(12)
「おい、起きろ」
いつの間にか寝てたらしい。
その声と共に部屋の窓が開き、光が差し込む。
気付いたら、もう、日が上って……いや、かなり明るい。
声の主は、草原の民の女の子。昨日居た中で、一番、齢下っぽい子だ。
「姉貴から、お前に付いていろと言われた」
「姉貴?」
「ラートリーの事だ。私達は
「……あ……ありがと……」
「なあ……良く判らんから、教えてくれ」
「何を?」
「色恋というものは…‥そんなに悩んだり苦しんだりする意味が有るほど意味が有るものなのか?」
「えっ?」
「姉貴は惚れっぽい……女専門だがな。なのに、いつも真剣だ。恋をしてる間は、他の事は何も考えていないように見える。そして、1つの恋が終ると1ヶ月ほど疲れ切ったようになる。私からすると、色恋なんて、疲れるだけで何の意味も無い行為に思える」
「誰かを好きになった事無いの?」
「あまり……。ひょっとしたら、これが恋だったのか……と後になって思った事も有るが、身近に、あんなのが居ると、恋なんて面倒臭いモノにしか思えん。どう考えても、ビョ〜キの一種だ。酒や麻薬に溺れる奴が居るように、姉貴は恋とやらの中毒になってるようにしか思えん」
「あ……そう……。でも、将来、結婚したりとか……」
「恋なんてしなくても、家族には成れる。むしろ、誰かと家族となるには恋なんて感情は邪魔なモノにしか思えん」
「そんなモノかなぁ……?」
「馬と同じだ」
「えっ?」
「短い距離を一気に駆け抜けるのが得意な馬は、大概の場合、長旅には不向きだ。それと似たようなモノでは無いのか? 相手が同性であれ異性であれ、人生の内の短かくない時間を共に過ごす相手に抱くべき感情は、炎のように激しいが燃え尽き易いものではなく、穏かで長続きするものじゃないのか?」
ああ、そんな考えも有るのか……。
「ところでさ、町の中は、どんな感じ?」
「『熊おじさん』一党も、あの
「そこで……?」
「あるゲームを始めるつもりらしい」
「えっ?」
「『熊おじさん』は病気で先が長くないらしい。なので、3人の子供と弟分の4人の誰が後継者になるかを、今回の騒動で決める。騒動が治まるまで生き残ってた中で、あの
「え……えっと……」
何か、とんでもない事になってきた……。
「まあ、
草原の民の女の子は……小さく溜息をつく。
「ひょっとしたら……この国の王にとっては、好都合かも知れん。この国最大のヤクザの首領が……一番御し易いヤツになる可能性が出て来たからな。残念ながら、私は、この見世物を遠くから眺めてるだけしか出来んが……」
「どうして……?」
「そりゃ、まだ、子供だからだ。留守番役だ。あと、犠牲者が出た時に、遺族に伝える役」
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