第25話大団円

学園祭で円香ちゃんがメイドコスプレやるからぜひ来て欲しいと呼ばれ、僕はそこに向かった。



西条先輩〜よく来てくれました。ささ、どうぞ座って下さい。

円香ちゃんが甘い声で椅子まで案内してくれた。



わぉおー青木さんの笑顔初めて見たわ。全然違げー。もしかして彼氏?



いつも冷酷な表情の円香さんががっ。間違いない、彼氏でしょー。


他のメイドたちの驚きの声が耳に入った。



結構ちゃんともてなしてくれるんだね。

僕は円香ちゃんがまともにメイド出来るか心配であった。



西条先輩だけのメイドです。ふふ、他の人には接客なんてしません。



えーそれ許されるの?


はい、立ってるだけで良いって、言われてるので。お前はマスコットだって。


誰に言われたの?



先生です。笑顔で立ってるだけで良いって。

他は何もするなって。


笑顔になれるの?


はい。西条先輩の事ずっと考えたら、笑顔になれるんです。

そして西条先輩が1番初めのお客様です。



まぁまだ始まってないからね。そりゃ僕が1番初めだよ。


「それにしてもよく引き受けたね? 興味ないだろうから、断ると思ったけど。」



「西条先輩と付き合ってなかったら、断ってましたー。この瞬間だけの為に引き受けました。先輩愛してます。はぁはぁ。」

彼女が僕の匂いを嗅いで興奮しながら言う。



確かに可愛い。メイド姿は、スタイルの良い彼女を一際引き立たせ、吸い込まれる様に、彼女を見つめてしまう。



ヨシヨシと僕は頭を撫でた。


彼女が幸せそうな表情で僕の胸甘えている。


何あれ? バカップルじゃん。


ヤバっ、円香さんって実は、優しい子なんじゃ? 私たち誤解してた?


そんな周りの声が聞こえて、僕は、恥ずかしくて、頬が赤く染まった。



ねぇねぇ、円香さんって接客出来るんじゃない? 彼氏さんとちゃんとコミュ取れてるし。

メイド姿の女の子が円香ちゃんに声をかけた。


それに彼女は何も返事をしなかった。



「ねぇ、呼ばれてるよ? シカトしちゃ駄目じゃない?」

僕は彼女に注意した。


「はっ、はい。すみません先輩に夢中でなんですか?」


「円香さんってコミュ取れるんだなって。そんな優しい笑顔できるなら、友達になって欲しいかなって。」


「あーずるい、私も青木さんと友達になりたい。」


周りの女子が、円香を囲む様に言う。



ひぃ〜先輩〜どうしたら良いですか? 私困っちゃいます。


僕は、彼女の前に守る様に立った。



「あーごめん、みんな。円香ちゃんは、物凄い人見知りだから、急に距離詰められると、戸惑っちゃうから、じょじょに距離詰めて貰えると助かるかな。」


僕はドキドキしながら、言った。



「うわぁー彼氏が彼女守る構図。かっこいい。」

女子が言った。


「はぁ〜先輩かっこいいー好き好き好き。」

円香ちゃんが背後から頬擦りして言う。


僕は、言われて、彼女の方に向いた。


そして、照れながら言う。


「僕も円香ちゃんが好きだよ。」

他の男子には、絶対に彼女を渡したくないと言う意思からそうさせたのだろう。



「はぁう、先輩涙が止まりません」



「うわぁうわぁ、尊い。彼氏さん! 円香さん抱きしめてあげて。」

女子が煽る様に言う。


恥ずかしい。でも…言われるまま僕は円香ちゃんを抱きしめた。



「先輩私もう死んでもいいです。一緒に死にませんか?」


円香ちゃんが怖い事を言う。


「それは辞めとこうか。」

僕は即答した。

彼女に付け入る隙は与えない。

 

