第3話 アントニオ

ロッシュとアンタレスは、浅草から少し離れ、墨田区の住宅地にやって来た。



ロッシュはとある家の扉の前に行くと、呼び鈴を鳴らし、叫んだ。


「アントニオ〜〜!」




ガチャッ



「何、姉ちゃん」


コック服を着た低身長の男が、扉を開けて家の中から出てきた。

服や帽子に赤いものが多数ついているが………血?



「(私と同類?)」

↑アンタレス


「また何か料理してたんだ。早く洗ってきな」

↑ロッシュ


↓アントニオ

「まず後ろの奴 誰?」


「アンタレスって言う人らしい。警察からしばらく匿ってあげる代わりに、私たちの世話してくれるんだって」


「へぇ、この おばさん が?」



「……は?今なんて言っtはい、おばさん です」


「「あ、はい」」


アンタレスは言い直した。ここで変な喧嘩や揉め事が起きたら、後々面倒な事になる。



「とりあえずアンタレスさん、中へどうぞ」


ロッシュが家の中へ案内してきた。

家の中は意外と綺麗で、まぁまぁ広い。裕福な家庭だったのだろう。



「(これは良い。快適な暮らしができそうだ)」


「アントニオ、服についたケチャップを洗ってきな」

「あっそ今洗おうとしてた」


「(あれケチャップなのかよ)」



彼女はシャウラをテーブルの下の棚に置くと、時計を見た。


もう夜の6時50分ではないか。



「あ、もうこんな時間か。アントニオ、早くご飯作ろ」

↑ロッシュ


「もう作ってある はい論破」

↑アントニオ


「(グレてんな こいつ)」

↑アンタレス



彼がサラダとシチューを持ってきて、テーブルへ置いた。

アンタレスは余りものを食べる羽目になったが、仕方ない。



「少しいります?」


ロッシュが余りもののマヨネーズ焼きを食べているアンタレスに言った。


「え、良いの?」

「もちろん」


「じゃあ一口」


アンタレスは彼女からシチューを食べてみた。


「(ん、マヨネーズ焼きが余りものなのは、マヨネーズをシチューに入れたからなのか。

マヨネーズの味をシチューが程良くしてくれているな。

ほぼマヨネーズの しつこさ が無い!マヨねーぞ⁉︎)」


「この おばさん どーゆう顔して食べてんの?」


アントニオが突然口を開いた。アンタレスはビクッとする。


「へ⁉︎…いや、美味しいなぁって。へへ」

「あっそ」



「とゆうか、テレビつけないんだな。今時の人間はこの時間帯になるとテレビをつけるのだが」

↑アンタレス


「父が昔、テレビは口を止めるから、噛む回数を減らして消化に悪いって言ってたので」


「あーね」


「俺はテレビ見たいから早く食べ終わる」


「なるほどね。対策の対策があるんだ。

それにしても、テレビそのものを見るなんて久しぶりだなぁ。

今どんな番組が人気なの?」


アンタレスがロッシュに聞く。



「すみません、わからないです。高校へ行くお金も時間も無いので、何か人気か さっぱり」


「あーそうなんだ。私もそうだったね。

さて、ごちそう様。美味しかったよ」


「そうですか。昨日のお湯ですが、お風呂はどうです?」

↑ロッシュ


「え、良いのかい⁉︎……」

「はい」


「………」




さすがのアンタレスも悩んだ。初対面の人の家の1番風呂に入って良いのかと。


さすがに断ろうとした。


だがしかし、彼女の湯豆腐のような純粋な眼差しを見ると、中々断れない。







「……ありがとう」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



さっぱりして、風呂から出てきたアンタレスは、2人に上がった事を告げる。


「あ、はーい」「うん」


「私の事は気にするな。私はそこら辺で寝るから、早く風呂入って2人も寝な」



湿った髪を乾かすアンタレスを見ると、ロッシュは返事して風呂へ向かった。

アントニオがテレビを見ながら、彼女に尋ねる。


「アンタレスはなんで、警察から逃げてんの?」


「ん、無実の罪を着せられてね」


「そうなんだ」



あまり興味無さそうな彼を、アンタレスは困惑しながら見ていた。

あまり関心を持たれていない。こういう逃亡者に慣れているのかと、こちらが聞きたい程だ。


「……まぁ、明日もよろしく。お休み」

「うん」



アンタレスはソファの上に寝転がって、目を閉じ始めた。

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