第2話 ロッシュ

何日すぎた事か。


アンタレスはまだこのビル街にいた。

居心地が良かったからなのか、中々ビル街を離れようとしない。






ある少女と出会うまでは。


「お?」



赤い髪をした人物が、ビル街を歩いているではないか。

見た目的に、15か16歳か。黒いスーツのようなものを着て、ぐったりと歩いている。

汗を滝のように流して、目が眩んでいた。


ここに虫がいる事すら珍しいのに、人間の子供だ。

猛暑なのにも関わらず、水を持ってこなかったらしい。


ビルの屋上でそれを見ていたアンタレスは、何か思った。



「(なんだか、上手くあいつを利用できる気がするぞ?

特に危ない奴では無さそうだし、話しかけてみるか)」



彼女は暑くて苦しそうな少女に話しかけてみる。



「おい君」

「?」


目の前の暑そうな服を着て、変な杖を持っている人に話しかけられて、少女は戸惑った。



「(誰?)」


「お前、ここへ何しに来た?」

↑アンタレス


「え……………いや…心配しなくて結構でs」


「心配してないけど」

「え」


「何しに来たの?って聞いているの」


「………………母親を探しに」


「へぇ………名前は?」


「……ロッシュ」


「(日本人の名前ではなさそうだな)なぜ母を探しに?」


「弟が父を殺害してしまったので、失踪した母を探しにきたんです。

この辺りに逃げたと聞いて…」


「へぇ………(このガキ、風貌からしてそれなりに金はあるな。

こいつに警察から匿ってもらおうかな。根は優しそうだし、いけるかもしれない)」


ロッシュはこんな猛暑日に悠長に話しかけられているこの現状に、だんだんイラついてきた。


「(ほんとマジで誰なんだ この人)」


↓アンタレス

「ロッシュ、今 身内が弟しかいないって事で良いんだな?」


「はいそうですが」



「なら、私がお前らを親の代わりに育ててやろう」

「え」


「失踪者なんて、どこに行ったわからん奴を探すよりも早いだろう?

私も子供の頃、親から捨てられてね。立ち場は違うが、現状はほぼ同じだ。

私が愛を恵んでやる」


「え………」




「まずは、喉を潤そうか」


アンタレスは杖から水の入ったコップを出して、ロッシュに飲ませた。

海水でもなければ、変な薬でもなさそうだ。



「……ありがとうございます」


「良かった。なぁに、このくらい、私にとっては警察を相手するよりも簡単な話」


「え、警察から逃げているのですか?」


「あぁ。無実の罪で、大変な事になっているのだよ。

この杖も自分の身を守るために仕方なく盗んできたものさ。


私が君らの面倒を見るから、どうか、警察から匿ってくれないか?」


アンタレスはずっしりと構えて、ロッシュを見た。


「(なんか、すごそう。信頼しても良いかな)

はい、わかりました。家はこっちです」



2人はビル街を出るために歩いていった。

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