12 折角四人いるんで麻雀でもしようか 上
その後、今回の一件に一枚噛ませてもらえる事になった事も有り、この後の具体的な打ち合わせを行った。
先程秋葉から説明が有った通り、時刻や天候などで、写シ湯ノ神と顔を合わせる為のルートが変わってくるそうで、暫くは待ち時間。
そしてその時が来れば不測の事態を警戒しながら写シ湯ノ神が住まう空間に突入し、まだ生きている筈の被害者を返して貰う為に頭を下げに行く。
やる事はそれだけ。
それだけだが、そう経験できる事でも無い。
とにかくそうした作戦が始まるその時までは。
それ以前に夕食までは時間を潰さなければならない。
当初の予定なら温泉街を散歩する事などを考えていた訳だが、一応共に仕事をする事になったなんでも善ちゃんの二人とある程度親睦を深めておくことも大切だろう。
だからという訳でもない気がするが、仕事の話を交えながら四人で卓を囲んでいる。
「しかしどこにでもいるもんだね馬鹿みたいな奴は……あ、リーチ」
麻雀である。
秋葉は見た目からして出来そうな感じはするし、霞は良くも悪くも悪くも悪くもやってそうな気がしてたし、由香もスマホアプリで偶にやっているらしい。
そして真はというとルールが分かる程度。
とにかくそういう面子で麻雀だ。
「そうっすね。立ち入り禁止になっている場所に足踏み入れなきゃ、被害になんて合わないんすから。おっと、それポンっす」
「此処に限らずそういうの全般本当に良くないですよね。法律的にもモラル的にも危険な怪異に当たるかもしれないって意味でも」
「その通り。だから廃墟とかでの肝試しとかは本当に止めた方が良いんだよな」
「ああ、止めた方が良いね。昔本当に死にそうになった」
「えぇ……」
「何処にでもいる馬鹿と同じ事やってるじゃ無いですか……リーチ」
「気を付けろよねーちゃん」
「流石にもうやってないやってない」
霞はそこまで軽い口調でそう言って。
そして少しだけ影を落としたような表情を浮かべて言う。
「……でもああの時は確かにやっていた筈なんだ」
「「「……?」」」
その意味深な言葉に霞以外の三人は思わず首を傾げ、傾げながら考えた。
(あの時はやっていた……昔廃墟で肝試しやった的な話か?)
本人がやって危ない目に合ったと言っている以上、筈も何も間違いなくやっているだろう。
……その言葉の真意が読めない。
……もしかすると、これが霞の抱えている何かの一端なのだろうか?
そして少なくともその発言は、霞にとっては意図せず零れてしまったような物だったのだろう。
「ああいやすまない。何でもないよ。ははは。というか私のツモ順だな」
言いながら牌をツモり捨てつつ、微妙な空気を変えようとしているのか言葉を紡ぐ。
「そうだ、これはまだ聞いていなかったと思うんだけど、今回の被害者になる条件というのは一体どういったものだったんだい? その場所に行くだけで生贄になってしまう程シビアだったら、管理もままならなそうだし」
「そうっすね。流石に条件はあるっすよ」
「その人の服装とか持ち物とか?」
「お、いいとこ付くな白瀬。とりあえずこの辺りの温泉街からのルートだと、真っ赤な服を着た上で、動物の剥製を持たせるって事になってるな」
「成程」
「そういう事っす」
「あの、なんか皆さん納得している所悪いんですけど、服は赤いジャケットでも着れば当てはまるとして、動物の剥製なんか持ち歩かないでしょ。事故りようあります?」
「それがその辺の当たり判定が結構ガバガバな事が多いのが怪異の厄介な所でよ。今回の場合だと動物のキーホルダー。なんなら動物を模したゆるキャラのキーホルダーとかでも対象になりかねねえ」
「ああ。大昔なら故意にそれを用意しなければ当てはまらなかった条件も、現代日本なら普通に当てはまる事が多い。なんなら街中でも危険が一杯だよ」
「「「ロン」」」
「えぇ!?」
どうやら霞的には目の前にとんでもない危険が有ったらしい。
「あれ、私これ一撃でぶっ飛ばないかい!?」
なんというか、悲惨である。
まあこちらからすれば霞の点数の移動による悲鳴よりも、先程の霞の重い表情と言葉の方が酷い物に感じてしまうのだが。
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