第3話 固有スキル

ユウキは愛梨と軽く自己紹介をすると時間もあまりないので、すぐにタブレットに目を向けた。


「さてさて俺のスキルは何があるかなー」


異世界神の話では、今までの人生を鑑みてスキル候補が表示されるらしい。さらにはその人しか覚えられないスキルや謎のスキルまで多種多様にあるそうだ。


昔は固有スキルにもレベル的な強弱があったそうだが、世界のバランスが崩れかけてからは努力でスキルを覚えた場合でも固有スキルと同じレベルまで成長できるように強弱を廃止しレベルのみと神が調整したそうだ。

例えるならば天性の才能で固有スキル『剣術』を覚えたとしても努力で剣術スキルを覚えた場合、努力次第では固有スキルと同じ高みの領域まで成長出来ることになる。

ただし、固有スキルには珍しいスキルや通常では獲得できないスキルが数多くあるらしい。


それを踏まえて、ユウキは習得するスキルは経験値アップ系か珍しいスキル、もしくは多くのスキルを獲得できるようなスキルが望ましいと考えている。


そして、いざスキルを確認したのだが…。


「………。」


「えっ」


タブレットに書かれているスキルは三つしかなかった。


・ファンタジスタ

・奇想天外

・一期一会


しょうがなくこの中から二つ選ぼうとした時、よく見ると下の方に[この中からまずは一つ選べ]と書かれてあった。


まずはの文字が気になり、慎重に一つ選ぶことにした。


考えてもスキルにどう繋がるか解らないため、しばらく考えていると簡易鑑定のことを思い出しすぐに試してみた。


・ファンタジスタ

多才な芸。即興の上手な芸。卓越した技術を持ち魅了する。


・奇想天外

思いもよらぬほど奇抜なことに巡り合える。


・一期一会

一生に一度の素敵な出会いに巡りあう。運上昇。


ユウキは首を捻り考えこんだ。

「こんな大雑把な内容でわかるかぁー」


しかし、この間も時間が過ぎていく。


この状況も含めて思考をフル回転させ、ユウキはタブレットにそっと指を触れた。


もともと考えていた内容を鑑みるとファンタジスタなのだろうが、どうしても奇想天外が気になった。そして、今後の展開と自分の直感を信じて奇想天外を選んだのだ。


一つ目のスキルを選んだとたんに残りの二つのスキルが消え、数多くのスキルが現れた。


・剣術・槍術・蹴り術…

・火魔法・水魔法・雷魔法…

・付与術・死霊術・召喚術…

・毒耐性・魅了耐性・即死回避…

・精霊の加護・ドラゴンの加護・神獣の加護…

・言霊・古代言語・文字変換…

・表裏一体・エトエトラ・リンク…

・見えざる剣・等価交換・リミテッド解除…

・生命の祝福


通常のスキルや魔法、そして加護などがずらりと並ぶ中、下の方には赤色でスキルが書かれていた。


たぶん奇想天外の効果なのか、簡易鑑定をしないとどんなスキル効果なのか解らないスキルばかりだ。


全てのスキルを確認していくのは時間が足りなさそうなので、ユウキはこれも何かの縁だと思い赤文字のスキルから選ぶことにした。


その中で気になったスキルが三つあった。


・文字変換

一文字だけ文字を変換することが出来る。変換には変換ポイントを要する。ただし、世界に影響をあたえる変換は不可。

・等価交換

同じ等価な物に変換できる。変換する物はランダムで選ばれる。スキルは不可。

・生命の祝福

宝珠の儀を経て、その年から毎年誕生日にスキルを授かる。運に左右されるが、基本的にはランクの低いスキルが授けられる。


スキルの効果だけ見ると凄いスキルばかりなんだけど、制約がある分どうなんだろう?


ユウキが考えていると、愛梨が尋ねてきた。


「ユウキさん?ある程度は考えたのですが、最終的に決まらないので見てもらってもいいですか?」


ユウキは愛梨のタブレットを見るとズラリとスキルが並ばれているが、赤い文字のスキルは見当たらなかった。


「愛梨さんのスキルは初めからこの内容?」


「そうです。何か変ですか?」


「い、いや…。」


何故、自分と愛梨のスキルが違うのか気になったが、今は時間がないので心の中にしまうことにした。


「ちなみに愛梨さんが考えるスキル構成とかある?」


「私はアクティブに活動する方ではなかったので…、それに戦闘は怖い気がして。」

そう言いながら心配そうな顔をする愛梨。


そんな表情の愛梨を見ながらユウキは違うことを考えていた。

「それにしても可愛い子だなー。うん?どっかで見たような気もするけど…。」

頭に疑問符を浮かべながらも本題に移った。


「大丈夫ですよ。支援魔法や回復魔法、精霊魔法など後方からの魔法もあるので。それを踏まえて何で迷っているのですか?」


「有り難うございます。テイマースキルと精霊術で迷ってます」


「もしや愛梨さんは可愛い物が大好きなタイプですか?」


「そ、そうです。ダ、ダメですか?」

愛梨は顔を真っ赤にしながら俯いている。


「いいえ。素敵ですね。だからこそスキルに反映されてるのでしょう」


パッと喜びやっと顔を上げてくれた愛梨にアドバイスを続ける。


「どちらでも大丈夫ですが、残り一つは魔法系や回復系など自分単体で役立つスキルがいいいかもしれませんね。始めは精霊や従魔もいないかもしれないので」


「そ、そうですよね。あ、危なかった…、その二つを採ろうとしてました」


そう言いながら慌てふためく愛梨は見てて実に可愛らしい。


「もちろん決めるのは愛梨さんですが、危険もある世界なので、一つは異世界を生き抜くためのスキルがあると心強いかもしれませんね」


「そうですよね、有り難うございます。何となく決心がついたような気がします」


愛梨と話していると異世界神が間もなく時間がくるので、早く選ぶようにと急かされた。


ユウキは愛梨と話をしていた中で自ずと自分のスキルに納得した部分が見え、自然とあのスキルに決めたのであった。

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