第4話 最強の1

ファントム戦まであと一週間を切った。この前と相変わらずする事は改造と身体強化のみだが……


前世のロボットでは空をブースターで強引に飛んだりしていたが、この世界にそんな都合の良いものは無い。


だが、そんなロボットもあった気がする。それはどんな事をしてスピードを得たのだろうか?


単純に出力を上げるタイプ。車輪を付けるタイプ。ホバーにするタイプ。空力制御でスピードを得るタイプ……


どれも難しい。もっと今の機体が最新世代ならできたかもしれないが、この機体でできる事と言えば出力強化以外無いか……


あとは身体を鍛えればなんとかなるだろうか?楽観的観測かもしれないが、一番考えなければいけないのは身体だろう。


確かに今世でも鍛えていたとはいえ、まだどこかが足りない気がするのだ。腹の筋肉や背中。脚はもちろんの事、腕ももう少し鍛えたい。


「もう改造は良いのか?」


「教官……これ以上は無理でしょう。あとは自分を鍛えて耐G性能を身に着けなければ……」


「たいジー?」


「瞬間加速時の圧迫感をそう呼んでいるんです」


出力を強化すれば体にかかる圧力も増加するのは当たり前だ。どこまで耐えれるかはわからないがなんとかしやくてはならないだろう。


「ほう………だがあれは機体に乗らなければ身に付かないものだ」


「わかってます……でも機体に乗って訓練できるようなものじゃないでしょう?」


「いや?できるぞ」


「は?え、でもこの前は無理だと……」


な……今は可能だ。だがその前に少しやらなくちゃならない事がある」


教官はそう言い書類を差し出してきた。


「………登録ですか」


「そうだ。だが本人が書かなければ意味が無い。文字なんて貴様知らんだろう?」


甘く見ては困る。これでも一応それなりの文字の学習はして……


「……………」


「な?ここでは独自の文字を使用してるんだ」


そういう事があるのか?本当に見たことも無い文字で構成されている。これじゃあ登録はできない……のか?


「ん?」


書類を少し逆さまにしてみたり、横にしてみたりして見てみる。


「これは……カタカナ………」


やはりだ。何か見覚えがあると思ったらカタカナ文字だ。


それを単純に逆さまや横にして書いている。多分横だ。


書いてる内容もしっかりと文章として機能している。これは間違い無い。


「これ書けます。鉛筆を下さい」


「本当か?まあ良いが……」


鉛筆を渡され、新たな書類も渡される。内容は登録に際しての注意事項や登録後に受け付けられるサポートみたいだ。かなり優遇されている。そして何一つコチラに対してデメリットが存在しない。


「優遇されすぎなんじゃ……」


「お、ちゃんと理解出来ているようだな。一体どうやって理解したかは深堀りしないでおこう。まあ、確かに優遇されすぎのように見えるが、どうせ死ぬと考えれば名を売れそうな奴に文字を教えて死ぬまでしっかり稼いでくれれば問題無いと考えている。お前のような奴は想定してなかったのだろうな」


なるほど。まあ少し理解できたような気がする。引っ掛かりもあるが概ね大丈夫だろう。


名前と機体名称、機体名を書いて最後に血判状を押して終わりだ。


「………機体名称がまさかデザートランナーとか空と掛け離れてるじゃないか……」


「そうなのか?まあ意味なんてあまり気にするものじゃねぇ。運は多少悪くなるだろうが最終的には実力が物を言う」


「精神論を押しそうな見た目して現実的なんですね……とりあえずこれをお願いします」


教官は書類を確認するとそそくさと格納庫を出ていった。これで訓練場を借りれるようになる……少し楽しみである。



***



翌日。早速借りる事が出来た訓練場にて機体性能の確認を行っていた。


やはりその場の雰囲気は数値上、理論上よりも大事に感じる。


「機体出力はリミッター掛けないと……脚のバランスも何かおかしい!?」


走っているだけなのに色々と酷い出来になってしまっているのが手に取るようにわかる。


上げすぎた出力。何か間違えた脚の筋肉繊維の構造。武器と腕の相性の悪さ。


『酷い出来だな!!まあ使えたら強そうだが乗り手がそれではな!!』


「わかってますよ!!クソ……飛べぇ!!」


ジャンプを行う。想像より少し大きく飛んでしまい、障害物の更に奥にあった障害物に着地してしまいバランスを崩す。


「機体制御だけじゃない!?冗談な!?」


腹から地面に落ちてしまい衝撃にコックピットが酷く揺れる。


「左右で出力に違い。筋肉繊維の品質が直に影響してるのか……コンピューターも見直さないと……」


武器は振れそうに無いと考え訓練は中断。格納庫に戻っていると別の機体にすれ違った。


赤と黒の機体だ。エンブレムが貼っている。


9を抱き抱える死神……


「…………ナイン……」


聞いたことがある。この闘技場トップの最強実力者。


ハンドラーと呼ばれている男だ。


そして、歴代最強の一人として最後にとあるものが付け加えられている。


ワン1


ハンドラー・ワン


最強の調教師。そう呼ばれる男だ。

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導きのファイバー〜異世界転生したらロボットに乗って戦うらしい〜 デルタイオン @min-0042

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