サタデーナイト・スペシャル

サタデーナイト・スペシャル

高木たかぎ 源太郎げんたろう真山まやま 光祐こうすけ重野しげの 孝治こうじ

仙台市警あおば北警察署/仙台市青葉区/南東北州/日本国

平成47年2月16日


「おい、コースケ、ちょっと待ってくれ」

「だからもう行きますよ、おやっさん!」

 あわただしく書類と手帳をかばんに突っ込む、おやっさんと若い刑事。

「お疲れ様です」

「おう重野、お前はバックアップか」


 おやっさんは通信端末の空中投影ホログラフィキーボードを四苦八苦しながら操作している。


「発砲案件ですから制圧1班が出動してます。2班は待機です」

「帰省のときの火炎瓶事件といい、結婚式の日の立てこもりといい、雨宮夫妻が休暇取ろうとするたびにこの騒ぎだ、今度の新婚旅行にはどうなるか、考えただけでも恐ろしいな」


 ゲンを担ぐタイプのおやっさんらしい発言だが、あながち外れてもいなさそうなのが怖い。


「……っくそ、手で書いた方が早ぇよ、コースケ」

「支給の端末もそろそろスマホからコムコに代わるんですから、いいかげんホロキー慣れてくださいよおやっさん」

「ショーワウマレにそんな適応力期待すんな、しかも今覚えても退職まで10年もいねぇんだから減価償却できねぇって! あ、重野、紹介が遅れてたな、新しく配属された真山だ。コースケ、こいつがS.I.U.の重野」

「お噂はかねがね伺っております、重野警部補……って、そんな場合じゃないでしょうおやっさん! 早く!」

「わかったわかった、せかすなっての、指が反応しねぇだろ」


 なんとかかんとか言い訳をしつつ、あまり急ぐ気はないようである。


「おやっさん、また『出把瑠馬でぱるま組』案件でしょうか?」

 いずれにしろ遅れているのだから、多少は情報を引き出しておいても構わないだろう。

「ああ、ライフル乱射事件といい、最近あそこの組のチンピラがチャカで散々パクられてるのは事実だしな、何か大規模な取引ルートを動かしている様子だ」

「おやっさん!」

「わかったわかった! ……気ィ引き締めてかかれよ重野、これは土曜夜の乱痴気騒ぎとは違う。そんな気がしてるんだ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る