泥棒のはびこる街

 ここは、泥棒の蔓延る街。

 殺人こそ起きないものの、とても治安が悪い。

 盗み、盗まれが平然と行われいる。

 自転車で買い物に出かければ、買い物途中、自転車の籠に買った物を入れて置いてけば、15分もしないうちに盗まれる。自転車をアパートやマンションの自転車置場に鍵をかけ忘れると、半日で盗まれる。そんな街だ。

 そんな街で、一軒の家が盗難被害に遭おうとしていた。


 ドアノブを回してみた。

「あれ、開いた」

 これはチャンス。

 泥棒は周囲を確認しながら、鍵の開いている家に忍び込んだ。


 家の中に人の気配はない。

 なんて今日は幸運な日なのだろうと想いながら、泥棒は家の中を物色し始めた。

 すぐに良いものは見つかった。

 大量の指輪が見つかったのだ。しかも宝石付きの。

 思わず、声をあげて小躍りしてしまいそうなる泥棒。

 家主が帰って来ないうちに、そそくさと指輪を袋に入れて、家を出るのだった。


 そうして、泥棒は手にした指輪を手に質屋に向かった。

 質屋で盗んだ指輪を見てもらう。目をキラキラさせながら。

 質屋から出た金額は?

「1000円ですね」

「……1000円」

「はい。1000円です。全てイミテーションなので。お売りになりますか?」

「……はい」

 泥棒は意気消沈して、1000円札を握り締め、質屋から出て行った。


 質屋の店主は泥棒が帰るまで、笑いを堪えるのに必死だった。

 泥棒が帰ると「あははははは」腹が捩れるくらい笑った。

「ああ、面白い。あの泥棒目利きがないにも程があるぞ。本物をイミテーションと言ったら信じてしまったぞ。これだから、この家業は止められない」


 泥棒の蔓延る街。今回は、泥棒がついていなかったが、質屋の店主だって、今後ついてないことがおこる可能性がある。

 ここは、そう言う街だから。


終わり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

るおの世界 現代ドラマ編 浅貴るお @ruo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