふむ、にわかには信じ難いが、、、時に王女カタリナを知っているな」

「はい、お会いしたことはございませんが」

「それではカタリナが今、病に伏せっていることは知っているか」

「それは、存じ上げません」

「ウワバミの毒については?」

「それも存じ上げません」

「わかった、衛兵、この者に部屋を与えろ」

そう王は告げると、玉座に深く腰掛け中空を睨めつけた。


 王宮の客室にはこれといった装飾もなく、質素でいて清潔感のあるしつらえになっていた。客室とはいっても平民に貸与されたもののためか、そこまで華美にはしていないのかもしれない。牢獄で汚れた体を清めていると、侍女がやってきて言った。

「旅の方、王様の話をよく聞いて差し上げてください、カタリナ様が伏せってから二十日間が経ちます。特にここ数日は体調が思わしくなく。王様も苛立っておられるのです。」

「ウワバミの毒というのは?」

「私も詳しい事はわかりませんが、西方の国にいる毒蛇で、このウワバミの遅効性の毒がカタリナ様に用いられたのではないかとの話です。国内外から医者、薬師、魔術師などが集められましたが、どなたもカタリナ様を治せなかったのです」

「それで怪しい術を使うという者にまで声をかけている訳ですか…」君はため息をつく。

「代わって無礼についてお詫び申しあげます、永く続く戦乱で、兵士の中にも性質の悪いものが混在しているのです、決して王の本意ではありませんゆえ」

「謝らなくても大丈夫ですよ、今はこうして客として迎えられているようだし」

 ベッドに座ったソラは、欠伸をして伸びをするとストンとベットから飛び降りた。ソラは王宮で飼っているどんな猫より美しく見えた。人心地ついていると、再び王に呼び出された。


「あらましは侍女から伝えた通りだ、私たちには猶予がない、そこでそなたの力を持って血清を手に入れたいのだ、褒美は思うままに取らせる」

「王様、私の力は顕現の力です、血清のような定まった形を持たぬ物を取り出す事はできたことがありません」

「それでは、ラーテル(ミツアナグマ)ではどうか、アレは猛毒への耐性を持っているらしい、調査団が生息域へ向かっているが捕獲には至っておらん、ただ調査団の一人が特徴についてのメモを寄越してきた、顕現の力を見せるか、それともウワバミの毒について何か申したいことはあるか」

 見たことのないものの顕現は初めてである、不安を覚えつつ君は


 15.頑なに否認を続ける

 17.[顕現]ラーテルを顕現する


17.ラーテルを顕現する

 君は王の要請に従いラーテルを顕現することになった、見たことのない生物の顕現は初めてである。顕現の力がどのように作用するかいささか不安である。王が差し出したメモは次のようなものだった。君はこのメモを元に顕現の力を試みる。


体長60 - 77センチメートル。尾長20 - 30センチメートル。体重7 - 13キログラム。背面の体毛は主に灰色で、境は白く縁取られる。頭部から背面、尾にかけては白い体毛で覆われる。吻端(口の先端)から腹面、四肢にかけては黒い体毛で覆われる。皮膚は分厚く、特に頭部から背にかけての部位は、伸縮性の非常に高い、それでいて硬さを併せ持つ、柔軟な装甲となっており、生態的にもこれを最大の武器としている動物である。

耳介(耳の外に張り出す部分)がない。四肢には大きく発達した鉤爪(かぎづめ)が生える。イタチによく似ている。


画像3

18.[顕現]ラーテルを顕現させた、あるいは



18.ラーテルを顕現した、あるいは

 君が筆を置いた途端、顕現の力が空間を歪め、スケッチ同様のラーテルを召喚しようとしている。絵の空間が激しく波打っている。君は絵の出来栄えについて【顕現チェック】を受ける。


