第30話標的

ー前回のあらすじー

元気いっぱいの中二病、朝貝栄一ことエリクスはレオ達の討伐してきたゴブリンの量に驚き、労いの意味も込めて報酬を少し多めに渡すのだった....。

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(side.栄一)


「へぇ〜、ギルドの職員ってのもなかなか大変みてぇだな!」


タレをつけたオークの肉を焼きながら店主が言う。


俺はギルドの仕事が終わった後にはきまってこの店『オークの串刺し』に来ている。

いや〜、最初に食べたオークの串焼きの味が忘れられなくって……。


それに武骨な店名に比べ、店主が優しいし、いつもギルドの愚痴を吐くことができるのもあって結構お気に入りの店だ。


「全く、そうなんだよ……はぁ…」


ちなみに今話しているのも、とあるギルドの事情についての愚痴である。


「まあまあ、そんなにクヨクヨしても仕方ねぇさ。それにしてもあの『《戦乙女ワレキューレ》』がここに来ているなんてな……」


そう!その『《戦乙女ワレキューレ》』のせいだよ!俺が苦しんでるのは!


 というのも、ついさっきギルドで帰宅準備を進めていたときギルドマスターから職員全員に招集がかけられ、『《戦乙女ワレキューレ》が間引きを始めるので覚悟するように』と言われたのだ。


 「間引き」がよく分からなかった俺が先輩ギルド職員に聞いたところ、何かが原因で魔物が増えた際、Sランク冒険者などを呼んで、魔物を大量に狩ってもらい大氾濫スタンピードが起こるのを防ぐらしい。


 そして、今回呼ばれた《戦乙女ワレキューレ》はSランクの中でも特に多くの魔物を狩るらしく、その数は1日で数百匹とも言われているそうな。スゴいね!


 では、ここで考えてみて欲しい。


彼らが討伐した魔物の処理をするのは誰なのか?




……そう、俺たちギルド職員である。しばらくは残業パレードだわ!畜生め!!!


「まあ、逆に考えてみろ王都でも有名なSランクパーティーに会えるんだぞ?それだけでも儲けもんじゃねぇか」


俺のうなだれた様子を見かねてか店主が慰めてきた。


「けっ!俺の仕事を増やすならどんなに有名なやつでも……有名?」


ちょっと待てよ…《戦乙女ワレキューレ》は王都でも有名なんだろ?


そんなSランクパーティーをボコボコにしたら?




とんでもなく強い闇錬金術師悪役として有名になれるのでは!!!


「なんてこった!こんな重要なことに気づかないなんて!」


こうしちゃいられない!新しい武器とか買って悪役メジャーデビューしないと!


「ありがとう!いいことを教えてくれて!はい、これ今日の代金。」


突然ハイテンションなった俺にドン引きしている店主に代金を渡して、アイの分のオークの串焼きを受け取る。


「それじゃ、またな!」


「お、おう。何かよくわからんが頑張れよ?」


困惑する店主に別れを告げ、人目のつかぬ路地裏で<転移>テレポートを発動する。


そして、<転移>テレポートによる黒い霧に包まれながら高らかに宣言する。



「首を洗って待っていろ戦乙女ワレキューレェェ……!次の獲物は






 ――貴様らだ。」

 


 そうと決まればまずは武器を決めないとね!







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*あとがき*

読んでくださりありがとうございます!

「面白いッ!」「主人公ガンバ!!」「先が気になる!」と感じた方はぜひレビューをください、励みになります!

最近は季節の変わり目なので、朝が起きづらいです。

設定25ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

店主 

・元Bランク冒険者。

歳をとったことを理由に冒険者をやめ、かねてより念願の屋台を始める。

ギルド職員の娘がおり、最近「髭、汚いから剃ってよ」と言われたことにショックを受けている。

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