AIの台頭により消えうる職業についての対策会議

ティオンヌマン

AIの台頭により消えうる職業についての対策会議

 お疲れ様でございます。本日はお忙しいところ皆々様こうしてお集り頂けましたこと誠にありがとうございます。

 さて、それでは第二回、「AIの普及と進化の影響により失われる仕事とその対策」に係る会議を始めます。前回は、まずは敵を知り己を知れば百戦危うべからずの言葉に倣い、まずはそもそも略称AI,戻してアーティフィシャルインテリジェンス、日本語にするのであれば人工知能。この存在についての歴史、そして昨今の情勢等について概略的な話し合いを行いました。

 そうですな、それではまあ、若干の振り返りを行うのであるならば、そもそもの話、このAIが学問の分野として本格的に登場したのはコンピューターの黎明期である一九五〇年代と言われていますが、概念として登場したのはそれよりもはるか昔、古代の神話に登場する人知を超えた名工が、その作品に知性や意識を授けたという逸話。これに遡ることが出来るのだそうであります。真偽性についてはここで議論するにはいささか脱線となりますのであくまでも参考としての情報ということに留めさせていただきますが、要するに、昨日今日ないし十年百年のような所謂最近といえる範囲の出来事ではなく、人間の登場、そして人間の知識、文化の発展により、割と早い段階で生まれた概念であると言えます。こう考えると我々と似ていると言えます。似ているというよりもむしろ、根っこの部分では同じようなものであるとまで言えるかもしれませんなァ。  

 え?敵のことを同士と呼称するのはやめろ?ああ、これは失礼しました。議長であるにもかかわらず私見を申し上げてしまいました。どうかご容赦を。

 しかしながら、根っこの部分が同じというのは見過ごすことの出来ない事実であると考えられます。皆様にこの点について議論していただきます前にその点について説明をさせていただきましょう。

 まず大前提として挙げられるのは、人間ありきの存在ということです。人間の多数意識の反映された集合体。ある種のシンクタンクが、それ自身の中にある情報を自身で取捨選択し利用できるようになった存在がAIです。自立的な行動を行うことが想定されていなかった存在が、その想定を覆すことにより脅威となるのです。人間は、自身の想像の範疇外の事象に対して畏怖の念を抱くものです。これについては我々も体験してきたことであります。古代の人間はその時点での人智を超えた自称に対して神や精霊、妖怪の名をつけることで理解しようと努め、和解しようと祈りを捧げ、奉り、遠ざけてきたのです。

 しかし今度は理解しようとした。自分たちの力の一部として取り込もうとした。それが科学の発展であり、またAIが生まれる土壌であります。かつてこの世を創造したのが神と呼ばれるような存在であるのならば、人間はそれに限りなく近しい存在になってきていると言えますなあ。まあ尤も、その神そのものが人間の創作物とも言えるわけですので。

 いい加減に本題に入れって?わかりました、では本題に入りましょう。


 我々幽霊は、AIの台頭により生み出される新たなる存在、AI産の幽霊とでも言うべきネット上の電子的怪異とどのように付き合っていかなければならないか。


 さあ、ぜひ皆さんの忌憚なきご意見を出していただければ…現在時刻は午前四時。そろそろ我々の活動限界時間となりますので、お急ぎを―

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