【顕現チェック/[顕現]ラーテルを顕現させた】

・君の絵には次の要素が揃っているだろうか? 点数の合計を書き込むこと。

・*マークの項目が失敗している場合は「致命的失敗」となる

【No】[点数] 条件

【1】[*10] イタチによく似た動物が描かれている

【2】[*10] 四肢に鉤爪がある

【3】[*10] 耳介がない


【合計】    / 30 


ー30点

 果たして顕現の力は成り、君の目の前に獰猛なラーテルが現れた。

 19.ラーテルを顕現した

 

ー致命的失敗

 しかし顕現の力は成らず、暴走をはじめる、キャンバスが大爆発を起こすと辺りの物質を次々と巻き込んで竜巻となり、その渦の中から身の丈10メートルはあろうかという仔猫が現れた。

 20.巨大仔猫が顕現した


19.ラーテルを顕現した

 一座の前にラーテルと思しき動物が姿を現した。衛兵の一人がこれを捕らえようと手を出したところ、ラーテルは牙を剥き激しく牽制した。体長60センチ程度の小動物だが激しい攻撃性を備えていることが感じ取れた。

 衛兵がもたついている間に君はラーテルに歩み寄ると、いとも容易くかい撫でた。緊張が解れたのか牽制の牙を収めたラーテルは、頭を擦り付けるようにして君に親愛の情を示した。

 全体からほうとため息が漏れた。

「見事なものだ、早速で悪いのだがそれの血を少し分けて貰えるか」

「はい、ただ私はそのように顕現された生き物を扱ったことがありません、元々は凶暴な性質のようですし、保障はできないですがよろしいでしょうか」

「構わない私たちには一刻の猶予もない」

キッパリと王は言い放った。


 果たして血清の抽出に成功し、カタリナ王女はみるみる回復していった。

治療の立役者である君に王が告げる。

「おかげで王女も回復しようとしている、全てはそなたのおかげだ、約束通り思うままに褒美を取らそう、とその前に一つ提案がある」

「なんでしょうか」

「そなたを宮廷魔術師長の一角に迎えたい、顕現の力とやら見事であった、我が国の礎となる力と見た、どうだろうか」

 君には思いもよらない提案だ、どのように返答したらよいだろうか

 21.王の提案を受ける

 22.王の提案を断り馬を一頭もらう



20.巨大仔猫が顕現した

 猫が顕現しみるみる大きくなっていく、やがて部屋にみっしり巨大な仔猫が詰まった。しばらく猫は苦しそうにミウミウ鳴いていたが、さらに巨大化すると圧に耐えきれなくなった壁が崩落した。王室は半壊し壁はすっかり壊し尽くされてしまった。城下におりた猫は呑気に顔を洗っている。巨大仔猫は王宮(だったもの)に鼻先をつっこみ君に向かってミャアと鳴いた。

 この状況を正確に把握しているものは君以外誰一人としていなかった、敵国の侵攻だと間違えた兵士は長距離用のロングボウを射掛けた。モンスターでも最大といわれるドラゴンでも体長10~20メートルである。それと同じサイズの的を外すわけがなかった、空気を震わせて矢が迫る、しかし無数の矢は猫の体表で柔らかく押し返されポロポロとこぼれ落ちた。

 仔猫は飛来する矢にじゃれついた、猫が大きくジャンプすると太陽を遮って夜が来たように影ができた、しなやかに着地した猫は、息つかず手を払うようにして、城砦を丸ごと一つ壊してしまった。無垢な破壊神は新しいおもちゃに夢中になるように、城壁や城下町を壊し尽くした。

 あまりのことに茫然としていた君も、城下が半壊した頃には、とんでもないことが起きていることを認識した。君は慌てて猫の足元に駆け寄る、仔猫は鼻先を地表に近づけフンフンと匂いを嗅いだ。猫は君の服を咥えて頭の上に投げ上げた。


