どこにも逃げられなかった人へ

明鏡止水

第1話

教室に机と椅子はありましたか?

……良かったです。

そこは、あなたの席です。

でも、ふざけたやつにたまに取られちゃうんですよね。

座るからどいて、机からおりてくれ、……なんて言い辛い言葉だろう。


ちょっと、なに俺の席使ってんの?(笑)

ちょっとどいて(優しく親しげ)。


なんて、できなくて、離れたところで待ったり、あなたはトイレに行きます。


トイレもなんでみんな一緒に行くの?

個室は限られてるのに。

お腹を壊したりしたらすぐにでも臭いも気にせずトイレ使いたい。


なのに、トイレでおしゃれが始まる。

整えられた眉。

隠されて持ち込まれたはヘアアイロン。

それぞれのブランドの化粧ポーチとプチプラも混ざったコスメ。


ここはもう、オトナコドモの世界。

少女と少年より上なのかな?

うーん。下かな、心が。

少しわがままで幼稚で結構。

学校の勉強しっかりして、授業聞いて、塾や家の手伝い、部活。

いろいろあるよね。

誰かが言う。

「ナプキン持ってる?!!」


男子の方は、静かだけどやっぱ、ニ、三人いる時はいるのかな。

セクハラになるけど、便器に向かっている時何考えてる?


私はね、数少ない待たせてた友達のことを考えて、派手な子の笑い声や視線、陰口に怯えてた。


さて。

つぎは?


保健室?


図書室?


屋上、空いてたら良かったね。

踊り場は静か? それとも溜まり場?


ああ、雨が降ってきたね。


さすがに外まで「逃げ道」探すのもね。


体育館も閉まってたし。


そろそろ教室の席、空いてるんじゃない?

まだか。


キツくない? 

……辛くない? これって。


キミのための場所がないじゃない。

用意もしてくれない。


職員室なんて一番用がない場所だよね。


だけど、人によってはたくさん保健室も職員室も生徒指導室も使う。


あと、わたしが見逃した、キミの為の居場所や座れる場所、ぼーっと出来る場所。サボれる場所。鍵をかけられない安全な部屋はあるかな。


キミがピアノを弾ければいいのにね。

そしたら音楽室は、休み時間、キミの賃貸だ。

無料のね。


ああ、忘れてた。


……美術室も悪くない。でも鍵が閉まっているかもね。


居心地がいいのは、人の輪かな。場所かな。

そこを先に書いてなかった。


キミがどれだけ周りと思考が違くても、感じる悲しみと苦しみは共通だ。孤立と孤独を感じる。

ただ、質が違うわけでもないし、湧き上がる場所が違うわけでもないのに。


みんなはキミの発言を心無い、酷い奴だと言う。


そういう脳の作りや物の捉え方をすると解明されるまで、ボクらは苦しく生きてきた。


まるで、ペットが死んでもこれでコードを齧られずに済むね、と慰めたときのように。

何がいけなかったんだろう。

人の気持ちがわからないやつ。

空気の読めないやつ。

他人を傷付ける言動をする奴。


そんななかで、悲劇は悲劇にしちゃいけない。

劇場は役者がやる物で、ピエロはサーカスにいて欲しい。


だから、死ぬな。その苦しみと孤立と孤独と思考には、パターンと段階がある。


いまはほら、こんなにも、一人でいたっていいんじゃない?


傷付けるのが嫌なら、大丈夫な人を探し出していく旅を、銀河鉄道の夜のように、スリーナインのように、空は飛んでも落ちるな。


落ちたら事故だからな。

事故は駄目だ。


キミが安心、安全、も一つおまけに安楽な人生を送れるように。


どうか、染色体異常とかいろいろ詳しくなったり、勉強したりしたんだろ? 大人の発達障害とかさ。


もったいない。まだ、足りない場所がたくさんあるんだ。ちょうど良いところで、素敵な歯車やボルトやナット。

成長したらノコギリやトンカチ、スクリュードライバーになって、加工してくれるのを待ってるよ。


十人十色じゃたりないよ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

どこにも逃げられなかった人へ 明鏡止水 @miuraharuma30

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