第5話 宝珠の儀

村の教会で本日宝珠の儀を受けるのはリアムだけだった。


まあ、小さな村なので一人だけなのも頷ける。


リアムは教えられた通りに教会に祐逸ある像に向かって片膝をついて祈りを捧げた。

「第2の人生、どうか宜しくお願いします」


リアムの祈りが終わると同時に眩い光がリアムを襲い、心臓へと吸い込まれたような感覚がした。


「おぉ~~~~。」


牧師さんとセイラは驚いているような声が聞こえたが、とりあえず無事に宝珠の儀を行うことが出来た。


そして、家に戻るとお手伝いさんは忙しなく準備をしていた。


その様子を見て、朝にお手伝いさんがいない理由が目に見えてわかった。


自分の宝珠の儀のお祝いに飾り付けから御馳走まで全て一人でやっていたからだ。


リアムはお手伝いさんに笑顔で「おめでとうございます、リアムンド様」と言われ、嬉しさを感じながら御馳走を堪能した。


食べ過ぎてお腹がパンパンに膨れ上がり、部屋に戻るとベットの上から動けないリアムは今日の宝珠の儀で授かったスキルのことを考えていた。


異世界神の会話を思い出したリアムは簡易鑑定を使いスキル確認をした。

聞いた話とほぼ同じだったのだが、予定よりもスキルが二つ多かった。


【名前】リアムンド・ゼロサム.

【種族】人間族 

【性別】男性 

【スキル・固有スキル】

簡易鑑定・状態異常耐性・クリーン・奇想天外・生命の祝福・偽善者


もちろん自分が選んだスキルなので、一つはその恩恵でスキルが増えていることは解るが、もう一つのスキルの名前を見て何故か浮かない表情をしているリアム。

「スキルの内容は嬉しいのだが、名前が…。


確かに転生前は、困っている人の相談にのって解決した後の喜びを一緒に味わうのが好きだったけど…、率直に偽善者って。自分でも偽善者と思ったこともあるけど…。」


・偽善者

見返りや自分のために行った偽善厚意で他者を救った、あるいは心から感謝された場合、相手に好感を抱かせやすくなる。


内容を見る限り以前の自分が影響したスキルだと納得するばかりだ。


スキルに納得した後は今後の展開を考える。

「さてさて、貴族の子供なのはいいが家庭教師などは雇ってもらえなさそうだし…どうしたもんかな~」


そうして考えている内に眠りにつくリアム。



翌日、リアムは家の中を調べていると本棚を見つけた。


歴史の本や英雄の話などがある中、一つの本にとても興味を惹かれた。


何故なら今までの人生になかった魔法の本があったからだ。


本のタイトルも「魔法の基礎・思考について 著者 アスラン」となっていた。


文字に関してはお手伝いさんに教えてもらっていたらしく、難しい言葉や読み方以外は読めるのでパラパラと本を捲っていくと後半のページを見てリアムは驚愕した。


「えっ」


何度も目をこすって見てもその文字は変わらない。


そこには日本語でこう書かれていた。


「無事に異世界転生できた者よ、この本を読んでくれていることを祈り執筆する。


魔法の考え方や魔力量の増やし方など、子供の時代にした方がいいことなどを日本語で記載していくので役立ててほしい。


今後の諸君らの活躍を期待する」と書き始められていた。


リアムはその後、何度も何度も読み返し真剣に読んだ。


家庭教師を雇えない環境のリアムにとって、この一冊の本に出逢えたことに心から感謝した。


日本語で書かれていることで、全ての内容や文字が読めることからリアムは教えられたことを愚直に実行していった。


筋力トレーニングや魔法の練習、そして魔力切れにして眠ることでの魔力量の拡大など充実した日々を過ごしていった。



そして、気付けば転生して5年後。


10歳になる年は貴族のお披露目会と来年の入学受験を控えている。


あまり学園に興味がなかったリアムだが、貴族の子という枷が強制的に発動し絶対に4大学院のどこかに通わないといけないそうだ。


4大学院

王国随一と言われ、貴族や貴重なスキルを持った者が多くいく王国学院。騎士や戦術をメインとする騎士学院。魔法を専門とする魔法学院。そして、ダンジョンや冒険者育成をメインとする希望の星学院が4大学院と言われている。

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