 一月後、君とソラは相変わらず巨大仔猫の上にいた、王国に侵攻する様子を見せていた蛮族は巨大生物とそれを操る人間に恐れをなした。どのような堅牢な国であれ、猫のあまりの無邪気さにどのような兵法も有効ではないと悟り、膝を折った。巨大仔猫の破壊力はそれほどに凄まじかった。一度じゃれ出すと街丸ごと潰す勢いなのだ。

 急ぎ各国の伝令が走り、協定が結ばれた。巨大な敵の前に人類は手を結んだのである、そして君たちは世界の覇権を握った。後の世に長く伝わる猫の王の治世による、猫の王国の誕生である。


Ending E 猫の王国



21.王の提案を受ける

 君は王の提案を受け、魔術師長となった。顕現の力は王の元で民のために有用に使われた。ソラは宮廷猫長として今日もベランダの日溜りで喉を鳴らしている。

 顕現の力の解明にも協力を惜しまなかったが、どうやら古の魔術が関係しているらしいということ以外はわからず打ち切りとなった。王は顕現の力の使用を制限した、君もこの術は人格者のもとで運用されるべきだと思っていた。

 顕現の力と賢明な王のもとで王国は繁栄の限りを尽くした。


Ending G 賢明な者



22.王の提案を断り馬を一頭もらう

「そのお誘いは無上の喜びですが、私には探している大切な者がいるのです」

「その気持ち、カタリナを失いかけた私にもわかる、無理強いはすまい、馬はすぐ用意させよう、しかし王女の命を救ってもらって馬一頭では示しがつかん、幾ばくかの路銀を持っていくがよい、また我が国に来る際はもてなす故王宮に来て欲しい」

「勿体ないお言葉です、頂戴いたします」


君が外に出ると、駿馬が一頭繋がれていた。君は王宮の人たちに礼を言い、友人が療養しているという高原へ向かって馬を駆った。

23.高原の探索へ



23.高原の探索

 馬は風のように駆けた、郊外から森林を一気に抜けた、君は馬に捕まっているだけで、あっという間に山道の入り口までやってきた。流石の名馬も草臥れた様子を見せたので休憩を取った。ソラは馬の背に揺られるのが好きではないらしくニャーニャー文句を言っている。しかしこれでようやく高原の探索に入れる。

 見たところ療養に使うような集落は、もう少し登ったところのようだ。

 人心地ついて飛ばさず馬なりで高原にでた、空気がひんやりとして澄んでいる。確かにここなら療養に打ってつけと思われた。

 美しい景色に相応しくない路傍に座った老人が、君に呼びかける。

「もし、もし旅の方」

 このような場所で物乞いなどしても無駄だろうに、君は

 24.老人の話を聞く

 25.老人の呼びかけを無視して先へ進む


24.老人の話を聞く

「どうしました?」君は老人に尋ねた

「私はこのあたりで修行を続けてきた修験者です、いよいよ死期がせまり目も塞がりました」

「それは大変でしょうに」

「いいえ全ては自然の成り行き、悟りを開くために捧げたことです」

「そうですか」

「私は残念ながら悟りの境地には至ることが出来なさそうです」

 老人の言葉は要領を得ない。警戒心の芽生えた君に構わず老人は話す。

「この道と決めた時に、悟りのために全て置いてきました、あなたは顕現の術を使いますね」

 出し抜けに指摘されて君は驚いた。

「やはりそうですね、あの力を持つ者は世界中でもただ一人、あなたと会えたのは幸運だ」

 驚きを押し殺したまま問いかける。

「もし、、、もし私が、顕現の持ち主だとしてどのような用があるのでしょうか、、、」

「私を顕現していただきたいのです」

 君は再び驚いた、生きている人間を顕現するなどこれまで考えもしなかった。心の中で相手にするなと警鐘が鳴る。

「いずれにせよ私はもう長くありません、顕現の力のことを詳しく知りたくありませんか?生きている人間を顕現したらどうなるか好奇心が湧きませんか?」

 老人には似つかわしくない薄ら笑いでそう問われた、顕現の力の正体については確かに好奇心はある。君はどうする?

