つばめのゆりかご

SS 第5話【ゆり視点】

今日もつばめとショピングセンターに来た。

(なんか欲しそだなぁ……可愛い)

「どうしたの？ つばめちゃん？」

「う、ううん、なんでもないよ」

(ハイキャパ5.1Rか〜、分かりやすいな〜！)

もしかしてつばめちゃんもガンマニアなのかな？

残り2つか〜おそろいで買おうかな〜

もう持ってるんだけどね〜

「へ〜？ つばめちゃん、ハイキャパが欲しいんだ？」

「な、な、なんで分かったの？」

「だってずっと眺めてるもん」

(分かりやすい、可愛いな〜)

「あ、あぁ…………あはは」

「つばめちゃんってガンマニアなんだ！」

「あ、いや…………」

「違うの？」

「いや……そうです…………」

「そっか……一緒だね！」

(やったー！ 今度色々話そ〜)

「え……？」

まさかのガンマニアカップル誕生である。

「じゃあ買おうよ！ ちょうど2個あるしさ！」

「うん！」

そうして店に入る2人。

先に声を上げたのはゆりだった。

「AR-15じゃん！ しかもデルタカスタム！」

(かっこいい！ ごつい！ 欲しい！ 買う！)

「あーHk416ね、かっこいいよね」

(へー、Hk416って言うんだ！ つばめちゃんん物知りだな〜！)

「私これ買うー！」

「値段……それ7万くらいするよ……？」

「んー？ へーきへーき！ お小遣いの3分の1じゃん！」

「え……？」

「あ！ 言ってなかった？ 両親社長だから〜」

「じゃあ買ってくるー！」

「ゆり……それ、R18だから買えないよ……」

「あっ……」

(やだー！ 欲しいもん！ 買うもん……)

店を出てしばらく歩くがゆりはどこか空元気だ。

「ねぇ、ゆり？ 買えなかったことそんなに引きづってる？」

「うん……」

(そりゃ引きずるでしょ！ デルタカスタムだよ！？ 1番好きなやつだもん！)

「じゃあ今日私の家おいで？ あれのプラモデルあげる！」

「いいの……？」

「うん！」

「ありがとうー！」

(やったー！)

ゆりは大号泣、そのままつばめに抱きつく。

おーい、街中だよー？

・ ・ ・

しばらく歩き家に着いた。

「ただいまー！」

「お邪魔しまーす！」

元気な声が家中に響く。

「おう、おかえりって、あんた前の」

「はい、お久しぶりです、風翔さん！」

(てめぇ、この前は良く言ってくれたな、誰があんたなんかにつばめちゃんやるかよ、つばめちゃんは私が守るから)

「なぁつばめ、こいつとどういう関係だ？」

「いや、ただのとも……」

(ただのともだちじゃないよ！)

「彼氏です。」

ゆりが口を挟んだ。

「は？」

(ふっ)

風翔の目は点。それを見下すように鼻で笑う。

「つばめさんとお付き合いさせて頂いてます。ゆりです。」

「改めてまして、お兄さん？ つばめちゃんは渡しませんから？」

「いや、やらねーし、認めねー」

「あなたに認められなくとも私はつばめさんの彼女なので」

(あんたより私のが相応しいでしょ？)

完全に修羅場である。浮気現場を目撃したレベルで気まづいつばめが間に入ろうとする。

「あの……」

「つばめはだまってろ！」

「つばめちゃんはだまってて！」

(つばめちゃんごめんね……)

見事にハモった2人だった。

(あんたとハモりたくないんだけど！)

無言で睨み合う2人。その間3分。これが令和の冷戦か……

とりあえずつばめはゆりを引き連れて、そのまま自分の部屋へ向かう。

「ごめん、ゆり」

(こちらこそごめん……って言いたい！)

「え？ どうして？」

「この前、おにぃ……あいつに、渡さないからって言われたの気にしてた……よね？」

(そりゃそうでしょ！ 当たり前でしょ！)

「うん。もちろん。彼女だし。」

「つばめちゃんは私のものだからね？」

「う、うん……」

(ん？ 何か迷いがあるような……)

何か間に違和感を感じたが気にしないことにした。

「あー、そうだこれこれ」

「わー！ かっこいい！ てかでかいね！」

「そりゃ実寸大だからね、800mmくらいあるし、ある程度分解できるから大丈夫だと思うけど職質あわないようにだけ注意ね！」

「はーい！」

(やったー！ つばめちゃんありがとう！ 大好き！)

とても明るい気分で家に帰るゆりだった。

・ ・ ・

帰宅中。

「いや〜、わざわざ紙袋まで準備してくれて、やっぱりつばめちゃんは優しいな〜！」

とゆりはスキップをしていた。

危ないよ、前見なきゃだめよ？ そんな作者の思いは届かず見事に石を踏み転倒。プラモデルの入った紙袋を落とした。

プラモデルと言ってもある程度組み立ててあるので5パーツほどしか無い。

「ちょっと君？ それはなんだ？」

「ん、えぇ……ああ……その……」

テンパるゆり、相手は警察だ。

普通に見て銃とわかるくらいには組み立てられている。

やばいぞ！ テンパるとますますあやしいぞ！

危うく署まで連れていかれそうになったゆりであった。