第6話 第6戦 大分オートポリス

 9月末のオートポリスはすっかり秋になっている。季節的には一番いいかもしれない。だが、450kmのロングランレースだ。94周のレースは多くのチームが4スティント(パート)を採用する。だが、ランキング4位の朱里のチームは正攻法では勝てない。3分の2を絶好調の山木が走ることにした。

 予選のQ1。山木は意気揚々とピットアウトしていった。ウエィトのハンディはほとんど感じない。ましてや、このコースはテクニックが必要だ。山木向きのコースなのだ。山木は堂々1位でQ2進出を果たした。

 予選Q2、朱里の出番だ。山木のセッティングに合わせたマシンはコーナリングにすぐれている。8台しか走らないQ2なので、朱里が思ったようなラインがとれる。それでもマリアの方が速かった。ウエィトが朱里よりも8kg軽いからである。それでもチームはフロントロウ(1列目)に並べたことで喜んでいる。

 決勝当日は晴れ。絶好のレース日和だ。全車ハードタイヤと思いきや。山上・マリア・近澤組はソフトを選択した。4スティント制を採用して、第1スティントでリードをとり、3スティントのチームにマージンをとる作戦だ。ただマリアは3分の1を走らなければならず、どこででてくるのはわからなかった。マリアのチームはランキング7位なので大バクチにでてきていた。

 決勝スタート。ポールのN社山上がリードを奪う。それを山木らハードタイヤ勢が第2集団を形成して追いかける。

 山上は徐々に引き離し、10秒の差をつけた20周目にピットインし、近澤に交代した。またもやソフトタイヤだ。山木は暫定トップにたったが、30周目でピットインして、朱里が出て行ったときには、近澤に20秒差をつけられていた。

 40周目、近澤がピットイン。マリアが出てくるかと思いきや、またもや山上が出てきた。パドック内にざわめきが起きた。

「N社は完全に勝ちにきたな」

 とだれもが思っている。

 朱里は、無難に走っている。速度差がほとんどないので、GT300をうまく抜くことだけを考えて走っている。朱里より速いマシンはN社の山上だけで、はるか前方にいる。が、周回遅れになるほどではない。チームからは「KEEP」という指示がでている。ピットインをしていないチームがあるので、順位は確定していないが、抜かれることはない。淡々と周回数をこなす走りだ。

 60周目、マリアがでてきた。今度はハードタイヤだ。マリアが最後まで走る作戦ということは明白だ。ピットインが長めだったので、朱里の目の前に出てきた。マリアのタイヤはあったまっていない。朱里のタイヤはたれてきている。朱里は抜けると思ったが、無理をして接触でもしたら、今までのがまんが無駄になる。マリアのすぐ後ろにつける。すると、マリアはプレッシャーを感じたのだろうか。右コーナーでオーバーランをしてしまった。タイヤがあったまっていないのに無理をしたみたいだ。すぐにコース復帰を果たしたが、朱里はマリアに10秒の差をつけることができた。朱里のピットは大騒ぎだ。

 64周目、朱里は規定の1時間を走り切り、山木にチェンジ。山木がコースに出るとマリアは10秒前にいた。残り30周。追いつけない差ではないが、この日のマリアは調子がよかった。昨日のQ2でトップタイムをだした走りを今日もしている。さすがの山木も10秒の差を5秒差に縮めるのがやっとだった。

 それでも2位をゲットし、ランキングを2位にあげることができた。結果は次のとおりである。

 1位 N社 №3  山上・マリア・近澤組  55P

 2位 T社 №11 山木・野島組      58P

 3位 H社 №17 米山・前田組      36P

 4位 N社 №14 樋口・伊藤組      53P

 5位 H社 №5  飯田・リリア組     48P

 6位 T社 №36 工藤・高山・新藤組   65P

 7位 H社 №7  高橋・大木・佐藤組   41P

 8位 H社 №1  野沢・玉木・江藤組   57P

 9位 T社 №37 依田・クリス・大越組  11P

10位 N社 №15 武田・鈴木組      11P

11位 T社 №99 鳥居・日川組       4P

12位 N社 №4  浜田・松木組       5P

13位 H社 №6  副島・宮本組       4P

14位 H社 №8  小田・佐伯組       3P


 次戦は最終戦の鈴鹿450kmレースである。最終戦なのでサクセスウエィトはなくなる。マシンの性能とドライバーのテクニックで決まる。前年度のチャンピオンの野沢は逆転優勝をねらっている。地元だし、第1戦の300kmレースで勝っているので、本気モードだ。山木と朱里も静かに燃えていた。  

 

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