25.老人の願いを無視して先へ行く

26.老人の顕現を行う



25.老人の話を無視して先に進む

 君は呼びかける老人を無視して先に進んだ、やがてソラも馬も緊張が取れたのかゆったりした速度で移動し、療養者の集落を発見した。馬をつなぐ場所を思案していると、村長と思しき者が話しかけてきた。集落に来客があるのは珍しいことだった。

 そこで人を訪ねてここまで来たこと、友の背格好を伝えた。

「ああ、それなら」と案内をしてくれた。

 果たしてその別荘で、友と再会することができた。

 友と君は握手を交わし、涙を流して再会を喜んだ。彼の部屋で絵を描いて遊んだ、不思議と顕現の力は発揮されないように見えた。

 君はそれでも構わないと考えた、友との幸せなひとときが戻ってきたのだから。


Ending B 幸福なひととき



26.老人の顕現を行う

「若い頃の私を顕現してもらえるかな」

 老人の願いを叶えてやることにした。老人の若き日を想像して筆を走らせる。


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27.[顕現]老人を顕現させた、あるいは



27.老人を顕現させた、あるいは

 君が筆を置いた途端、顕現の力が空間を歪める、違和感がある。空間に穴が開きその向こう側からなにかがやってくるように見えた。


【顕現チェック/[顕現]人間を顕現させた】

・君の絵には次の要素が揃っているだろうか? 点数の合計を書き込むこと。

・*マークの項目が失敗している場合は「致命的失敗」となる

【No】[点数] 条件

【1】[*1] 頭がある

【2】[*1] 首がある

【3】[*1] 手が2本ある

【4】[*1] 足が2本ある

【5】[*1] 目鼻口耳がある

【6】[1] それ以上のパーツが描かれている


【合計】    / 6 


 羊皮紙が眩い光に包まれ、顕現の法則が成ろうとしている。


ー5点

 果たして顕現の力は成り、そこには若々しく壮健な老人、いや男が立っていた。

 29.救いの能力へ

 

ー6点

 果たして顕現の力は成り、顕現の力は未だ知らぬ闇の部分を明らかにした。

 28.顕現の闇の力へ


ー致命的失敗

 しかし顕現の力は成らず、暴走をはじめる、果たして現れたのは人間のような肉塊だった、老人の姿はなく術の失敗により醜い姿となった。君は慌てて馬を駆ってその場を離れた。



28.顕現の闇の力

 辺りが闇に包まれた、やがて闇が晴れると老人の姿があらわになってきた。見るからに異形の人と化した老人の両腕は、関節を持っていないかのように蠢いた。その先端には鋭い牙が生え、間断なく出し入れされる舌があった。

 シュルシュルと音を立てるそれは蛇そのものであった。

「おぉ、なんということだ」

 弱々しく老人が呟く。老人の両手は蛇と化した。これもまた顕現の力なのだろうか、、、。

 蛇手男は、呪詛の言葉を呟きながらヨロヨロと何処かへと消えた。

 

 蛇手男の姿を見て君は、このような呪われた術は封印されてしかるべきだろうと思った。それから君は、筆を折り二度と絵を描くことはなかった。


Ending F 力の喪失



29.救いの能力

「おお!おお!おお!立てる!見える!聞こえる!身体中にエネルギーが満ち溢れる!」ローブをはためかせて老人であった男は喜びを爆発させた。その様子に君は術への不安を感じながら応じる。

「さぁ、もういいでしょう、このことは他言無用」

「ああ、いやバカな! この術を持ってすれば世界を思うようにできるではないか、どんな怪我をしてもどれだけ老いても、この術を持ってすれば! そう、不老不死! 不老不死はどんな術を持っても不可能だったではないか!? お前はそれを成したのだぞ!」