「円香ちゃん命はそんな軽く扱っちゃだめだよ。」

彼女の耳元で囁いた。



「はい、分かりました。先輩…耳が幸せです。」


「うん、こういう幸せも死んじゃったら、感じられないからね。」


「あ〜いいな〜いいな〜2人だけの世界だ。」

そう女子に言われて、僕は2人だけの世界から連れ戻された。


恥ずかしい…穴があったら入りたい。そんな心境になり心で泣いた。


「先輩にこうして守って貰って昔を思い出しました。」


「天使な友達だって言ったやつの事かな?」


「そうです。覚えててくれましたか。また西条先輩に…好きな気持ちが体から溢れちゃいます。」


しばらく円香ちゃんと抱き合っていた。

本当甘えん坊だ。



そろそろ帰ろうかなと思って、円香ちゃんに伝えた。


「もう帰っちゃうんですか?。ずっといて欲しいです。


そう無理を言われたが、説得して帰ろうと思った時声が掛かった。


「西条さんですよね? 私、荒川美沙希って言います。佐野守の彼女です。よろしくお願いします。」



凄い美人で礼儀正しい人だった。佐野もやるなぁ。挨拶を交わしていると、やはり円香ちゃんから、嫉妬の視線を感じた。



「円香ちゃん、浮気じゃないからね。そう言う目で見ないでね。」


「うー分かってますけど…それでも昔に比べると、全然マシな目になりましたよ? 昔の嫉妬の目、自分で言うのもなんですけど、凄い怖かったんです。」



「子供の頃の目を鏡で見たら、自分でゾッとしました。嫉妬の目がまさに憎悪の目でした。」

円香ちゃんが腕を組んで、寒気を感じでいる様に言う。


やはり昔の円香ちゃんは、やばかったんだ。

…それが再び戻って来たら…怖っ…想像するだけで、冷や汗が出る。



「円香ちゃんも成長したんだね。今はもう、立派な大人だね。」

彼女の成長を心から祝福した。



「はい、西条先輩の愛の力です。先輩に好かれる自分にならないとって、一緒懸命頑張りました。先輩に嫌われたら、生きていけないので。」 


円香ちゃん…ヤンデレだけど、めっちゃまともに思えて来た。

こんな良い彼女はいない。僕は円香ちゃんに慈しみを覚え、その場でキスをした。



「先輩はぁう。不意打ちですね。胸が幸せで溢れそうです。」

彼女がかがみ込んで言う。


円香ちゃんを立たせて、僕はまたね。と伝えてメイド喫茶を後にした。


彼女が帰らせたくない素振りを見て見ぬふりをして。



ふぅ~、さてこれから青木と佐野と待ち合わせだ。


それから2人に会って、色々と談笑した。


「円香ちゃんは、やっぱりまともになってたよ? ヤンデレだけど。」

僕は青木に伝えた。


「ふーん、安心するのは、早いと思うがな。まぁ昔に比べたら、マシか。」

青木が口を尖らせて言う。


「良かったな。良い彼女持てて。」

佐野が僕の肩を叩いて言う。


「ああ、ありがとう。そう言う佐野も、良い彼女持てて良かったじゃん。学園祭のメイド喫茶で会ったけど、凄い美人だったじゃん。」

僕は佐野の腕を叩いて言う。



「まぁな。けど、かなり重いって言うか嫉妬深いと言うか、お前の彼女みたいかも。」

佐野が複雑な表情で言う。



「まぁな。それはそうと、これからも俺たち3人は進級しても仲良くやっていこうぜ。」

佐野が手を下に出して言う。


「どうした急に? 進級まだ先だぞ?」  

青木が戸惑って言う。


「へへ、漫画読んだらやりたくなってな…友情を感じたくてさ。」

照れくさそうに佐野が答えた。


僕と青木はその答えに頷き返した。


それに僕と青木が手を重ねて、おう! と硬く誓いを結んだ。


これから3人仲良く大人になっても仲良しだ。そう思っていたが…まさかこの3人のうち1人が殺人事件に巻き込まれるとは、僕たちはまだ知る術もなかった。

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