「私にこれ以上関わるのはやめてください」男の異様な様子に気圧されて君はそそくさと馬に乗り、その場を離れた。ーあの男は徒歩だ、こちらに追いつくことはないだろうーと考えた。

 そうして2時間ほど馬に揺られて、療養者の集落と思しき場所についた。すぐに一人の男が近づいてきて療養所の管理者だと名乗った。


 これだけ離れた療養所だ見舞いのものも珍しいのだろう、君は友の背格好を伝えた。すると、ここで静養していると教えてくれた。ようやく友に会うことができる。

 果たして、君は友との再会を果たした。

「ああ、すまない、父母に無理やり連れてこられて半ば拘束されていたのだ、本当に申し訳ない」

と友は言った。

 君と友はかつての幸せの日々を取り戻した。何日かたった頃、療養所で小火騒ぎがあった、そして小火に皆が気を取られていると、見たことのない化物が襲撃した。全身に無数の蛇を纏った巨大な岩石がいくつも転がってきたのである、岩石の中央には単眼の瞳が大きく見開いている。明らかにこの世の生物とは思えなかった。

ーあの男だーと君は確信した。

 逃げ惑う村人の先頭に立った友が、羊皮紙に何か書き込むと印を結んだ。

「銘じる!闇に帰れ」と術をかけると立ち所に化物はかき消えた。

「顕現せよ」と何処かから声がした、あの男の声である。あの一瞬で顕現の力を会得したのだろうか。

 闇の中からレッドドラゴンが顕現した。恐怖の象徴であるドラゴンの中でも、レッドドラゴンは体長が数十メートルに及び、それ個体だけで小国家を滅ぼすだけの力があるという。


「銘じる!無に帰れ」レッドドラゴンは夜空に咆哮を残して闇に消えた。その咆哮だけで何人かの胆力のない村人は倒れてしまった。術を行うごとに友は疲労しているようだった。今度は顔が2つ腕が4本ある神話の生き物が顕現していた。神話の中でも邪悪な神と位置付けられるものだ。ー男の顕現の力は神まで従えるのかー慄く君に友が叫ぶ。

「真理を顕現するんだ!それに僕が銘を与える!真理の中では神も無力だ」

 抽象的なものを顕現したことはないが迷っている暇はない、君は覚悟を決めた。

30.[顕現]真理を顕現する



30.真理を顕現する

 君はかつて行ったことのない抽象的なものの顕現を行う。真理についてよく思いを巡らせて描く必要がある。


画像5

31.[顕現]真理を顕現した



31.真理を顕現した

 抽象画が顕現の力を受けて、立ち現れようとする。しかし確たる形を持たぬ概念であるため、絵画は暴走を引き起こそうとしていた。

「銘じる!真理」友がこの顕現に向かって銘じた。

古の神がその手の双刀を薙ぎ払うと遠くの山が真っ二つに切れた。轟音とともに土砂が流れ出した。

 君の顕現は眩い光に包まれ天に登っていくようだった。その光を見つめた古の神は、ガックリと膝をついた。全ては一瞬で決まった、この世の理から外れたものは全て消え、顕現の力もまた消え失せた。あの男も顕現の力を失って本来の老人の姿に戻っていた。


「君と僕にこのような奇跡が与えられたのは不思議でならない、改めて銘じよう親友」しかし友人は今にも倒れてしまいそうだった。

不思議なこともあった、顕現したもの全てが消えたのにも関わらずソラだけは相変わらず気ままに二人の間で寝ていたのだ。

「君その猫に名前をつけただろ?それがこの世と彼岸を繋ぐ力なんだよ。銘の力なんていっても単純なものさ」


 友は激しい戦いにより、急速に体調を悪化させた、あるいは銘の力は人の命を喰らうのかもしれない。看病むなしく友にも死がやってきた。

 

そうして友を犠牲をして人類滅亡の危機は免れたのである。



Ending A ゴッドスレイヤー

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【ゲームブック】顕現の力 nununu_games @nununu_games

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